写真・小笠原真紀 イラスト・福田玲子 取材、文・保手濱奈美 PR・東京都
anan総研メンバーと学ぼう!
anan総研No.362 比嘉桃子さん 夫と2人暮らし。防災対策をしっかりしたい比嘉さんと、そうでもない夫と家庭内でもグラデーションあり。
防災対策はなぜ必要? 東京都は30年以内に「首都直下地震」や「南海トラフ地震」の危険あり!
東京都に甚大な被害をもたらすことが想定される2つの巨大地震。今年は関東大震災から100年という節目の年だが、関東大震災ではマグニチュード7.9と推定される地震が発生。対して、首都直下地震はマグニチュード7クラス、南海トラフ地震はマグニチュード8~9クラスと、関東大震災と同等以上の大きさの地震が予測されている。その発生確率は、今後30年以内に、首都直下地震が70%、南海トラフ地震が70~80%という高い数値。
2冊の小冊子で、災害への備えをより万全に。
地震や水害など、日本各地で起こる様々な自然災害のニュースを見かけることが多い昨今。首都である東京都も例外ではなく、2011年の東日本大震災や’19年の令和元年東日本台風では多くの被害を経験し、今後30年以内には、首都直下地震や南海トラフ地震が、かなりの確率で発生すると予測されている。
日常生活を送る中で、つい気が緩みがちかもしれないけれど、自分や大切な人の命を守るために、改めて確認したいのが防災対策。東京都では、『東京くらし防災』と『東京防災』という2冊の小冊子をリニューアルし、11月から順次、都内の全世帯に配布を開始。「まずは行動から始める」「さらに知識を深める」という2つのSTEPで、有効かつ実践しやすい防災対策を多数紹介している。その中の一部を防災のエキスパート「防災博士」が、都内在住のanan総研メンバーにレクチャー。ここでは3人が気になる防災対策を中心にピックアップ。備えておきたいものなど、一緒に学ぼう!
STEP1
「まずは行動から始める」
『東京くらし防災』で防災対策を実践しよう。
いざという時のために、何か防災対策をやっておいたほうがいいとは思っていながらも、何をしたらいいか分からない人もいるのでは。
まずはSTEP1として、今すぐ始めたい「行動」からチェックしよう。
備蓄しているだけではなく、使い方を知っておくことも大事。
防災博士 はじめに、みなさんの防災レベルを知れたらと、『東京くらし防災』にある「あなたの防災レベル診断」をやってもらいましたが、いかがでしたか?
比嘉 チェック項目の合計が20ポイントで、防災レベル診断は「気になっていてもまだ行動に移せていない人」でした。
兼田 私は30ポイントで、「防災への関心はあるが、対策があまりできていない人」という診断に。
井出 私は45ポイントでしたが、診断結果は兼田さんと同じです。
防災博士 満点が100ポイントなので、改善のしがいがありそうです(笑)。まずは自宅の危険ポイントをなくすところから始めるのがおすすめですが、チェック項目にもある「家具や家電の転倒・落下・移動防止対策」は、どんなことをするといいと思いますか?
兼田 うちでは、高い所に落下の危険があるものを置かないようにしています。
防災博士 いいですね。あとは家具が倒れないようにL字金具で壁に固定したり、倒れた場合にも出入り口を塞がないような位置に配置したりすることも大切です。
井出 私は転倒対策とは少し違うかもしれませんが、地震で窓などガラスが割れると危ないと聞いたので、枕元に厚手の靴下を置いて寝ています。
防災博士 それも良い心がけです。ただ、厚手の靴下よりも厚底のスリッパのほうが、より安全に避難できますよ。
井出 確かに! スリッパにします。
防災博士 自宅での防災対策といえば、水や食料の備蓄はどうしていますか?
