高精度&体に負担が少ない安心安全な第三の検査方法。
乳がん検査といえばエコーやマンモグラフィが一般的だが、新たな選択肢として注目されているのがMRI。
「MRIは磁力を用いた検査方法で、台上の2つの凹みに乳房を収めて腹ばいになり、筒状の機械の中で電磁波を使用する…というもの。その際の細胞内の分子の動きを画像化して診断するのですが、無痛であることを筆頭に多くのメリットがあります」とは、東京都立大久保病院の佐藤栄吾先生。
MRIによる乳がん検査の技術が発表されたのは20年ほど前のこと。国内では現在約70か所の施設で受診できる。
「私の病院では年間200件ほど実施しており、マンモグラフィの6分の1程度の件数。自治体によるマンモグラフィ検診は40歳以上が対象なので、30代までの方はMRIを受けてみるのもいいでしょう。現在推奨されているマンモグラフィのペースは2年に一回。乳がんは進行が比較的遅いのでこの頻度ですが、心配で回数を増やすと、逆に体の負担を増やすことも。MRIは体の負担が少なく小さいしこりを見つけやすい特性もあるので、マンモグラフィの間に組み込むのも合理的です」
その際の注意点は、体内に金属がある場合は受診不可ということ(※)。
「強力な磁力でペースメーカーが狂ったり骨のボルトがずれたりと、不具合が生じる可能性が。タトゥーに関してはインクに含まれる金属に反応して軽い火傷をすることもありますが、受診NGというわけではありません」
9人に1人は乳がんを発症する中、検査による早期発見は自分の命を守るための大切な手段に。
「国内の乳がん検査の受診率は約4割。欧米の約8割に比べると少なく、痛みを理由に敬遠する人がほとんど。MRIのように痛みを伴わないものもあるので、定期的に検査を受けながら自身の乳房に常に気を配り続けることが大切です」
無痛MRI乳がん検査のメリット
1、乳房を挟まないので痛みゼロ。
上下左右から乳房を挟みX線を照射するマンモグラフィは、強い痛みが生じる場合も。MRIは乳房を圧迫せずに撮影を行うため、痛みを感じずに検査ができる。重力で胸が下垂することで撮影しやすい大きさになり、サイズを問わない点も◎。
2、乳房を誰にも見られずに検査できる。
検査とはいえ、人前で肌を晒すことに抵抗がある人も多いはず。MRIは検査着を着たままの状態で撮影ができ、脱衣は不要。「私服でもOKですが、塗料や装飾などで金属を使用している衣服は電磁波が反応してしまうためNG」(佐藤先生)※
3、放射線被ばくゼロで安心。
マンモグラフィが微量の放射線で被ばくするのに対し、磁力で診断するMRIは何度受けても被ばくの恐れなし。乳がんの早期発見には定期的な検査が必要になるため、放射能を気にせず安心して繰り返し受けられる点は大きな魅力に。
4、がん発見率がマンモグラフィの約5倍。
MRIは感知する範囲が広く、マンモグラフィやエコーで死角になりやすい乳房の奥や腋下までチェックが可能。「精度も高いため、それらの検査では見つけにくかった1cm以下のしこりもキャッチしやすく、高い発見率を実現しています」
5、乳房の手術後も検査できる。
豊胸手術などを受けた場合、マンモグラフィで圧を加えた際にシリコンジェルが破裂する危険性が。胸を圧迫しないMRIは問題なく受けられるが、「人工乳房の中に金属が含まれていると熱を発する可能性があり、検査不可なケースも」。※
6、高濃度乳房の影響を受けにくい。
40歳以下やアジア系女性に多い高濃度乳房。乳腺の組織が発達した状態を指し、乳腺とがん組織が共に白く反応するマンモグラフィでは見分けにくい場合も。MRIはがんが疑われるところが黒く映るため、乳腺の量に左右されずに識別可能。
※体内金属や着衣についての詳細は各検査施設にお問い合わせください。
PROFILE プロフィール
佐藤栄吾先生
東京都立大久保病院医長。乳腺外科・甲状腺外科・消化器外科を専門とし、診療を行っている。乳がんの無痛MRI検査は保険適用外の自由診療となり、検査料金は2万2000円。TEL:03・5273・7767