尾上右近、自身を歌舞伎の道に導いた“憧れの鏡獅子”に挑む

エンタメ
2025.04.12

尾上右近さん

ついに! 尾上右近さんと『春興鏡獅子』(しゅんきょうかがみじし)の因縁を知る人であれば誰もがそう思うはず。今なお名優と語り継がれる曽祖父・六代目尾上菊五郎が踊る鏡獅子の映像を3歳のときに見て、父親が歌舞伎俳優ではないにもかかわらず、歌舞伎の世界に引き入れられた演目。長年焦がれた夢が4月の歌舞伎座でついに叶う。

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自身を歌舞伎の道に導いた、憧れの鏡獅子に挑む。

「ずっと夢でもあり目標だと言い続けてきただけに、今の僕は夢も目標も希望も失われた状態(笑)。ただ今からは、これを当たり役にして生涯を通じて“右近といえば鏡獅子”と言われるものにしていくことが目標になってくるのかと思います」

役者の道を志そうと決めたときから30年という絶好のタイミング。

「初舞台が7歳の4月で、そこからちょうど25年。右近になってから20年で、自主公演で初めて鏡獅子を踊ってから10年。今回、自分にとって新たな節目になると確信しています。歌舞伎には、歴史、文化、娯楽…さまざまな側面があって、その中でも最も芸術性に特化したのが鏡獅子だと思っていますので、芸術の域を目指して向かえたら、と」

『春興鏡獅子』は、舞を所望された小姓の弥生が御前で踊るうち獅子の精が姿を現すというもの。前半は美しく可憐な小姓、後半は勇壮に毛を振る獅子の精を、ひとりの俳優が踊り分けるのが見どころだ。

「おそらく最初に惹かれたのは、三味線の音だったと思います。自分のDNAに呼応したんでしょうね。そして六代目菊五郎という役者の気迫です。弥生の踊りは、まっすぐなのにどこかふくよかで柔らかさがあって。そこから獅子に変わって出てきたらシルエットからすでにカッコよくて、壁のように迫ってくる感じがあって、画面越しではあったけれど圧倒されました。ただ自分は六代目ではないわけで、踏襲すべきことを見極めて、その中で僕なりのものを見つけていかないと、本当のリスペクトにはならないと思っています。これまでことあるごとに“血よりも濃い水がある”と言ってきましたし、それが存在することも知っています。でも今回に関しては、自分の中に六代目との繋がりがあることを大事にしたいと思っています」

この先きっと何度も踊るであろう鏡獅子の、これが序章となる。

「先を見れば果てしないけれど、それより日々大好きな歌舞伎をやれていることが嬉しい。結局今も、欲しいものを与えられて喜んでいる子供と一緒の感覚なんですよね(笑)」

撮影・岡本隆史

Ⓒ研の會

PROFILE プロフィール

尾上右近

おのえ・うこん 1992年5月28日生まれ、東京都出身。近年は映像作品やミュージカルなど広く活躍しており、映画『ライオン・キング:ムファサ』日本語吹き替え版では声優も務めた。

INFORMATION インフォメーション

松竹創業百三十周年 四月大歌舞伎『春興鏡獅子』(しゅんきょうかがみじし)

4月3日(木)~25日(金) 新歌舞伎十八番の内『春興鏡獅子』が上演される夜の部は16:15開演。東銀座・歌舞伎座 1等席1万8000円 2等席1万4000円 3階A席6000円 3階B席4000円 1階桟敷席2万円 チケットホン松竹 TEL:0570・000・489

詳しくはこちら

写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・白石義人(ima.) インタビュー、文・望月リサ

anan 2441号(2025年4月2日発売)より

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