比嘉 2リットルのペットボトルのミネラルウォーターは、段ボールに2箱分くらい常備していますが、非常用というより、普段、飲んだり、料理に使ったりするために買ってある感じで…。
兼田 私の家ではキッチンについている浄水器でいつも使う水をまかなっているので、ペットボトルのストックはありません。水道が止まったら、おしまいですよね。改めて考えると焦ります(汗)。
防災博士 水や食料の備蓄は、最低でも3日分は必要ですよ。マンションの場合は、1週間分の備蓄を推奨しています。
比嘉 えー!? そんなに! 私は夫と2人暮らしなので、今あるストックで3日はもたないかも。あと食料はどんなものを買っておくといいのでしょうか。
防災博士 おすすめは「日常備蓄」です。食べ慣れたものや好きなものを多めに買って、賞味期限の近い順に食べていく。家族と暮らしているなら、お互い好きなものをストックすれば「次は何買う?」と楽しみにもなるはず。「しあわせ備蓄」ともいえるのではないでしょうか。
井出 それ、素敵ですね。
防災博士 ほかにもストックしておいたほうがいいものとして、とても重要なのが携帯トイレです。
井出 携帯トイレ!? 初めて聞きました。
防災博士 大地震が起こると、停電や断水、排水管などの破損により、水洗トイレが使えなくなることがあります。携帯トイレは、袋の中に排泄し、吸水シートや凝固剤で排泄物の水分を安定させるというもの。組み立て式の簡易トイレなど、いろんなタイプの非常用トイレが市販されています。これもストック必須です。
井出 1〜2個では足りないですよね…。それに、いざという時のために、使い方をちゃんと知っておいたほうがよさそう。
兼田 私の家には自治体から携帯トイレが届いて、それを備蓄していますが、使い方までは知りませんでした。
防災リュックの中身は旅行用の荷物と同じようなものでOK。
防災博士 ところでみなさんは、非常用持ち出し袋は用意していますか?
井出 防災リュックのことですか? それなら玄関に置いてあります。ただ、ずいぶん前に作ったので何を入れたのか忘れていて、先日久しぶりに見てみたら、お金があってラッキーと思ったり(笑)、トイレットペーパーや絆創膏が入っていたりと、かなり自己流でした。
比嘉 私もあります。中身は、友人の結婚式の引き出物のカタログから選んだ防災グッズセットを、使っていないリュックに詰めているだけで…。何が入っているかは、正直、把握していません(汗)。
兼田 私も持っていますが、クローゼットの奥にしまっちゃっています。
防災博士 奥にあると、地震で家具が倒れた時などに取り出せなくなってしまうので、やはり玄関など、すぐに手に取れる場所に置いておくといいですよね。中身に関しては、まずはいつも旅行に持っていくものを入れてみましょう。あとは携帯トイレなど、非常時に必要だと思うものをプラス。また、在宅時に被災するとは限らないので、防災ポーチを作ってバッグに入れておくと安心です。
比嘉 防災ポーチって何ですか?
防災博士 モバイルバッテリーや携帯トイレなど、災害時に最低限必要なものを入れたポーチのことです。
井出 いつも持ち歩くには、ちょっと重そうじゃないですか?
防災博士 いえいえ。化粧ポーチくらいのサイズでいいんです。モバイルバッテリーは小型のものがありますし、携帯トイレもクレジットカードくらいのサイズのものがあります。「今、エレベーターに閉じ込められたら?」と想像し、自分に必要なものを揃えておきましょう。
比嘉 仕事で出かけていることも多いので、確かに持っておくと安心ですね。
兼田 あと「あなたの防災レベル診断」で私が気になったのは、災害時の家族との安否確認方法です。いざという時に電話やLINEが繋がるか不安があります。
防災博士 災害時は電話やネットが繋がりにくくなる可能性があるので、複数の連絡手段を共有しておくことが大切です。「災害用伝言ダイヤル」は知っている?
井出・兼田・比嘉 知りません…。
防災博士 被災者が「171」に電話をかけて安否メッセージを登録。それを家族や友人が聞くことができるという災害時のサービスです。毎月1日と15日は体験利用が可能なので、家族同士で試しておくといいと思いますよ。
兼田 私や夫はもちろん、とくに親はそういう連絡手段を練習しておかないと難しいと思うので、早速体験してみます!
始められるんだね。
anan総研メンバーが実践したいこと。
防災博士のレクチャーにより、『東京くらし防災』から、行動への第一歩を学んだ3人。初めて知ることもいろいろとあったなか、それぞれがとくに実践したいこととは?
