心の不調のメカニズムや、現代人が置かれている状況についてお勉強。「自分はメンタルが強いから大丈夫!」という過信は禁物。生活習慣がメンタルヘルスに影響を与えるので、今の自分の状態を心の不調チェックで確認して。

心の不調の原因は、脳の使いすぎ!

シリーズ累計100万部を突破しているスウェーデン出身の精神科医アンデシュ・ハンセン氏の最新刊『メンタル脳』(新潮新書)によると、現代人は“史上最悪のメンタル”といわれ、とりわけ若年層の心の不調は世界的に広まっているそう。なかでも日本は特に深刻で、高校生の30%、中学生の24%、小学4~6年生の15%が中等度以上のうつ症状を訴えているとの調査結果も。そこで心の不調はなぜ起こるのか、脳神経外科医の奥村歩さんが解説。

「そもそも私たちの体や心をコントロールしているのは脳。“脳を使いすぎている”ことが、心の不調を引き起こしています。昔に比べて生活そのものは便利になりましたが、現代人はマルチタスクで、毎日やることがたくさんあり、人間関係も複雑で不安や心配事を多く抱えているため、日々脳を酷使しています。脳を使いすぎると、脳の機能が低下します。脳には、人の感情をコントロールし、不安を鎮めるシステムがありますが、その中心を担っているのが、大脳の前部分に位置し、人間の運動、言語、感情を司る『前頭葉』です。ところが脳の使いすぎでその前頭葉の機能が低下すると、不安を過剰に感じるようになり、これが心の不調に繋がるのです」

また、もともと日本人は遺伝子的に不安を感じやすい民族で、空気を読んだり、周囲に気を配って人間関係を良くしようとする特質があるため、脳に負担がかかり、メンタルも不安定になりやすい。

「日本人は、幸せホルモンと呼ばれる脳内の神経伝達物質のひとつ『セロトニン』が枯渇しやすい遺伝子を持っています。セロトニンは心身の健康の安定に深く関係しているのですが、人間関係の悩みや生活への不安を抱えるとセロトニンが分泌されにくくなり、脳は疲労困憊状態になります。そして脳を使いすぎている日本人に、さらに追い打ちをかけているのが、現代のデジタル社会やテレワークの定着による運動不足です。特にスマホ依存は情報過多になりすぎて脳を刺激し、大きなダメージを与えます。また働き方の多様化で、出勤しなくても働けるようになり体を動かすことが減ったことで脳はリフレッシュできず、脳を酷使し続ける結果に。そんな疲れすぎた脳を効率よくメンテナンスできるのが実は睡眠。良い睡眠は、外部の刺激(ストレス)から身を守り、脳の健康を保ち、心身を整えてくれるとても大切な時間です。しかし、日本は世界ワーストレベルの睡眠負債大国で、睡眠時間は年々短くなっている傾向にあり、脳の機能を回復できず、心の不調に陥る人が増加しているのです。この状態を放置していると、メンタルがさらに深刻な状態になり、若年層もまた将来認知症になる可能性が高くなるので、今のうちからメンタルヘルス対策をしっかり行うことが大切です」

また新生活が始まる春は、新しい変化にワクワクする一方で、新たな人間関係の構築などにより過度な緊張やストレスを感じやすい季節。知らず知らずのうちに心身に負担がかかっている場合があるため、下記の心の不調チェックで今の自分の状態を確認しよう。その上で、ストレスから身を守る方法を身につけたり、睡眠不足解消など、生活習慣を見直して。

心の不調チェック

最近の自分の状態を振り返りながら、当てはまる項目にチェックしてください。チェックのついた項目が3つ以上だった場合、いま心の不調を感じている可能性があります。5つ以上の場合は心の不調が健康を害し始めている可能性があるので早めの対処を。

□頭と体が重い感じがする
□疲れやすい
□朝ヤル気が出ない
□イライラしがち
□頭痛・目まい・肩こり・胃のもたれを感じる
□嫌なことが頭から離れない
□物忘れやうっかりミスが多い
□仕事・家事の段取りが悪い
□以前好きだったことやものに興味が持てなくなった
□四季の移り変わりや旬の食べ物に鈍感

