今の時代、護るべき大切なものとは?
社会情勢も、地球環境も、人々の価値観も、日々、目まぐるしく変化している現代。これまで通り、真面目に暮らしていれば大丈夫と思っていると、思わぬ落とし穴に落ちてしまいそう。
「“自分を護る”。とても現代的なテーマだと思います。自然災害もそうですが、犯罪やトラブルもいつ誰が巻き込まれてもおかしくありません。他人事と思わずに、防災や防犯の備えをしておくことは大事だと思います。あなたのパソコンやスマートフォンが狙われる可能性は十分ありますから」と、ジャーナリストの堀潤さん。
タレントの山崎怜奈さんは6年前から警察庁の特別防犯支援官を務め、様々な詐欺事件の対策や防犯知識の啓発に携わっている。
「SNSやインターネットを使った詐欺が多様化しています。物質的な被害もありますが、それ以上に精神的なダメージが大きい。後々まで響きますし、心の傷を癒すのには時間がかかります。自分は大丈夫と思っている人ほどショックを受けるので、巻き込まれる前にリテラシーを高めておくのはいいですね!」
知らないうちに個人情報が抜き取られたり、家計が苦しくなっていたり。世の中で起きている事件や世界経済について知識がないことが、リスクを抱える要因になっているみたい。
「ぜひ、ニュースを見てください」と堀さん。実は私たちの暮らしと世界で起きていることの間には関わりがある。また、便利なことやお得な情報に飛びつきたくなるけれど、基本的にうまい話に簡単に乗らないというのもポイント。
「大概のおいしい話は信じない方がいいと思います。そもそも社会はそんなに自分に優しくできていないと思って生きています(笑)」と、慎重姿勢の山崎さん。便利なサービスの裏に、提供する側のどんな意図があるのか。引いた視点で考える癖をつけておくのも身を守る術になりそう。
堀さんは、自分だけではなく、他者と声をかけ合い、助け合うことの重要性も力説した。変化の激しい昨今だからこそ、「こうしていれば大丈夫」と安心せずに、柔軟な姿勢で情報を常にアップデートしておこう!
「かつて、『こうでなければ』という固定観念が日本を戦争に突き進ませました。DVにしろ、悪質な宗教にしろ、他の選択肢はないかのように思い込ませます。『そういう考えもあるのか』『今はそっちの選択がベストかも?』と柔軟に受け入れられたら、自由な自分を守れると思います」(堀)
個人情報を護る
買い物やサービス、コミュニケーションもネットを多用することになり、個人情報の流出やトラブルのニュースをよく耳にする。どんなことに気をつければよいのか?
――デジタル社会になり、思わぬことからトラブルに巻き込まれるケースもあるようですね?
堀:ものすごく増えているのはロマンス詐欺です。中高年に多いですが、若い方も被害に遭われています。警察は今、サイバー犯罪対策に力を入れているんですよね?
山崎:そうですね。若い方では「闇バイト」、高額報酬を騙りSNSを使って求人募集をし、特殊詐欺の受け子をさせられる事件が増えています。辞めたくても、自宅や実家の住所、電話番号など、個人情報を知られてしまっている場合、それらを晒すぞと脅されてしまうんですよね。
堀:誰にも相談できず抜けられなくなってしまいます。もし巻き込まれたら、迷わず警察に相談してください。
山崎:本当に。即、警察です!
堀:ロマンス詐欺や投資詐欺も、都市部だけでなく、地域の方がピンポイントで被害に遭うケースが急増しています。「まさか私が狙われるなんて」と衝撃も大きい。SNSや国際電話などで甘いことを囁かれて、ロマンス詐欺の場合は恋愛感情も利用されるのでダメージは想像以上です。
山崎:国際電話を利用した特殊詐欺もありますね。「+1」や「+44」などから始まる番号からかかってきても出ないことです。国際電話がかかってくる可能性のない人は、利用休止の申し込みをしてシャットダウンしてしまうのも手。身近なできるところから始めるといいと思います。堀さんは仕事柄無理でしょうけど(笑)。
堀:(笑)。本物に酷似した偽サイトに誘導してクレジットカードの番号を抜き取るフィッシング詐欺も怖いですよね。Amazonからのメールと思ったら、よく見たら「Amason」だったとか! 本当に巧妙に作られていて。URLはしっかり確認しましょう。
山崎:宅配業者から「荷物を届けたのですが不在でした」、大手銀行から「口座に不正アクセスがありました」という嘘のショートメールが来て、偽のウェブサイトに誘導されるというのもありますよね。クリックする前に一歩踏みとどまってほしいです。本当に口座トラブルがあったら、銀行から直接電話がかかってきたり、封書で通知が届きますから。とにかく怪しいメールは無視です!
