
「性的同意」とは、性行為において被害に遭わないためにも、トラブルを引き起こさないためにも大切なコミュニケーションのこと。オモコロで連載中の漫画「まじめなヤ◯サー」の夏目部長、レイナと共に、「性的同意」の基本について学びましょう。
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教えてくれた方
Profile
塩川泰子
弁護士、ニューヨーク州弁護士。東京都立大学システムデザイン学部非常勤講師、豊島区スクール・ロイヤー。学校現場での法教育にも力を入れ、出張授業にも取り組む。共著に『学生のための法律ハンドブック』(成文堂)。
お互いを尊重するのが、性的同意に必要な考え
アンアンで初めて“性的同意”について取り上げたのが2020年。2023年には刑法の改正で、同意がなければ犯罪が成立するようになった。この流れで、だいぶ世間に認知されてきたように感じるけれど…。
「性教育の現場では、学習指導要領上性行為そのものは教えられないと考える人が多く、性的同意とは何についての同意かを教えづらいのが実情。また学校で伝えられるのは不同意の場面ばかりで、本当の意味での“性的同意”を学ぶ機会は多くありません」(弁護士・塩川泰子さん)
生まれ育った環境によって性の規範は異なり、明確な表現を避けがちな日本のような文化圏では、意思表示もわかりにくい。
「お互い心身ともに傷つかないためには、まず相手の真意は完全にはわからない、自分の真意も伝わらない、と思っておくことが大切です」
また、意思表示が苦手な人が性被害者になるイメージがあるけれど、積極的な人こそノーを伝えにくい場合もある、と塩川さん。同意の有無を考える際には、対等性、非強制性、非継続性、明確性が視点となる。
「性的同意は、相手が自由に選べる状態をお互いに受け入れること。人権思想の基本と同じです。慣れてくると人はお互い雑なコミュニケーションをとりがちですが、慣れてきても人の尊厳は忘れないで。性的同意を前向きなコミュニケーションと捉え、イエスもノーもしっかり伝える習慣を身につけ、お互いを尊重する関係性を築いていきましょう」
What’s?「まじめなヤ○サー」

愛を伝える尊い性行為も、間違えれば間接的にも直接的にも暴力になるという思いから、性をまじめに考えるサークルを立ち上げた夏目部長。同じ大学に通う性に奔放なレイナが彼と出会ったことで生まれる心の変化を描く。
逆襲
イラストレーター、漫画家。日記を書くのが趣味。エッセイやギャグ漫画、今回紹介した「まじめなヤ○サー」など、作品はWebメディア「オモコロ」で掲載中。
性的同意を成立させる4つのキーワード
KEYWORD 1|対等性

力関係や上下関係が何も存在しない、相手と対等な関係かどうかを確認。
二人が社会的地位や力関係に左右されない、対等な関係であること。先輩と後輩、雇用主と従業員、教師と生徒などの地位だけでなく、恋愛感情を多く持っている側が弱者になって対等性が失われやすい。どちらかが強いなどの力関係や上下関係が何もないことが大切。立場が強い側が「断っても大丈夫」と明言することも求められる。
KEYWORD 2|非強制性

自分の本当の気持ちに従って、イエスやノーを自由に選べる状態。
無理やり「イエス」と言わせていないこと。相手が「嫌だ」「やめて」と断れる、「ノー」と言える環境が整っていること。「別れる」「写真をばらまく」などの脅しは当然NGながら、「お願いだから」と相手が根負けするまでしつこく要求し続けるのも強制の範疇。女性から男性へ強制している場合もあることを知っておこう。
KEYWORD 3|非継続性

以前に同意していたとしても、どのタイミングでもキャンセルOK。
一度OKしたからといって、その後もずっとOKではないという考え方。一つの行為への同意がその後の行為への同意を保証するものではないと知っておこう。人の気持ちや体調は常に変化するものだから、同意はいつでも撤回できる。どちらかが撤回したいなら、その意思は尊重されるべきだとお互いが理解しておくことが大事。
KEYWORD 4|明確性

相手の明らかな「イエス」を、お互いにわかる形で確認し合う。
性的な場面では、「たぶん大丈夫だろう」「嫌なら言うはず」という思い込みが大きな誤解に繋がりがち。だからこそ相手の「イエス」が自分にも相手にもわかる形で確認できているかを大切にする必要がある。したい時は女性側から伝えるのも「イエス」の表明。その際、相手の「ノー」を受け取れる心の余裕も持っておきたい。
それってOK?
まじめなヤ○サー・夏目部長と一緒にチェック!
CASE 1
手を繋いだり、ハグをしたり、キスをするのは好きだけど、セックス(挿入)はしたくない…。