心の不調を招く主な原因

日常生活の中で何気なく行っているアクションが、脳にダメージを与えて心の不調を招くので、因果関係をしっかり把握しておくことがメンタルヘルス対策には有効。知ることで自分ごと化でき、意識も変わるので行動にも変化が表れるはず。

スマホ依存
SNSによる不特定多数の人との繋がりが脳の使いすぎを加速。

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いつでも気軽に使える便利なツールゆえに、現代人の生活になくてはならないものとなったスマートフォン。「だからこそスマホ依存に陥る人が続出中。しかしネットにあふれる多くの情報を処理できずに、脳の機能が低下。またSNSの普及で、気を使わなければならない相手が膨大に増えたために、脳が疲弊することに。スマホとの付き合い方が現代人の課題。スマホ依存を低減するおすすめの方法が『スマホレコーディングダイエット』です。1日の中でスマホを使った時間と目的をノートに記録し、客観的に認識することでスマホに触れる時間を減らす効果が期待でき、使用時間を見つめ直すきっかけになります」

人間関係
日本人は空気を読むのが得意。だからこそ気の使いすぎに注意。

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脳にダメージを与える一番の要因が人間関係。「もともと人間の脳は、自分が安全に豊かに楽しく生きるために働くもの。しかし争いを回避するための知恵として、他人の顔色を窺うことに脳のエネルギーをたくさん使うように進化してきました。なかでも日本人はストレスに対して過剰に反応してしまう傾向が。それは島国という閉鎖的な社会環境において、人に嫌われないよう、仲間はずれにならないようにと、周りに気を使いすぎてしまうため、それがストレスになっています。しかしストレスこそ心の不調の最大の敵なので、ストレスに対する適応力を身につけることが大切です」。

睡眠不足
睡眠は脳の疲労を飛躍的に軽減! 睡眠不足は脳の大敵と心得て。

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複雑な人間関係、スマホ依存、運動不足の三重苦により非常に疲れている脳。その脳の機能をリセットし、最適化してくれるのが睡眠。しかし、日本は他の先進国と比べ1時間も平均睡眠時間が短く、睡眠不足は若い世代ほど強い傾向に。「広島大学が最近実施した生活習慣調査によると、高校3年生の1週間の平均睡眠時間が、日本人全体の平均より短く、高校生のうちから睡眠不足が習慣になっていることが明らかに。しかし質の良い睡眠が取れると脳が整理整頓されるだけでなく、不安も解消してくれるので、熟睡こそが心の不調とサヨナラする最強の解決策です」。

運動不足
体を動かすと脳の疲れを癒せる! 現代人の運動習慣が大きな課題。

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日本では約3人に1人の成人が運動不足というデータがあり、コロナ禍以降はさらに増加傾向に。「現代人は多くのワーキングメモリーを駆使して、日々目の前の作業に追われています。特にテレワークが定着したことで、働く・休むの切り替えができなくなってしまい、脳は緊張しっぱなしに。そのため脳に疲労が蓄積し、心の不調を招きやすくなっています。体を動かすことは、眠ることと同様、脳にとって非常に良い疲労回復法。もし運動ができる環境になければ、仕事中に定期的に立ち上がり、周りを少し歩くだけでもOK。体を動かし脳の疲労を解消することで、パフォーマンスが高まるため、仕事の効率も良くなります」

奥村 歩さん 日本脳神経外科学会認定専門医、おくむらメモリークリニック理事長。認知症やうつ病に関する診察も多く経験し、これまでに10万人以上の患者の脳を診断。『スマホ脳の処方箋 10の生活改善テクニックで脳の疲れがみるみるとれる!』(あさ出版)など、著書多数。

※『anan』2024年4月10日号より。イラスト・黒猫まな子 取材、文・鈴木恵美

(by anan編集部)

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