堀:犯罪に巻き込まれないためには、とにかくそういった事例をたくさん知ることですね。似たような手口を聞いたことがある…と思えば踏みとどまれますから。
山崎:パソコンに「ウイルスに感染しました。ここにアクセスしてください」などのメッセージが出てくることもありますが、嘘ですから、慌てないでほしいです。
堀:とにかく、まず電源を切る。オフラインにすることです!
山崎:「電源を切るとウイルスが広がります」というようなエラーメッセージも出ますが、それも嘘なので早く切った方がいいです。「◯分以内に○○しないと」と不安を煽られても、図太く無視! 脅しに乗らない。
堀:不安を煽るメールは大体怪しいと思った方がいいですね。近年、水道施設や病院がサイバー攻撃を受けていますが、入り口は、アップデートしていない個人の古い端末だったりします。デスクトップタイプのPCや古いルーター、Wi-Fi機器、新しいものにしていますか? 定期的に新しいものに替えないと狙われます。
山崎:それか、ウイルスソフトを最新のものに更新するかですね。
――街中のフリーWi-Fiも危ないのでしょうか?
堀:安全とは言いがたいですね。海外の空港のフリーWi-Fiも「airport…」というURLで、空港が運営していると思っていたら、情報を抜き取るために作られた偽物だったりします。
――名前や電話番号などは様々な場面で提出させられる機会も多く、「今さら個人情報を晒さないのは無理」「ある程度は仕方がない」と考える人もいるようですが。
堀:結局、問題なのは、個人情報を誰に預けるか? ですよね。セキュリティのしっかりしている銀行なのか、よくわからない海外の通販サイトなのか。名前や住所、電話番号、クレジットカード番号など、大切な自分の情報を無防備に明け渡してしまうと、ターゲットにされて事件やトラブルに巻き込まれないとも限りません。
山崎:知識をしっかり身につけて、自分で自分の暮らしの舵を取らないと身を守れません。
堀:本当に。また、被害事例も対策方法も日々、更新されるので、最新情報を共有する、人と声をかけ合うことも大事だと思います。サイバーの世界は一人だけのリスクではないですから。
山崎:確かに。人が教えてくれる情報を受け取れるよう、柔軟な姿勢ではいたいです。ただ、鵜呑みにはしないで最終判断は自分で!
【CHECK!】SNS型の投資詐欺や、ロマンス詐欺が急増。
FacebookやInstagramなど、SNS上に実在の実業家の名を騙り偽の投資講座に誘導し、金を騙し取る「SNS型投資詐欺」。SNSやマッチングアプリを使って親密なやり取りを重ね、恋愛感情を持たせたところで、家族の病気などを理由に金を振り込ませたり、架空の投資を勧めて金を取る「ロマンス詐欺」。認知されているだけでも今年の1~8月に合計6868件、約877.9億円の被害が出ている。前年より4860件、666.8億円増。(警察庁)
PROFILE プロフィール
堀潤(ほり・じゅん)
ジャーナリスト。「8bitNews」「わたしをことばにする研究所」代表。早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX 月~金曜18:00~19:00)に出演中。
山崎怜奈(やまざき・れな)
タレント。2022年に乃木坂46を卒業後、クイズ番組や教育番組などに多数出演。『山崎怜奈の誰かに話したかったこと』(TOKYO FM月~木曜13:00~14:55)に出演中。著書に『歴史のじかん』。