今年、直木賞受賞作『ファーストラヴ』が話題となった作家・島本理生さんに、運命が動いた瞬間、自身のターニングポイントについてお聞きしました。
島本理生

17歳で作家デビュー、若い女性を中心に幅広い支持を得、今年は『ファーストラヴ』で見事直木賞を受賞した島本理生さん。

――人生の分岐点で、自分で選択をしてきた、という自覚はありますか?

はい。子どもの頃から集団行動が苦手で、小説を書く時間だけが楽しくて。作家になると決めてから、そのための努力は常に必死でやってきたと思います。

――作家になりたいと思ったのはいつ?

小学校高学年の文集には将来の夢に「作家」と書いていました。中学生で投稿を始めて、15歳の時に短編の賞をもらい、「書く力があるかもしれない」と思えました。今思えば、それが一つ目の転機でした。

――目標は立てるタイプ?

その都度、先のことを考えますね。たとえば20歳で野間文芸新人賞を受賞した『リトル・バイ・リトル』は「もっと広く読まれる」ことを目標に、意図的に幅広い年齢層の人物が登場する家族の話にしました。『アンダスタンド・メイビー』を発表した時は、もう自分一人の人生で書けるものは全部書き終えたと感じたので、「次は子どもだ!」と(笑)。そして育児休暇後に、「次は大人の女性に読んでもらえるものを書こう」と決めて書いたのが『Red』でした。これで島清恋愛文学賞を受賞した時は本当に嬉しかったですね。

――でも、そこで満足はしなかった、と。

前は賞をもらうとそこで一旦安心してしまっていたので、新たに目標を持たないと駄目だ、と思って。変わらないといけないと思うことを手帳に何十項目も書き出して、実行したんです。たとえば「人前でうまく喋れるようになろう」と話し方教室や表情教室に通ったり、「外見も作風に近づけよう」とヘアメイクを習ったり。他ジャンルの人とも積極的な交流を心がけました。

映像化も目標のひとつでした。『ナラタージュ』の映像化が決まった時は「ここから波に乗るぞ!」と思って。20代の頃、自分の経験値が足りなくて波をつかみきれなかった。それで、次こそは、と取材や直しを何度も重ねて仕上げたのが、直木賞を受賞した『ファーストラヴ』でした。

――現在、目標としていることは?

これまでは気後れして海外の仕事を断っていましたが、今年から受けよう、と英会話教室に通い、初めて韓国のシンポジウムに参加しました。叶わないこともあるけれど、願うことで始まることもたくさんある。そう思って先を考えています。

島本理生さんの運命が動いた瞬間年表

15歳:「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクールで受賞。
プロの編集者に認められ、作家になろうという夢は単なる思い込みでないと実感できた。

17歳:「シルエット」が第44回群像新人文学賞の優秀作に選ばれる。
本を刊行するもあまり話題にならなかったため、「売れるものを書こう」と決意。

21歳:短期間で一気に書き上げた『生まれる森』が第130回芥川龍之介賞候補になる。
結果は選外で、「もっと大きな話を書かなくては」と思い『ナラタージュ』に着手。

22歳:『ナラタージュ』が発売後すぐに重版する大ヒットとなる。
一気に忙しくなったがそれに自分が追いつけず、ここから苦しい時期が続くことに。

27歳:『アンダスタンド・メイビー』で第145回直木三十五賞候補に。
力を入れた作品だったが選外で、落胆。ただ、今の自分が書けることは書き切ったと感じた。

27歳~28歳:産休を取り、一時世間から離れる。
次第に「子どもも産んだし、大人の女性に読んでもらえるものを書こう」と思うように。

31歳:『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。←ターニングポイント
「若手作家」を卒業し、新たな代表作を出すつもりで書いたので、受賞は嬉しかった!

32歳:『夏の裁断』が第153回芥川龍之介賞候補に。
結果は選外。だがこれで、純文学は卒業し、エンタメ小説を書いていこうと決心がついた。

35歳:『ファーストラヴ』で第159回直木三十五賞受賞。
波に乗っかる気持ちで、照準を合わせて書いた作品だったので、受賞にほっと一安心。

しまもと・りお 1983年生まれ、東京都出身。作家。’01年「シルエット」でデビュー。’17年『ナラタージュ』が映像化。今年、『ファーストラヴ』で初の直木賞受賞。

※『anan』2018年12月12日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) ヘア&メイク・イワタユイナ インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)


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