生理用品から考える環境問題。
女性だけの問題として捉えずに、積極的に議論をすることが重要。
日頃なにげなく使用しているけれど、実は生理用品が環境にもたらす影響は意外と大きいのだそう。
「市販の生理用ナプキンの多くはほぼ100%プラスチックで作られており、その使用量は1枚あたりレジ袋約4枚分。女性は生涯に約1万枚のナプキンを消費するといわれているので、レジ袋4万枚分に近いプラスチックが使用されることになります」(SDGsコンサルタント・玉木巧さん)
レジ袋削減が日々謳われる中でのこの数字には驚くけれど、問題はそれだけではないという。
「特に重要なのがごみの処理。使用済みのナプキンのように水分を含むごみは燃えにくく、焼却炉を高温に保つ必要があります。その際にプラスチックごみを燃料として投下して温度を高めるため、大量のCO2を排出することに。生ごみの場合はコンポストなどの対策がありますが、使用済みのナプキンに関しては難しい部分が」
また、一般的にはあまり知られていないのが海洋ごみの問題。
「海に廃棄されたプラスチックごみの第5位が生理用品で、よく議題に上るレジ袋は全体のわずか0.3%にすぎないのです。ただ、レジ袋の有料化は“自分たちの行動を変えねば”という気づきを得た点で意味があったといえます。誰もが行動を変えられるレジ袋をきっかけに、生理用品を含む身近な問題において何ができるのかを考えることが重要です」
では、具体的には環境のためにどんな行動が可能なのだろうか。
「消費者の方のアクションとしては、ごみが出ない吸水ショーツなどの使用が挙げられます。これは環境活動の4R、“REDUCE(減らす)・REUSE(再利用する)・RECYCLE(再生利用する)・REPLACE(置き換える)”の置き換えるにあたりますが、本来は減らすことに取り組むのが理想的。ただ、生理現象なので使用量を減らすことはできないし、再利用も衛生上望ましくない。なので、今後は再生利用が鍵に。そこに関しては生理用品を作っている企業側の話になるのですが、衛生用品の中でも紙おむつはすでにユニ・チャームがリサイクルの実証実験を始めています。また、環境負荷の低い天然素材を使用したナプキンも一部で生産されているものの、使用感などの問題で浸透しづらい部分も。便利さを損なわずにより環境に優しい製品を生み出していくことも、リサイクルと同様に企業側の課題といえます」
そういった取り組みに前向きな企業の製品を購入するのも消費者ができるアクションのひとつだが、一方で大きな問題があるという。
「2019年に開かれたG20大阪サミットで海洋プラスチックごみの削減に関する宣言がありましたが、実は生理用品から生まれるプラスチックごみについては報道されませんでした。宗教上の問題などが理由だと思うのですが、生理について議論しづらい文化があるという点こそが根本的かつ最大の課題。ごみや環境は人類共通の問題なので、女性だけの話にせずに議論することが望まれます」
玉木 巧さん 株式会社Drop・SDGsコンサルタント。企業のサステナビリティ推進を支援。“SDGs経営”をテーマにした講演会はのべ40万人が参加。YouTube「SDGs media」で情報発信も。
身近な生理用品から、何ができる? 私たちが今、知っておきたいこと。
生理は生活と切り離せないからこそ、環境に優しい選択ができるのが理想的。普段から吸水ショーツを愛用中という井上咲楽さんと、フェムテック企業・fermata(フェルマータ)共同創業者兼CCOの中村寛子さんの考えとは?
井上咲楽:実は、今までナプキンがそんなにプラスチックを使用しているなんて知らなかったんです。吸水ショーツも「すごくラクだよ」って聞いたのが使うきっかけで、続けているのもその都度買う手間が省けることや、洋服に響かない点が快適だからっていう理由が大きくて。ただ、もともと私は量が多くて常に夜用のナプキンを使っていたので、結果としてごみの量はかなり減ったと思います。
中村寛子:fermataも創業時から吸水ショーツや月経カップを扱っていますが、環境というよりは生理日の選択肢を増やすという部分での提案が基本ですね。近年はサステナビリティの観点からフェムケア製品が注目されるようになってきたこともあって、イベントなどで月経カップと他の生理用品とのごみの比較などについてお話しすることもあります。
井上:月経カップは私も前から気になってはいるんですが、使ったことがないんです。入れ方がわからないし、漏れも心配で…。
中村:最初は不安ですよね。でも入れてしまえば基本的に一日これだけで大丈夫。多い日も薄めの吸水ショーツを合わせれば安心できますし、経血が空気に触れないからニオイも発生しにくくて快適。
井上:ロケの時とかによさそう! 何より、快適っていうのがすごくいいですね。月の4分の1は使うものだから、どんなに環境に優しくても心地よくないものを我慢して使い続けるのは厳しいと思う。
中村:そうなんです。「環境のためにもこっちにしたほうがいいよ」と言うと、ある意味同調を迫ることになりますよね。そうではなく、自分にとっての使いやすさを見出す中で、少しずつ意識が変わっていく感じでもいいのかなと。
井上:押し付けにならないことは大事ですよね。うちの実家は生ごみのコンポストを取り入れているしリサイクルにも積極的ですが、そもそもはごみ出しにかかる費用が節約できることから始まっているんです。生理用品も自分が心地よく生活するために選んだものが結果的に環境問題に貢献していたというのが理想で、SDGsのことだけを考えた選択肢はそれこそ“持続可能”ではない気がします。
中村:フェムテックのアイテムって、環境への配慮が行き届いた企業がすごく増えているんですよ。それらもSDGsだからやっているというより、自分たちが企業としてありたい姿を追求したら当たり前にそうなっていた感じで無理がないんですよね。使う側も同じで、まずは生理用品のように身近なものから環境問題に目を向けつつ、自身の体やライフスタイルに合わせて無理のない範囲でアクションをしていけたらいいですよね。
井上:そうですね。私も月経カップを試してみようと思います!
中村寛子さん fermata株式会社共同創業者兼CCO。フェムテック製品のショップをオンラインと実店舗で展開するほか、コンサルティング事業なども行っており、フェムテック市場の創出に努めている。
いのうえ・さくら 1999年10月2日生まれ、栃木県出身。『新婚さんいらっしゃい!』など数々の番組で活躍。SDGsへの関心の高さでも知られている。
Tシャツ¥8,030(リエ ミラー/フレディ新宿京王店 TEL:03・5339・6680) ビスチェ¥12,100(ノーリーズ自由が丘店 TEL:03・5701・0538) スカート¥13,200(ノーリーズ ソフィー大丸東京店 TEL:03・6895・2122) イヤリング¥38,500 イヤーカフ¥52,800 ブレスレット¥38,500(以上スタージュエリー銀座店 TEL:03・5537・8088)
※『anan』2022年8月31日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・池田木綿子 ヘア&メイク・輝ナディア イラスト・REDFISH 取材、文・真島絵麻里
(by anan編集部)