
誰と付き合うか、誰とセックスをするか。いつ何人子どもを産むか、あるいは産まないか。それは全部、自分が決めていいこと。自分にとってベストな決断をするには、正しい知識を持っていることが大切。より良い人生のために、今年も学びましょう。今回は、「リプロダクティブ・ヘルス」について。
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お話を伺った方々
Profile
小野美智代
国際協力NGOジョイセフ 広報。女性の命と健康を守るために欠かせない人権としてSRHRを推進することを目標とした、日本生まれの国際協力NGOで、広報などを担当。https://www.joicfp.or.jp
柴田綾子
淀川キリスト教病院 産婦人科 医長。日本産科婦人科学会 専門医、指導医。アジアや世界遺産を15か国ほど旅をした経験から、母子保健に関わりたいと産婦人科医の道へ。女性の健康支援に関する活動も多数。
浜野愛理
銀座並木通りウィメンズクリニック 院長。日本産科婦人科学会 専門医。女性ヘルスケア専門医の資格も持つ。院長を務めるクリニックは、自身も含め女性スタッフのみが在籍している。https://obgynclinic.co.jp
SRHRとは?
Sexual and Reproductive Health and Rights(性と生殖に関する健康と権利)
キーワードはこの4つ
- セクシュアル・ヘルス
- リプロダクティブ・ヘルス
- セクシュアル・ライツ
- リプロダクティブ・ライツ
理想の人生を選ぶために、正しい知識を身に付けて
最近耳にする機会が増えている「SRHR」。これは、自分の体や性、生殖について、誰もが十分な情報を得られ、自分の望むものを選択できるという概念のこと。
「SRHRとは、私たちが自分の望む人生を生きるために欠かせない“基本的人権”。その内容は、自分の体をどうするか、どう生きていきたいかを決めるのは、自分自身である、ということ。1994年に国際人口開発会議では、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(RHR)が国際的に大きく位置づけられ、その後、性に関する健康と権利も含めた考え方として SRHRという概念が広がり、現在では国や自治体なども使うようになりました」(国際協力NGOジョイセフ広報・小野美智代さん)
この概念には、上記の4つのキーワードが含まれており、女性のライフステージに大きく関わる“性”、妊娠・出産とも深い関係が。
「当事者である私たちが適切な知識を持ち、それに基づき自己決定ができることは何よりも大事です。ぜひSRHRについて学び、それを元により良い人生を選び取ってほしいと思います」(小野さん)
リプロダクティブ・ヘルス
リプロダクティブ・ヘルスとは、生殖に関わることについて必要な情報を手に入れたり、医療支援を受けながら、その上で自分にとって望ましい選択を安心してできる状態のこと。
「世の中には、子どもを産みたい人、産みたくない人、さらにはそういったことに全く興味がない人もいますが、どんな考えを持っていても安心して生きていけることが大事です。子どもができたとき妊娠を継続するかどうか、またいつ、何人子どもを持つかなど、自分の人生に関わることを自分で決められ、必要な医療や支援を受けられる環境があることも大切です」(小野さん)
テーマ1|月経
回数を減らす・止めるはあなたが決めていい
毎月1回訪れる月経(生理)。出血があるし、生理用ナプキンを取り換えるのも憂鬱だし、何よりナプキンを買うのもお金がかかる。本当に生理って、面倒くさい! なんでこんなものがあるんだか…。
「昭和や平成の初期までは、生理はつらくても痛くても我慢するもの、という印象がありました。確かに月経は自分の体調を知る大切なバロメーターではありますが、“生理がないほうが生活しやすい”と感じるのであれば、医学的には月経の回数を減らす・止めることは可能ですし、そうすることで体への悪影響があるわけでもありません。ライフスタイルに合わせて生理をコントロールするというのは、現代女性の権利であり、生き方のひとつです」(柴田さん)
一方で、重い生理が毎月繰り返されるのは、子宮内膜症など婦人科系の疾患の原因になることもあり、それは将来の不妊につながる可能性も。重い人も、軽い人も、生理との付き合い方を、改めて考えてみましょう。
生理とは、妊娠準備のために厚くなった子宮内膜が、月に1度、血液として排出されること
早い人は10歳くらいから始まり、一般的には50歳くらいまで、月に1回やってくる生理。女性ホルモンの働きによって起こる現象。