防災ポーチをバッグの中に。
防災ポーチの中身は、携帯電話を充電するためのモバイルバッテリー、携帯トイレ、粉塵を避けるためのマスク、夜間の避難用のペンライト、給水袋や防寒服代わりにも使えるポリ袋など。「私はアメも入れたい」(比嘉さん)
家に携帯トイレを備えておく。
携帯トイレは袋だけのものと、袋を便座にセットして使うタイプのものがある。また、組み立て式の簡易トイレという選択肢も。「トイレが使えなくなるかもという話は確かにそうだけど、衝撃的。すぐ備蓄します」(井出さん)
水や食料の備蓄は最低でも3日分。
食料品は、好きなもののなかでも、火や水を使わずに食べられるもの、お湯を注ぐか温めるだけで食べられるものなどをストック。「夫と2人分と考えると、水の備蓄をもう少し増やし、食料品もプラスしたい」(比嘉さん)
災害用伝言ダイヤルを体験する。
体験できるのは毎月1日と15日。災害用伝言ダイヤルのほか、携帯電話では災害時になると利用できる「災害用伝言板サービス」もあることを知っておこう。「今は妊娠中ということもあり、家族と連絡がつかなくなることがとくに心配。171を体験してみます」(兼田さん)
災害用伝言ダイヤルの体験方法。
1「171」に電話をかける
2録音をするには「1」を、メッセージを聞くには「2」をダイヤル
3電話番号を市外局番からダイヤル *携帯電話の電話番号でも可能
4伝言を録音(または再生)
固定電話でも携帯電話でも無料で利用可能。伝言を録音する場合は171に電話をかけ、音声ガイダンスに従い「1」を、次に自分の電話番号を市外局番からダイヤルして伝言を録音する。伝言を聞く場合は、171のあと、「2」と相手の電話番号をダイヤルすればOK。
STEP2
「さらに知識を深める」
『東京防災』で防災をより深く理解しよう。
STEP1で、まずは何を実践するべきかが分かったところで、STEP2は、災害から身を守るための様々な情報をインプットする「知識」編。アップデートされた防災知識を身につけよう。
防災知識は最新情報をもとにアップデートしよう!
防災博士 みなさんは、東日本大震災当時はどこにいましたか?
井出 私は実家にいました。
比嘉 私は合宿免許で山形にいたんですけど、ものすごく揺れました。
兼田 私はたまたま海外旅行に出ていて、海外のテレビで震災を知りました。実家が岩手県の沿岸部にあるので心配で…。
防災博士 え! すぐに連絡はつきましたか? ご実家の様子は…。
兼田 幸い無事でした。でも、連絡がつくまで時間がかかってとても不安でした。
防災博士 そうだったんですね。では、みなさん都内で帰宅困難の経験はしていないようですが、発生当時、外出先から自宅へ帰ろうと、大勢の人が道にあふれていた光景を、テレビなどで見たことがあると思います。でも今は、帰宅困難になった場合、東京都ではすぐに帰宅しないようにと呼びかけているんです。
マンションではご近所づきあいも防災対策に。
兼田 それはなぜですか?
防災博士 帰宅困難者で道路が埋め尽くされると緊急車両が通れず、人命救助の妨げになってしまうからです。それに自分が徒歩移動中に、余震や群衆雪崩に遭う危険性もあります。そのため会社や学校にいる人はその場にとどまり、外出中の人はまず公園や駅などで安全を確保してから改めて「一時滞在施設」に向かいます。滞在期間は、救命救助活動が優先される発災後3日間が目安となります。
兼田 3日間も!? そもそも土地勘のない場所で被災した場合は、安全な場所をどうやって探したらいいんですか?
防災博士 スマートフォン向けの「東京都防災アプリ」はご存じですか?
兼田・比嘉 初めて聞きました。
防災博士 これをダウンロードしておくと、その中の「防災マップ」で、行き場のない帰宅困難者を受け入れる「一時滞在施設」など、現在地の近くにある防災施設を見つけることができます。
井出 私はダウンロードしていて、“ここに防災施設があるんだ”とか、時々見るようにしています。アプリには「緊急ブザー」もついているので、どこかに閉じ込められてしまった時に使えそうです。
比嘉 それは便利ですね!
