腸活は基本をおさえつつ継続するのがカギ。
美肌、ダイエット、メンタル、免疫力…。腸は心身の調子に大きく影響する臓器。腸に良さそうなことを実践している人も多いかもしれないが、ここでは腸の働きや構造、腸活を始めるにあたり知っておきたい用語を総まとめ。
消化器内科医の工藤あきさんによると「腸活が体にいいことは医学的にも立証されている」とのこと。また、自分の腸の状態を知りたいのであれば「日々の便やお腹の不快感をチェックするのがよい」と話す。
「お腹が張ったり、便のニオイがきつくなったりしたら、腸内が乱れているサイン。腸からのサインを見逃さず、日々の習慣を見直しながら、腸にいい生活を継続することが大事です。そのためにも腸活の基本をしっかりとおさえておきましょう」
腸活を始める前に再チェック! 腸活用語総復習
まずは腸活を語る上で知っておきたい5つのキーワードをおさらいしよう。
シンバイオティクス
善玉菌と、そのエサを同時に摂る腸活の新常識。
発酵食品に多く含まれ、乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌そのものを指す「プロバイオティクス」と、オリゴ糖や食物繊維など、善玉菌のエサとなる成分を指す「プレバイオティクス」。その2つを組み合わせて食べるのが「シンバイオティクス」。「善玉菌とそのエサを一緒に摂取することで善玉菌が育ちます。1回の食事で摂取するのは難しいので、1日~数日単位のバランスで考えてOK」(工藤さん)。また、最近話題になっているのがオートミールなどに含まれた「発酵性食物繊維」。善玉菌のエサになり、腸内にも定着しやすいので腸内環境の改善に期待大。
蠕動(ぜんどう)運動
腸の筋肉を動かして便を移動させる運動。
便を肛門に運ぶために、腸が波打つように動いて行われる蠕動運動。食後に鳴るグルグルという音もこの運動のひとつ。「副交感神経が優位になると、蠕動運動が活発になるので、適度に体を動かすのが有効です。日本人は大腸が長いといわれ、加齢とともに蠕動運動が起こりにくくなるので、便秘になりやすい。ただ排泄のサイクルは人によって異なるため、数日に一回しか排便がなくても、毎回スムーズに出るようであれば問題ありません。排泄のサイクルが乱れやすい人は、日ごろから蠕動運動を促すような習慣をつけておくことが大事です」
腸内フローラ
菌のバランスを整えて、腸内細菌を良い状態に保つ。
人間の腸には100兆個以上の細菌が生息。その腸内細菌が種類ごとに分かれて集落を形成し、それがお花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれている。腸内細菌は体に良い影響を及ぼす善玉菌、主に体に悪い影響を及ぼす悪玉菌、どちらにも属さない日和見菌に分類され、2:1:7のバランスが理想的。「善玉菌を増やすことはもちろん大切ですが、最近の研究で悪玉菌と考えられてきたもののなかにも体に良い働きをするものもあることが判明。特定の菌にこだわるより、様々な食材を積極的に摂取して、菌をバラエティ豊かに増やす方がおすすめ」
大腸バリア
有害な菌や物質が体の中に入らないように防御!
「健全な大腸は粘液の層で覆われ、有害な菌や物質から腸壁を守ったり、潤滑油のように便をスムーズに移動させる働きがあり、この層を『大腸バリア』と呼びます。しかし、腸内環境が悪くなると、大腸バリアが正常に機能しなくなり、有害な菌や物質などが細胞に侵入し始め、体中に様々な影響が」。大腸バリアを維持し、粘液の産生を促してくれるのが酪酸。「大腸のエネルギー源である酪酸を生み出すのが酪酸菌。この酪酸菌自体を含む食べ物はあまりないのですが、食物繊維を積極的に摂取することで、腸内に棲んでいる酪酸菌を増やすことができます」
脳腸相関
脳と腸は密接に関係し、互いに影響を与え合う。
「腸は脳からの信号を待たずに動く唯一の臓器であることから、『第二の脳』と呼ばれています。自律神経やホルモンなどを介して脳と密接に関係しており、腸の不調は脳に反映され、脳で受けたストレスは腸に反映され、と相互に作用します」。例えば緊張すると脳がストレス反応を起こして、お腹が痛くなったり、逆に腸の不調が脳へ伝わりメンタルに影響が出たりといった経験がある人も多いのでは。それがあらゆる臓器に伝達され、肌荒れや肥満のほか、脳卒中などの深刻な病気を引き起こすことも。最近何かと不調を感じている人は、腸を整えよう。
工藤あきさん 消化器内科医、美腸・美肌評論家。地域医療に携わりながら、腸内細菌・腸内フローラに精通。腸活×菌活によるダイエット、美肌、エイジング法にも注力。『老けない人が食べているもの』(アスコム)など、著書多数。
※『anan』2022年8月3日号より。イラスト・フクチマミ 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)