小さな声でも集まれば大きな力に。
――海外では、生理用品に税金がかからない国もあります。日本では生理用品になかなか軽減税率が適用されないのはなぜですか。
能條桃子(以下、能條):2019年に消費税の軽減税率制度が導入されたとき、その意思決定の場にほとんど女性がいなかったんです。それが、大きな理由のひとつだと思います。
中元日芽香(以下、中元):1個数百円程度でも、日常的に利用する女性からすると、かなりの出費なのに…。切実さが理解されていないのですね。
能條:もっと言えば“生理用品は自分で買って当然”という発想自体が変わっていけばいいなって。たとえばトイレットペーパーは、どこのトイレにも置いてあり、無料で使うことができるのが当たり前ですよね? 最近では生理用品を学校に配布している自治体もありますが、首都圏のように女性議員が比較的多いエリアが中心で、地域差も激しいんです。
――昨年11月から緊急避妊薬(アフターピル)の薬局での販売がようやく導入されました。ただ、あくまでも試験導入であり、課題も多いように感じますが…。
能條:いま、緊急避妊薬を扱っている薬局は全国で145店舗のみ。購入できる場所は限られていて、近くにないという方も多いはず。しかも来店前に電話で訪問日時を決めるなど手間も多く、薬局では薬剤師の面談を受け、目の前で飲まないといけない…。女性の心理的な負担もかなり高いんです。
中元:緊急避妊薬といえば、厚生労働省が行った薬局販売に対するパブリックコメント(※)はたくさんの声が集まったんですよね。
能條:薬剤へのパブリックコメントって、通常は10件くらいしか集まらないんですが、今回は約4万6000件も集まったんです。そのうち97%が賛成の声で、それが国を動かしたといえると思います。
中元:小さな声でもたくさん集まれば、大きな力になるのですね。
能條:低用量ピルも、日本では1999年に認可されるまでは服用できなかった薬。当時の女性たちが声を上げて、変わったんです。
中元:私はPMS症状の緩和のために、低用量ピルを服用していますが、いま快適に過ごせるのは、そのおかげなのですね。パブリックコメント以外にも、何かできることはあるのでしょうか。
能條:女性のための政策に力を入れている候補者に投票することも大事ですが、投票後もできることはたくさんあります。たとえば政治家のSNSやホームページなどに、「生理用品の軽減税率適用を公約に掲げていたからあなたに投票しました。ぜひ実現してください」と、自分が投票した理由を送ってみる。それを見て、政治家はここにニーズがあると認識するんです。賛同する政策にSNSで「いいね!」をするだけでも、効果があると思いますよ。
中元:まずは、関心や興味を持つこと。さらに、意思表示をしていくことも大事なのですね。
能條:まだ課題が多い緊急避妊薬についても「当たり前のようにどの薬局でもすぐ買えて、安心して過ごせるようになったのは、私たちが声を上げたからだよ」って、いつか次の世代の女性や子供たちに言ってあげられるようになればいいなと思ってます。
※「意見公募」のこと。行政機関が政令などを制定する際に、一般から意見を募る仕組み。
女性の健康課題にまつわる主な議論。
生理用品の軽減税率適用
2019年に導入された軽減税率制度により、食料品などは消費税8%だが、生理用品は適用外。「女性の必需品である生理用品にも軽減税率の適用を」と署名活動も行われているが、現状、実現には至っていない。
緊急避妊薬の薬局販売
医師の処方箋が必要とされていた、緊急避妊薬。性交後72時間以内なら高確率で妊娠を防げるため、少しでも早くに服用できるよう薬局での販売が望まれていた。2023年11月より、試験販売が行われている。
左・能條桃子さん 1998年、神奈川県生まれ。若者の政治参加を促す「NO YOUTH NO JAPAN」と、政治のジェンダー平等を目指す「FIFTYS PROJECT」、2つの団体で代表を務めている。
右・中元日芽香さん 1996年、広島県生まれ。乃木坂46を卒業後、現在は心理カウンセラーとして活動。新著『なんでも聴くよ。中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』(文藝春秋)が発売中。
ジャケット¥20,900 トップス¥8,910(共にGALLEST/ワールド プレスインフォメーション TEL:03・6851・4604) スカート¥7,700(OPAQUE.CLIP TEL:03・6851・4604) その他はスタイリスト私物
※『anan』2024年1月17日号より。写真・水野昭子 スタイリスト・岡安幸代(中元さん) 取材、文・音部美穂
(by anan編集部)