意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「所得税定額減税」です。

一時的な処置で将来改善するのか。長期的な政策を!

society

岸田政権は、2024年度の税制改正で、所得税3万円、個人住民税1万円の定額減税を行うことにしました。6月よりスタートすることになります。

岸田首相は、総裁選の頃は「分配なくして成長なし」と謳っていました。様々な優遇策により国民の暮らしが良くなるという期待感がありました。ところが実際には社会保障費の負担が増え、ガソリンや小麦などの価格高騰もあり物価高が進んでいます。それでも給料は上がらず、生活は苦しいまま。岸田首相は「税には手をつけない」と話していましたが、方々から批判を受けて急に減税に転換しました。ですが、その額は限定的で、期間も1年ですから、一時的な痛みを取り除くことにしかなりません。’24年の総裁選を乗り切るために、自民党内の様々な声を聞く姿勢を示そうと、場当たり的に決めた策のようにも見えてしまいます。経済政策に整合性がとれていないのは、国民としては不信感が募ります。

ただ、ロシアとウクライナの戦争が解決を見ないうちにガザでも戦争が始まり、予想以上に深刻な円安が続いており、デフレからなかなか脱却できない。誰がトップでも難しい政策運営を強いられている状況ではあります。

デフレを抜け出すには、賃金を上げることが求められます。ただ、経営者の側からいえば、賃金を上げればその分、社会保障費の負担も増えてしまう。本当に賃上げしたいなら、社会保障費の方も、優遇なり減額なりしていかないと企業も簡単には上げられません。

個人や企業が稼いだ国民全体の所得に対して、税金と社会保障費の負担の割合を示す「国民負担率」というのがあります。’23年度は46.8%になる見通しです。統計を取り始めた1970年度は24.3%でしたから、実質的にだいぶ負担が増えているのですね。

65歳以上の人の割合が国の人口の21%を超える「超高齢社会」に、日本は2007年から突入しています。2060年には人口の約40%が65歳以上になると予測されます。減税をしても成長には繋がりません。この先どのようなビジョンを描いているのか。岸田政権には原点に立ち返り、未来を見通した政策をとってほしいと思います。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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