したくないことはしなくていい。自分の気持ちを最大限尊重しよう。
「いつでもどの段階でもキャンセルしたくなったらすればいい。自分の性の価値観は大切にするべき。“キスしたらセックスをOKしたも同然”なんて思い込んで迫ってきたり、『なぜ途中でやめるのか!』と怒るような相手は願い下げでいい」
CASE 2
同意の上で性行為を始めたけど、途中でやめたくなった。

同意はいつだって撤回していい。自分の気持ちに正直にノーと言おう。
「これも非継続性の問題。気持ちが変わる、体調が変わるなんてことは人間なら誰にだってある。相手に悪いと思って性行為を続けたら、自分の心とカラダを大切にしていないのと同じ。自分に正直になろう。その上で相手のケアもできたら、最高だ」
CASE 3
二人で飲む→どちらかの家に寄ってセックスする、が定番だけど、今日はそんな気分じゃない…。

理由が明確でなく、気持ちが変わった。そんなレベルで拒否しても許される。
「いつもそうだから、なんてことは同意に繋がらない。『そんな気分じゃないってどんな気分だよ』と言われても、それは仕方ないことだ。自分の気持ちの変化を受け入れてもらったら、今度相手に同じことを言われても怒ったりしないのが大事なんだ」
CASE 4
圧倒的な片思いから始まった関係で、断りづらい…。

惚れた弱みか相手の気持ちを尊重しがち。それは対等な関係ではない!
「社会的地位の差が問題になることが多いが、圧倒的な片思いで振り向いてもらった場合も、力関係ができがちだ。相手の要求につい応えてしまいやすいが、それは健全な関係ではないと知ってほしい。自分のイエスやノーはきちんと言わないとダメだ」
CASE 5
無意識のうちに、相手に対して(自分が)セックスをしてあげていると思って、強気に出てしまう。

二人の心地よい関係を続けたいなら、性行為へ至る過程を見直すべき。
「上から目線は、性的同意の対等性が崩れている。してあげていると言いながら、実は相手に強制的に性行為を求めている可能性もあるんだ。相手が望んでいるのか、お互いに心地よい関係性を築けているか、一度見直したほうが二人のためだ」
CASE 6
断られたことがないからと、寝てる相手を起こして上にまたがる…。

これは非強制性の問題。女性も加害者になることがある。
「女性から誘われたらいつだって男は喜ぶもの、というのは勝手な思い込みだ。自分にイエスとノーの時があるのと同様、男性にだってノーの時があることを覚えておこう。相手の同意を確認せずに始めてしまったら、女性にだって犯罪は成立する」
性的同意を理解するためのポイント
性的同意はロマンティックなコミュニケーション。
あらゆる行為に同意を取るなんて興ざめしてしまいそう、と思うなかれ。「性行為もその前に必要な同意も、お互いの愛のコミュニケーションだと捉えるといいのでは。性行為に至る前に緊張している男女が、アリかナシかという会話をするのもロマンティック。野暮にしないためには、二人だから成り立つOKサインを決めておくのもおすすめです」(塩川さん)。強引に始まる行為より、同意後のセックスこそ安心でき、心身が満たされるはず。
ノーだけでなく、イエスも言えるようにすることが大切。
性的同意で重要なのは、ノーだけでなくイエスも発信できること。「普段からイエス・ノーをはっきり言えない人は、性行為でも自分の意思を曖昧にしてしまいがち。相手のペースに流されやすいなら、普段からイエス・ノーの意思表示をする癖をつけていきましょう」。また、性的な話が苦手なら、相手に最初に伝えておくのも必要なこと。「こういう形でならイエスを伝えられます、など自分なりにできる同意のサインを示してもいいでしょう」
性行為を断るのはお茶の勧めを断るのと同じくらい自然なこと。
断ったら嫌われてしまうのでは、と考えるのは性行為を重く見すぎ。その程度で嫌いになる人なら、人の意思を尊重できない人間だとジャッジすべき。「お茶を断るのと一緒です。飲みたくない人に強制してお茶をあげて喜ぶんだとしたら、それは相手のことを大切に思っていないということ。性的なことを断られるほうが傷つく気持ちもわかるけど、丁寧に自分の本当の気持ちを言えばいい。それで怒るなら、相手に心の余裕がなさすぎます」
逆襲さん’s コメント
「好きな相手の嫌がる顔は誰しも見たくないもの。お互いの性行為の価値観について自然に話せる時間を持つほうが、性行為そのものよりも大事だと感じています。性について知る機会のひとつになればと思っていますが、今後も、ギャグを交えつつ、笑いながら性についてまじめに考えられる続編を描いていきます」
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