アンケートから見る、想いの伝え方
今、人々はどう想いを伝えているか…。100人のアンケート結果を見ながら、2人の識者にアドバイスをいただきました。
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Q. あなたは“想いを伝える”ことが得意だと思いますか?
YES…30%、NO…50%、どちらでもない…20%
半数がNoと回答。Yesは3割にとどまり、日本人のシャイな傾向を裏づける結果に。感謝の気持ちや好意を感じていても、相手にうまく伝えられない歯がゆさを多くの人が感じている模様。ネガティブなことならなおさら伝えにくい。
Q. 日々、想いを伝えていますか?(感謝や要望など)
【To 仕事相手】
YES…40%、NO…60%
【To パートナー&好きな人】
YES…45%、NO…55%
【To 友人&家族】
YES…61%、NO…39%
友人や家族に対しては伝えられていると思う人が約6割。一方、パートナーや好きな人、そして仕事相手には4割台と、半数以下の結果に。職場での交流や恋愛関係の構築に気を遣うことの多い昨今、適切に想いを伝えることが難しいのかも。
Q. 想いを伝えられて、嬉しかった経験、逆に困った経験はありますか?
【嬉しかった経験】
・LINEで友達から急に、「いつもありがとう」と来た時は驚いたが嬉しかった。
・知人とLINE交換した日に「実はずっと友達になりたかったから嬉しい」と送られてきて素直に嬉しかった。
・「仕事を覚えるのが早い、助かる」と言われた時。
【困った経験】
・仕事のミスを先輩にチャットで指摘された時、文章のみでとても怖くて悲しかった。
・長文のLINEが来た時、結論にいくまでが長すぎて疲れてしまった。言いたいことは簡潔にしたほうがいいんだなと学んだ。
・お客様を接客中に接客や外見を褒めてもらって嬉しかったけどどうしていいかわからなくて、困った。
ネガティブなことを文字で伝えられると、相手の表情やテンションがわからず不安を感じる人が多数。親しくない相手からの褒め言葉や好意に動揺するケースも。
Q. 今、誰にどのような想いを伝えたいですか?
・上司に「いいように使いすぎ」と言えるようになりたいです!
・付き合っている彼氏に、「そろそろ結婚したい!」と伝えたい。
・両親。照れくさくてなかなか言えないけど「会いたい」「会えて嬉しい」と伝えられるようになりたい。
気持ちを伝えたいシーンは人それぞれ。「心理学では、伝えて後悔するほうが、伝えずに後悔するより引きずりにくい。迷っているなら伝えてみて」(臨床心理士・塚越友子さん)
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“ちょうどいい”伝え方とは…。元々の苦手意識に加えて、新たな悩みも発生。
「日本人は想いを伝えることに苦手意識を感じやすい」と語るのは、臨床心理士の塚越友子さん。
「令和はコンプライアンスの時代。最近はなんでもハラスメントになるリスクがあるので、昔よりも言葉を選ぶ必要があります。また、空気を読まずにはっきり物を言う人や、逆に感受性の強い人も気を揉む環境に置かれやすく、コミュニケーションに関する悩みは複雑に。昔とは違った意味で、想いの表現が難しくなっています」
スピーチライターの日向優理子さんは、「対面で人と話す機会が復活しつつあることで、コミュニケーションの悩みが再燃している」と語る。
「オンラインでは目立たなかった“伝え方”に関する課題を、改めて感じている方が多いです」
実は、奥深いアクション。努力するうちに、新しい自分との出会いも。
塚越さん曰く、想いを伝えるポイントは3つ。
「1つ目は、自分を理解すること。2つ目は、相手を理解すること。そして3つ目は、相手が理解できる言葉・行動で表現することです。まずは、自分が何を感じてどんな状態なのかを自分で理解することが大切。それから相手は何を感じていたのか、どう思っているだろうか? ということも考えましょう」
相手と今後どのような関係性でありたいか=“対人目標”を考慮することも大切だそう。
「理想的な関係性を目指して、自分と相手について理解できたことをもとに想いを“表現”する。想いを伝えるための工程に向き合えば、自己理解が深まり、社会性も身につきます。自分をこう見せたいという印象の管理にも役立ちますよ」
想いを伝えることで、自分自身も成長できそう。
相手ファーストを意識して、伝え方を考える。
想いを伝えるツールも多様な時代。想いを上手に伝える秘訣はあるだろうか?
「テキストメッセージはカジュアルですが、準備を忘れないで」と日向さん。
「思いついたことをすべて書いて送るのではなく、この言葉で伝えて大丈夫かな? と立ち止まって。受け取る相手のことを考えて、伝えたい通りに受け取ってもらえるか、見直してから送るといいですよ。対面は場を共有できることが強み。話し言葉は流れやすいので、メッセージを明確に、言葉を短く切るなど工夫してみましょう」
どんな場面でも大切なのは“相手ありき”。
「同じ言葉でも受け取り方は人それぞれ。相手はどう受け取るかを考えて、準備をして伝えてみて」
PROFILE プロフィール
塚越友子さん
臨床心理士、公認心理師、教育学博士。「東京中央カウンセリング」代表。メンタルヘルス相談にのる傍ら、メディアへの出演や講演・研究を行う。
日向優理子さん
スピーチライター、スピーチトレーナー。話し方トレーニングサービス「kaeka」所属。経営者、政治家、社会人をクライアントに話し方のトレーニングを行う。
anan 2433号(2025年2月5日発売)より