意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「香港マンション火災」です。
大規模火災になる背景に、香港の社会情勢の影が
昨年11月末に香港の高層マンション群「宏福苑」で火災が起き、2日間にわたり燃え広がり、8棟のうち7棟が焼けました。12月26日の時点で死者は161人、4600人以上が避難生活を強いられるなど、香港史上最悪級の火災事故となりました。
宏福苑は築40年を超える32階建ての超高層マンション群で、修繕工事中でした。当初、「竹で組まれた足場のせいで燃えた」とメディアで報道されましたが、竹は元来、延焼性が低く、実際焼け残っていました。燃えたのは竹に覆いかぶせていた防護ネットで、防火性の低いものが使われていた可能性があり、外壁も耐火性の低い素材が使われていたとみられています。住民が度々指摘したにもかかわらず、火気厳禁の現場で工事業者がタバコを吸っていたという報告もあります。
このマンション群は、日本のかつての住都公団のようなもので、1980年代以降、生活困窮者用に用意され、独居の高齢者も多く住んでいました。香港の民主派の区議だったサム・イップさんに取材したところ、親中派の議員と中国から来た工事業者が結託し、利幅を上げるために安全基準を満たしていない資材を導入、コストカットの問題がかねてより指摘されていたそうです。しかし、2019年の香港民主化デモ以降、民主派の議員は一掃され親中派のみになりました。体制に批判的な声を受け止める機能が失われたため、独裁的な社会情勢がこのような問題の対処を遅らせたといわれています。
火災直後、火災に関する独立調査を求める署名を集めた大学生が、扇動の疑いで香港警察国家安全処に拘束されました。今後も、当局に不都合な真相はおそらく出てこないでしょう。
日本の共同住宅火災は、2025年の1~6月で2048件と、前年よりも増えています。電気機器のトラブルにより出火が増加しているとのこと。モバイルバッテリーの発火事故も近年頻出しています。ベランダや入り口に燃えやすいものを置いていないか、階下に下りる通路を塞いでいないか、避難経路の確認など、いま一度、身の回りの防災設備の点検をしていただけたらと思います。
五月女ケイ子解読員から一言

今の香港は、給料が高くて税率が低かったり、子供の教育にもお得ということで中国からの移民が増えているのだとか。一見勢いを取り戻し息を吹き返したかのよう。でも人々の思いや叫びは届かない。空洞のような都市が浮かんできて少し怖くなりました。
解説員
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堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
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五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2481号(2026年1月28日発売)より