「月に1回排卵があり、同時に子宮内膜が受精卵着床のために厚くふかふかになりますが、妊娠しなかったときに厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、膣から体外へ。出血の量や周期は人それぞれです」(柴田さん)
量が多い、お腹が痛い。全然来ない、量が極端に少ない。そんな場合は一度婦人科で検査を
人それぞれとはいうものの、お腹が痛い、極端に量が多い・少ないといった場合は、一度婦人科を受診してみて。
「ナプキンが1~2時間でいっぱいになるほど出血が多い、鎮痛剤が手放せない。逆に3か月以上生理が来ない、不正出血がある…。そんな生理には病気が隠れている場合もあるので、ぜひ婦人科へ」(柴田さん)
不調をそのままにしておくと、将来の不妊につながることも…
重い生理や過多月経の裏には、左ページで解説する「月経困難症」が隠れている場合もあり、それを放置してしまうと子宮や卵巣に問題が起こり、将来自然妊娠がしにくい体になる場合も。
「病院では子宮と卵巣の状態を診て、血液検査でホルモンの状態を確認します。治療はできるので、安心して病院に来てください」(柴田さん)
つらい生理、我慢する必要なし! 回数を減らしたり、止めたりもOK
重い生理の人はもちろん、量も多くない、痛みもない、でも面倒くさいからなくしたいという人も、気にせず減らしていいのだとか。
「減らすことでまず貧血の症状が改善され、重い月経による疲れやすさも軽減。また物理的にナプキンを使う回数が減るので快適になり、経済的にもラクに。さらに、月経困難症のリスクも減らせます」(柴田さん)
生理と関係する不調あれこれ。思い当たるものがあれば、まずは婦人科へ
お腹が痛い、出血が多い、イライラする…。もしかしたらそこには病気が隠れているかも。解決法はきっとあるので、医師に相談してみましょう。
月経困難症
日常生活に支障をきたすほどつらいなら、病気の疑いも
月経困難症とは、普通に生活が送れないほど重い生理によって引き起こされる症状のこと。具体的には腹痛、腰痛、頭痛、吐き気など。また気分の落ち込みを感じることも。
「生理はだいたい10代前半で始まり、月経困難症は20代前半から増える傾向が。左の3つの症状は、いずれも生理の回数が多ければ多いほど悪化するもので、放置すると炎症や癒着が進み、不妊症や卵巣機能の低下につながることも。卵巣は“沈黙の臓器”です。症状が出る前に診察を受けましょう」(柴田さん)
子宮内膜症
多くの人が患っているという説もある…。
本来子宮の内側にあるはずの子宮内膜に似た組織が、卵巣や腹膜、卵管など子宮以外の場所で、月経のたびに増殖してしまう病気。これは生理のときに排出されるわけではなく、お腹の中に溜まったり、他の臓器との癒着が起こることも。代表的な症状は、強い生理痛や性交痛、排便時の痛み、慢性的な下腹部痛。
子宮筋腫
良性のコブのようなもので痛みがある場合も。
子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、30~40代の女性に多く見られる症状。大きくなるのは、卵巣から分泌されるエストロゲンが原因。過多月経や生理痛、貧血、頻尿、下腹部の圧迫感などが代表的な症状。放置すると貧血が進行したり、不妊や流産、早産の原因になる場合も。定期的にエコー検査を受けるのがおすすめ。
卵巣腫瘍
沈黙の臓器にできる腫瘍は初期症状がない…。
卵巣にできる腫瘍の総称で、良性・悪性・良性と悪性の間という3つのパターンが。初期はほとんど症状がなく、気づきにくい病気。大きくなると、お腹の張りや下腹部痛、頻尿などの症状が現れることも。放置すると腫瘍が大きくなって卵巣がねじれる“卵巣のう腫茎捻転”を起こし、緊急手術が必要になる場合も。
PMS
生活の質の低下を招いている場合は医師に相談を
生理の3 ~10 日くらい前から心と体にさまざまな不調が現れ、生理が始まるとそれが自然に軽くなる症状のこと。イライラや気分の落ち込み、不安、涙もろさなどの精神症状に加え、眠気、疲労感、頭痛、乳房の張り、むくみといった身体症状もみられる。20~30代では仕事などのストレスも影響し、精神症状を強く訴える人が多い。服薬や生活改善によって軽減できることもあるので、“気のせい”や“性格の問題”と我慢せず、生活に影響を与える場合は婦人科で相談するのがおすすめ。
テーマ2|ピル
日本でも使用率が上昇。生理管理と避妊に役立つ
女性ホルモンを含む“ピル”は、女性の排卵に作用する飲み薬。入っているのは主にエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモン。
「昔は避妊目的のイメージが強かったものの、最近はそれだけでなく、生理痛やPMS、子宮内膜症の治療目的で服用する若い世代が増えています。特に今はオンラインでも処方してもらえるので、ハードルは下がっている印象があります。ただ使用率が30%くらいある欧米に比べると、日本の使用率は10%程度なので、まだまだ。“副作用が心配…”とためらう方も少なくはありません」(柴田さん)
