生きる上で大切なテーマ。選択権はあくまで自分に。
SRHRとは「Sexual and Reproductive Health and Rights」の略で、「性と生殖に関する健康と権利」という意味です。国際的に、基本的人権の一つとして保障されるべきものとされています。
このもとになる「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(RHR)」が定義されたのは、1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議。’70年代から世界的に人口爆発が始まり問題になっていました。人口が増えすぎると食糧難になり貧困層が広がり、紛争や戦争の引き金になります。そこでアフリカで、強制的ともいえる避妊プロジェクトが広まりました。しかし、産む産まないを他人に決められるのは非民主的です。妊娠や出産、避妊や中絶など生殖に関する知識を広め、自分で道を選択できる権利を享受できるようにしようと、RHRが提唱されました。2002年にはWHOが「セクシュアル・ヘルス」を掲げ、この2つが合わさり、SRHRが謳われるようになりました。
たとえば一部の地域では、女性器を切除するなど女性に対しての人権弾圧が残っており、不衛生ななかで行われ、命を落とすようなことが起きています。また、性行為のときの同意の必要性、避妊のあり方。子供を産んだあとの母子の保健や衛生環境、育児ノイローゼの問題や男性育休の問題などもすべてSRHRに含まれます。LGBTQを含め、セクシュアリティや生殖に関して、正しい知識を広める教育や支援策、技術や文化をいかに育むか。こういうことが一般に語られるようになったのは、まだ最近のことなんですね。
SRHRの観点においては、日本は後進国と言わざるを得ません。つい最近まで優生保護法があり、障害のある人に対して「不良な子孫の出生を防止する」と、強制的に生殖機能を奪うような恐ろしいことが行われていました。
自分のカラダや人生は自分のもので、誰かに強制されたり決められるものではない。SRHRには、その当然の権利を保障しようという考えがベースにあります。小さいころから教育機会を得て、自分たちの健康や権利を守り合える未来に到達できればと思います。
堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。
※『anan』2022年6月15日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)