露中首脳は不参加。インドの存在感が増し、世界が変貌。
9月にインド・ニューデリーでG20サミットが開催されました。5月に広島で開かれたG7では、参加国の結束を確認しましたが、G20では全く状況が変わっていました。
まず、インドが強い指導力を発揮し、難航するだろうといわれていた共同声明を取りまとめました。それはウクライナ侵攻を続けるロシアを直接批判することを避けた、ロシアに配慮した内容でした。プーチン大統領は欠席し、代わりにラブロフ外相が参加。習近平国家主席も欠席しました。ロシアと中国の首脳がG20の場に来ないというのは、G20を軽視しているというメッセージにもなります。これまではG7の先進諸国が中心になり、国際秩序協調策として、開発途上国も加わったG20が開かれていましたが、潮目が変わりました。インドはG20の場で、国名を「インディア」ではなく「バーラト」という現地の呼び名に変えたいと世界に発信。議長席のプレートや晩餐会の招待状には「BHARAT」と表記されました。これは、イギリス植民地時代の呼称を使わず、欧米支配からの脱却、新しい時代の幕開けであることを世界に宣言しているといえます。
世界はこれまでのような、欧米かそれ以外かというシンプルな形では語れなくなりました。日本は中国ともロシアともアメリカとも隣り合わせていますから、今後どういうスタンスを取るのかが問われることになります。
鍵を握るのはアフリカや中東、東南アジアの国々。それらの国々との連携は必須でしょう。アフリカや中東の国々とロシアとの接近は始まっていますから、それが深まるほど、自由主義や民主主義は後退していきます。
機会があれば、読者の皆さんもぜひ、東南アジアやアフリカを訪れてみてください。現在の発展している姿に驚くと思います。また、BBCやCNN、AFPやロイターなど、日本語でも発信している世界のメディアに触れて、世界情勢に敏感になっていただきたいです。国際感覚を持って世の中を見ておかないと、あっという間に時代に取り残されてしまいます。それは、どこに危険があるのかも予測できなくなる、とても怖いことだと思います。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。
※『anan』2023年11月15日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)