夏帆「落ちてる時はチャンス」 15年の女優人生を振り返る

2019.3.3
かつての清純派のイメージから、気がつけば演技派と呼ばれる女優へと成長し、ゆるぎない存在感を印象づけている夏帆さん。女優人生15年の思いや葛藤を語ります!
夏帆

――芸能界入りしたのが12歳で、その翌年にドラマデビューされているので女優業は15年目ですね。

今改めて15年という数字を聞くと、なかなか経ちましたね。人生の半分以上、この仕事をしているってことですから。

――最新主演映画『きばいやんせ!私』で演じた貴子のように壁にぶつかったり、悩んだり葛藤したり、という時期はありましたか?

もちろん15年ですので、いろいろありますよね。その中でも20代前半の時に、大きく思い悩んだことがありました。役者としてこの先のことを考えた時、すごく不安になったんです。というのも、10代前半からありがたいことにとても順調にこの仕事をしてきて、仕事があるのが当たり前だと思っていたんですね。仕事を続けていくということに何の疑いもないというか、あまりにも自分の生活に馴染みすぎていたんでしょうね。でもある時、求められないとこの仕事は続けられないんだ、と当たり前のことですが、気づいてしまった。その時、今の自分が特別秀でた何かを持っているわけではない、この先もう求められないかもしれない…と悩みました。他の仕事をしようかと考えたこともあったんですが、興味のあることが見つけられなかったし、なにより、この仕事ができないって考えた時にすごく落ち込んだ自分にびっくりしたんです。それまでは役者なんていつ辞めてもいいやなんて思っていたのに、いつの間にか変わっている自分がいて。

――悩んだ時はどうやって持ち直しているんでしょう?

それって、何をしてもダメなような気がするんです。自分で自分の思考を変えない限り。たとえば、ストレス発散でお酒を誰かと飲みに行ったとしても、家に帰ればまた一人になって気持ちは戻るじゃないですか。でもそう思いながらも、私はわりと周りにいる人に相談して助けてもらうことが多いかもしれません。ただ、落ちてる時こそ自分が変わるきっかけだと思うんです。人は自分が辛い状況にならないと変わろうとしない。ダメになって初めてダメなことに気づき、考えて変わろうとするんです。だから、落ちてる時はチャンス。これもいろんな経験をして、最近そう思えるようになりました。

――いろんな壁を乗り越えたからこそ、個性的な役柄に次々に挑戦するようになり、清純派のイメージから演技派と言われるまでになったのかな、と納得しました。

う~ん、決められたイメージの中で仕事をしていくことが少し窮屈に感じていたというのはありますが、戦略的にあえて違う役を選んでいたというわけでもなくて。その時に興味のある役を前向きに選んで挑んでいたら、気がついたらこういうふうになっていた。20代になると自分の意見を言えるようになり、役も自分で選ぶようになったことで変わってきたのかな。

夏帆

――記憶に新しいところでいえば『海街diary』では4人姉妹の一人としての立ち位置が絶妙で、その演技力に感服し、『友罪』では昔の恋人から脅されDVを受け続けている女性を熱演されて衝撃的でした。毎回印象が変わるので、次の役がいつも楽しみです。

もしかしたらデビュー当時から見てくださっている方はすごく驚いたかもしれないけど、こういう役はやらないよね、こんな作品には出ないよね、って思われたくなかったし、仕事の幅を狭めてしまうのがイヤだった。だから毎回役がかぶらないように気にはしています。その結果、今は自分のやりたいことができているので楽しいです。

――夏帆さんにとって、役者業とはなんですか?

20代になってからさらに、仕事という意識が強くなりましたね。でも、芸能界に入った当初はお芝居をするなんて思ってもいなかったので、気がついたら役者になっていたって感じかな。

――この先、どんな役者を目指していますか?

計画を立てて何かをするのが苦手で、何事においても目標とかを決めずに始めるタイプなんです。でも、その時どきに求められる役者ではありたい。もちろん制作側からもそうですが、作品を作っても観てもらわなければ意味がないので、劇場に足を運びたいと思ってもらえるように、常に興味を持ってもらえる役者でありたいと思います。

かほ 1991年6月30日生まれ、東京都出身。12歳でスカウトされ、翌年に女優デビュー。2007年、主演映画『天然コケッコー』で日本アカデミー賞はじめ数々の新人賞を受賞し、その後の主演映画『東京少女』『うた魂♪』『砂時計』で一気に人気女優へと成長。近年では映画『海街diary』で、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞し、話題に。

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『きばいやんせ!私』不倫騒ぎで週刊誌に叩かれて左遷された、女子アナの貴子。仕事にやる気も目標も見出せないまま、投げやりな日々を送っていた。ある時、命じられたのは、本土最南端の町・鹿児島県南大隅町に伝わる祭りの取材。町の人たちの熱い思いや、幼少期の思い出によって、今の自分を見つめ直す羽目になるが…。映画『きばいやんせ!私』の監督は武正晴、主演は夏帆、出演は太賀ほか。3月9日より全国ロードショー。

※『anan』2019年3月6日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・清水奈緒美 ヘア&メイク・成田祥子 インタビュー、文・若山あや

(by anan編集部)

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