体温のリズムを知って、カラダを効率的に整えよう!
午前2時~8時の体温が一日の中で最も低く、徐々に上がり午後4~9時をピークにして、また体温は下がり始める。365日繰り返されるこの体温のリズムには、どんなメリットがあるのだろうか。
「体を温める/温めないタイミングを知れるのが、まず大きな利点だと思います。“体を冷やさない、冷えたら温める”のは基本ですが、四六時中、体を温めておけばいいというわけでもない。例えば、質の良い睡眠をとるには、寝る前に体温がグッと下がることが必須条件です。寝る直前の食事、運動で体を温めてしまうと、寝つくまで時間がかかり、睡眠効率を下げてしまいます。よく眠るためには、就寝の2~3時間前に体温を上げておくのがベストです。タイミングを活かした温活をすれば一日の体温リズムにしっかりメリハリがつく。人間の生命活動は体温をパッと上げて活動し、スパッと下げることでより良い休息を取るように設計されています。この仕組みを上手に利用することで、体調が乱れにくくなると思います」(早稲田大学人間科学学術院教授・永島計さん)
それなら本格的な冬が到来する前に、体温のリズムに乗って体を整えるルーティンを確立しておきたいもの。
「免疫力をはじめとする体の基礎は、今日明日で上がるというようなものではありません。数週間単位でジワジワと力がついていくものですから、早めに習慣化し、継続していくこと。積み重ねていけば、冷え症も風邪のひきやすさも解消されていくでしょう。冷やさない、かつ、的確に体温を上げる。これだけで今冬を健やかに乗り切れますよ」(足助病院院長・小林真哉さん)
MORNING
寝起きに低いのはテンションだけにあらず。低~い体温を上げてカラダのスイッチをオンに。
◎AM4:00…一日で一番体温が低い
前日の就寝時間によりずれはあるものの、午前2時~8時の間に体温は最も低下。体は完全に休息モードに入る。
【朝の整え1】目覚めたら、すぐに朝日を浴びる
「光のシグナルは、実際の環境と体内時計を合わせる強い要素。体温も体内時計と連動していますから、朝日で一日のリズムをリセットしましょう」(永島さん)。薄暗い寝室でダラダラ~と過ごすと体温の上昇もグダグダ~となってしまうことに。
【朝の整え2】糖質とタンパク質を含む、あったかい朝食を摂る
「タンパク質は体内で熱を作る材料になりやすく、糖質は代謝に必要なエネルギー源になります。食事をすること自体が体内に熱を生み出しますから、朝食は抜かないようにしましょう」(永島さん)。内臓を目覚めさせ、代謝を上げるためにも温かいものを。
【朝の整え3】少し汗ばむくらいの運動をする
朝のうちに筋肉を動かすことで、さらに体温のリズムにメリハリがつく。「筋肉で熱が作られるのを促進するほか、全身の血流が良くなり熱も巡ります」(小林さん)。運動するなら、朝食後かエネルギーになるものを軽く食べてからの方がより体温を上げやすい。
【朝の整え4】外へ出かける前に“放熱ポイント”をカバー
「手足、耳、頭、首といった熱が出ていきやすい部分を温かくすることで、全身の冷えを感じにくくなります。外出する前は気温をチェックして、体を冷やさない対策を」(小林さん)。体内の熱が逃げ、体温が下がらないようにしっかり防御を!
NOON
室内と室外の気温差に注意しながら心地よい“衣服気候”をキープする。
【昼の整え1】服やあったかアイテムを脱ぎ着して、体温調節する
室内外の気温差にも気をつけたい。「環境の温度に合わせた衣服を着用し、体と衣服の間に新たな気候を作る“衣服気候”で気温差によるストレスを減らしましょう。体の周りを適温にすることで体温が安定し、人間の恒常性も保たれます」(小林さん)
【昼の整え2】階段の上り下りで、太ももの筋肉を動かす
朝、運動するのはちょっと無理? それなら日中に太ももを動かすことを意識しよう。「体が冷えにくい=循環血液量が多いといえますが、血液量が多いのは筋肉量の多い人。体でかなりのウェイトを占める太ももの大腿筋を鍛える習慣を」(小林さん)
【昼の整え3】乾きを感じる前に、こまめに水分補給!
「冬の冷たい空気は、含まれる水分が少ないので呼吸の際に奪われる水分が多くなり、体内も乾燥しがちに。粘膜が乾くとウイルスに感染しやすくなります。水分補給や室内の湿度管理、マスクなどで乾燥を防ぐのも、調子を崩さないために大切」(永島さん)
EVENING
体温を上げるポイントを計算して質の良い睡眠に向けた準備をする。
◎PM5:00…一日で一番体温が高い
体温がピークに達するのは、午後4時~9時の間。全身に酸素・栄養素が行き渡り、頭が冴えて活動的になる時間帯。
【夜の整え1】寝る2~3時間前までに、晩ごはんを食べる
寝る直前の食事は体温を上げてしまい、眠りの妨げに。「食事を摂り熱を作るポイントを、就寝の2~3時間前に持っていきましょう。代謝が落ち着き、体温が下がるタイミングと就寝が重なれば、スムーズに入眠でき、質の良い睡眠に繋がります」(永島さん)
【夜の整え2】寝る90分前までに、お風呂に入る
入浴は体を一気に温められる重要イベント。「これもタイミングが肝要です。寝る直前は逆効果なので、就寝の90分ほど前に入浴を。また、熱いお湯は自律神経を刺激しますから、お風呂の温度はぬるめに」(永島さん)。すぐ眠りたいなら足湯でもOK。
【夜の整え3】部屋の暖房は寝る直前までにしておく
室内が寒すぎると自律神経へのストレスになるけれど、暖かすぎるのも負担になるという。「体は手足から放熱することで体温を下げ、休息モードに入ります。体温が下がる環境が眠りにとっては良いので、室温も徐々に下がるくらいがベター」(永島さん)
【夜の整え4】末端の冷えはあったかアイテムでカバー
布団に入っても、末端が冷えていると体は不快に感じることに。「血管を広げて熱を放出したいのに、あまりに冷たいと血管が収縮してしまう。足先なら靴下を履いたり、寝入りの時間に限って湯たんぽや電気毛布を使ったりするのがいいでしょう」(永島さん)
PROFILE プロフィール
小林真哉さん
医師。JA愛知厚生連「足助病院」院長。気象予報士、防災士の資格も持つ。“想う医療”を掲げ、医療・介護・福祉、そして防災の拠点としての病院のあり方を提言。若手医師の育成にも力を入れる。
永島 計さん
早稲田大学人間科学学術院教授。専門は生理学、体温・体液について研究を続ける。著書に『40°C超えの日本列島でヒトは生きていけるのか 体温の科学から学ぶ猛暑のサバイバル術』(化学同人)。