月経困難症の症状がある場合は保険適用が可能で、避妊目的等の場合は自費。安ければ1か月1000円程度、高くても3000円程度で処方が可能。
「ピルにもいろいろな種類があるので、自分の体質や体調などを確認した上で、医師と相談し、自分に合ったものを適切に服用することが大事です」(柴田さん)
ピルの目的は、月経に関係する不調の治療や、避妊
服用すると、体内の女性ホルモン量が安定します。脳はその状況を“ホルモンが分泌されているから、出す必要がない”と勘違いするので、卵巣は刺激されず排卵も起こらない=妊娠しないということ。また同時に子宮内膜が厚くなることもないので、生理も軽くなる。さらにホルモン量の増減が少ないのでPMSも軽くなる、という仕組み。
今はオンライン診療でも処方可能。でも生理に問題があるなら医師に相談を
基本的にピルの処方は、医療機関にて医師の診察と処方箋が必要。2018年よりオンライン診療が試験的に導入され、2020年には初診からのオンライン処方が本格的に解禁・普及しました。でも、月経困難症やPMSの症状の軽減を目的にピルを飲みたい場合、医師に相談をしたほうが、より症状に合ったピルを処方してもらえる可能性が。
飲み始めの時期は、副作用が出ることも
副作用としては、飲み始めの時期に吐き気や不正出血、乳房の張りなどが起こることも。ただその多くは数か月で軽快するそう。日常的な喫煙や持病がある人は稀に血栓症になることや、他にも子宮頸がん、乳がんのリスクがわずかに高くなる可能性も。不安がある人は医師に相談をして適切に服用し、定期的に受診することも忘れずに。
何が違うの? いろいろなピル
日本で一般的に処方されるピルのご紹介。含まれるホルモンの量や、使用目的が違います。
中用量ピル|月経日を移動させたり無月経の人の治療に。
日本で最も歴史が長いのが中用量ピル。2種類の女性ホルモンが入っていて、他のピルに比べるとエストロゲンの量が多い。昔は避妊薬として飲む人が多かったけれど、現在は主に月経日の移動や月経周期の調整、無月経、月経困難症、過多月経などの治療に使われる。ホルモン量が多いので副作用も強く、吐き気を感じる人も少なくない。
例えば…
プラノバール
日本で使われている中用量ピルはこの1種類。生理日の移動のために使用する場合は、自費になる。
低用量ピル|現在最もポピュラーに使われているピル。
2種類の女性ホルモンが入っており、ホルモン量はできるだけ抑えられているため、副作用は少ない。1日1錠飲み続けることで排卵が抑制され、高い避妊効果が。また排卵が抑制されるため女性ホルモン量の変動が少なく、PMS改善や月経痛、過多月経などの治療にも。子宮内膜症(チョコレートのう胞)の病変の縮小も期待できる。
例えば…
アリッサ
月経困難症の治療を目的とした低用量ピル。天然型エストロゲンを含んでおり、血栓症リスクが低い。
超低用量ピル|ジェネリックもあり安く購入できる。
女性ホルモンが2種類入っているのは他と同じだが、エストロゲンの量が0.03mgより少なく、月経痛、子宮内膜症の治療を目的としたピル。排卵を抑える効果があるので妊娠しにくい状態にはなるが、日本では避妊を目的とした薬としては認められていない(海外では避妊目的で処方されることも)。不正出血が起こりやすいデメリットも。
例えば…
ドロエチフレックス
先発品「ヤーズフレックス」のジェネリック。価格が先発品の半額程度で済むのがうれしい。
ミニピル|血栓症の心配が低い、新しいピル。
エストロゲンを含まず、プロゲステロン(黄体ホルモン)のみが入ったピル。昨年6月に承認されたばかり。主な目的は避妊で、子宮口の粘液を粘り気のある状態にし、精子を侵入しにくくさせ、排卵を抑えることで避妊効果を発揮。喫煙者や血栓症リスクが高い人、授乳中の人など、エストロゲンが使えない人の新しい選択肢として人気。
例えば…
スリンダ
排卵抑制効果が高い。24錠の有効錠+4錠のプラセボ錠を1周期として、毎日決まった時間に服用。
黄体ホルモン単剤|主に月経困難症の治療が目的。
こちらも黄体ホルモンのみが入った単剤ホルモン剤だが、目的は子宮内膜症や月経困難症の治療なので、病気の改善を目的とした薬の量や飲み方で服用する。こちらも血栓症のリスクが少ないので40歳以上でも安心して使えるが、飲み始めには不正出血が起こることも。避妊薬ではないので、他の方法でしっかり避妊をする必要がある。
例えば…
ディナゲスト
月経困難症の治療のために生理を起こさせないピル。避妊薬の承認はされておらず、効果は未保証。
anan 2507号(2026年8月5日発売)より

