防災博士 例えば、先ほどお話しした備蓄についても「東京備蓄ナビ」というメニューがあり、家に住んでいる人の人数や、性別、年代などを入力すると、備蓄リストを参照できます。
兼田 『東京くらし防災』と『東京防災』は、ここからも読めるんですね。
防災博士 そうなんです。あと帰宅困難のほかにも、近年アップデートされた震災で被災した時の知識で、もう一つ。マンション防災というものがあります。
兼田 マンション防災?
防災博士 東京都では約900万人が、マンションなど共同住宅に住んでいます。耐震基準を満たしたマンションで被害が軽ければ、在宅避難を選択肢に入れてみて。避難所生活はプライバシーなど不安なところもあると思うので、自宅を拠点に、避難所に支援物資を取りに行くなどすれば、ストレスも軽減するはずです。
井出 ペットがいる家も、在宅避難のほうが、きっと安心ですよね。
防災博士 マンションでは、日頃から挨拶をするなど、顔の見える関係づくりをしておくと、いざという時に強い力になります。とくに兼田さんは、今妊娠されているということで、その状況を近所の方に把握しておいてもらうと安心ですよ。
兼田 これまでご近所づきあいがなかったので、まずは挨拶から始めようかな…。
防災博士 『東京くらし防災』と『東京防災』には、ほかにも様々な情報が紹介されています。気になる箇所からでいいので読んでみて、役立ててくださいね。
ダウンロードしておくと安心。
いつも・いざという時にも役立つ東京都公式の防災アプリ。「防災マップ」の防災施設情報は、オフラインでも見られるから心強い。「水害リスクマップ」や「雨雲レーダー」もあり。
anan総研メンバーが理解したこと。
ここで学んだのは総研メンバーが今まで思っていたのとはちょっと違う避難方法。自分や大切な人はもちろん、多くの人が助かるために新しい防災知識に更新完了!
帰宅困難になった場合は、
安全な場所にとどまる。
混乱が落ち着くまで、公園や駅などで待機。じきに帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設が開設されるので、そこに向かおう。「それもアプリで確認できる!」(兼田さん)
自宅の被害が軽ければ、在宅避難もOK。
平常時に自宅が耐震基準を満たした建物であるかをチェック。災害時、あまり被害がなければ在宅避難へ。「住み慣れた自宅にいられるのは、ありがたいかも」(井出さん)
東京都に住んでいる人の自宅に届く! 『東京くらし防災』と『東京防災』を活用しよう。
災害時に自分と大切な人の命を守る、2冊のガイドブックは、11月から来年3月にかけて都内の全世帯に配布される予定。多様な場面を想定した、「こんな時はどうする!?」の答えがこの中に。
『東京くらし防災』
日頃、身につけておいた行動が大切な命を救う。
今から始められる防災や備えの基本を、一から解説してくれる『東京くらし防災』。いつもの生活の延長で取り入れやすい防災対策や、備え方を中心に紹介されている。まずは行動から!
『東京防災』
災害から身を守るためのあらゆる知識が凝縮。
地震、風水害のほか、様々な災害の備えやアクションについて詳しく紹介された『東京防災』。地域で備える共助での取り組みにも触れられている。さらに知識を深めよう!
『東京くらし防災』と『東京防災』で分かること。
- 日常の習慣でできる防災
- 外出「ついで」にできる防災
- 地震発生時とその後の避難の流れ
- 避難の判断を行うには
震災はもとより、風水害など、東京都で起こり得る自然災害への対策がボリュームたっぷり。とはいえイラストでの解説もついているから、気軽に読むことができる。『東京くらし防災』は、基本的な災害への備えや災害時の行動ルールが中心。『東京防災』では、最新情報をもとにアップデートされた防災知識が分かる。
ウェブでも読める!
『東京くらし防災』と『東京防災』は、小冊子のほか、「東京都防災アプリ」や東京都防災ホームページの“「東京くらし防災」・「東京防災」の閲覧”から電子版でも読むことができる。東京都を基準とした内容ではあるけれど、備えておきたいものなど全国どの地域に住む人にも役立つ情報が満載なので、防災リテラシーを上げるべく、ウェブからもチェックを。