32歳男性が「同性愛をカミングアウト」大激変したリアルな日常

文:三松真由美 — 2020.8.13
現在大量発生中のレスなひとびと、いわゆる「レスびと」の相談内容を、TVや雑誌など多くの媒体で活躍中の、恋人・夫婦仲相談所所長の三松真由美さんにうかがいます。セックスレス、恋愛レスと、レスにもいろいろある。今回は、同性愛者の32歳男性。これまでひた隠してきた自分の性的指向をカミングアウトしたことで彼に訪れた劇的変化とは…? 三松先生がLGBTを語ります!

【レスなひとびと】vol. 85

海斗(32歳)男女の壁レスで、素敵なエッチ、素敵な毎日。それが何か?

同性愛 LGBT セックス 恋愛

ある休日の朝、海斗は目を覚ますと下半身に快感を覚えた。

「ほっはようう。かいちゃん」

寝ぼけ眼で見ると、恋人の忠司が海斗の股間をチュパチュパと音を立てて舐め回していた。

「あっ。朝から何すんの、ただちゃあん」

腰をくねらせながら海斗は反抗する。

「だって、かいちゃん、こうやって起こされるの好きでしょ? ここ敏感だもんねえ」

忠司は、ヒップをサワサワとやさしく撫でる。忠司とはベッドの相性が抜群にいい。

こんな幸せな日々が訪れるなど、想像していなかった。

ふたりの出会いは1年前。都内の外資系商社で夜昼なく働く海斗は、自分が同性愛者であることを隠して生きてきた。アプリで出会うにも、万が一社内の社員や取引先の人に自分のプロフィールを見られてしまったら…そんなリスクを考えると、恋活なんてできるわけない。

ある日、海斗はスマホの広告で男性専門のお相手探し相談所があることを知る。恐る恐る詳細を見てみた。ちゃんと対面のお見合いを設定してくれる。運営がしっかりしていそうだ。これなら周囲にバレる可能性がないかもと思い、カウンセリングに足を運んだ。

そこではじめて自分のセクシャリティを話したら、喉につっかえていた小骨がとれたように落ち着くことができた。大きな涙がボロっと流れた。その相談所が何日もかけて親身に話を聞き、紹介してくれたのが忠司だった。

忠司は海斗とは真逆のタイプ。高校生からカミングアウトしており、新宿のバーで勤務してきた恋愛経験が豊富なタイプ。ブログやSNSで日常を綴ったり、本の感想を書いたりとコミュ能力も抜群の明るい人気者。とはいえアラフォー。生涯寄り添って暮らしていけるパートナーに出会いたいと相談所に登録したらしい。接点がなかったふたりだが、お互い一目で惹かれ合った。

生真面目で心配性の海斗を、はちきれそうな笑顔で癒やしてくれる。職場の悩みを相談すると、似た悩みを持ってるひとをSNSで探し出し、「ほら、かいちゃんだけじゃないじゃない」と解決策を模索してくれる。

付き合って半年。海斗はセックスを怖がっていた。実際…ためしたことがない。しかしそんな海斗のことを忠司はお見通しだった。

「かいちゃん、無理しないでいいんだよ」

と言ってくれた。その言葉がうれしくて、体を預けることにした。1日目は全身にキスをして添い寝、二日目は海斗の大事なところを優しく舐め、それから少しずつ海斗の体に無理がないように進めてくれる。海斗は愛する人とのセックスはこんなに気持ちいいんだと心も身体もジンジン震えた。

「ただちゃん」

振り返った忠司に、海斗側からキスをする。

幸せすぎる。

周囲に恋仲をカミングアウトする日は来るかわからないし、世間から「え?」というまなざしが無くなる日はまだ先かもしれない。浮かび上がるさまざまな不安があろうと、忠司に出会えた喜びに勝るものなどひとつもない。

忠司の暖かさに、これまで感じたことのない安心感を覚え、海斗は毎日、セクシーで幸せな朝を迎えている。


【三松さんからのコメント】

レインボープライドなどのイベントで、同性愛者の考えに触れる機会が増えたことで、理解が深まったと思われる同性愛者の恋愛です。マンガの『きのう何食べた?』はドラマ化され、人気俳優さんが素敵な恋人同士を演じました。

働く環境では、深い理解を示す企業がある一方、古い体質の企業で、ズカズカとプライベートに踏み込んだ質問をするところもあると聞いています。

彼女はいるのか? 家では女装をするのか? など上司からのコミュニケーションにストレスを感じ、本音を出せないままに退職してしまう優秀な方たちが少なくないそうです。

ゲイセクシャルの恋愛は、攻めと受けのポジションが大切なのだろうというイメージを持たれがちですが、実情は重視する人もいれば、重視しない人もいる。異性愛者だって、そうですよね。セックスに対する考えは個人差であり、同性間であろうが異性間であろうが変わらないわけです。

大切なのは、自分と相手が同じ考えとは限らないということ。それを理解しているだけで「彼女はいるの? 彼氏はいるの?」 ではなく、「パートナーはいるの? 」と、自らの基準を押しつけない、周囲に寄り添った質問ができるはず。いえ、パートナーの有無をたずねることもおかしなことです。いてもいなくてもいいじゃない! 片思いでもいいじゃない!

わたしは新宿2丁目に時々行きます。女子よりずっと女心をわかってる大人がたくさん。ほんとに勉強になります。

モテないと嘆く女性がたに「2丁目で、あなたの反省点をあぶり出してもらいなさい」と説教することもあります。女性のダメポイントを、彼女(彼か?)たちは厳しくジャッジしてくれます。私もいじられていますが、すべて正論です。

心に残ってる言葉は「まゆみ、あんた、どんだけ欲深い女なの」です。「はい、おっしゃるとおりです」と猛省し、ギブする女になろうと改心しました。ありがとう。2丁目。

「好きな人を好きと断言し、それを周囲が祝福してくれる。男女間の壁レスでいいじゃないか!」

三松 真由美 
恋人・夫婦仲相談所所長・コラムニスト。バブル期直後にHanakoママと呼ばれる主婦の大規模ネットワークを構築。その後主婦マーケティング会社を経営。主婦モニター4万名を抱え、マーケティング・商品開発・主婦向けサイト運営に携わる。現在は夫婦仲、恋仲に悩む未婚既婚女性会員1万3千名を集め、「ニッポンの夫婦仲・結婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。「セックスレス」「理想の結婚」「ED」のテーマを幅広く考察し、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演・テレビ出演多数。20代若者サークルも運営し、若い世代の恋とセックス観にも造詣が深い。コミック『「君とはもうできない」と言われまして』(kadokawa)好評発売中。


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