社会のじかん

行き詰まった資本主義を打開できるか? 「新しい資本主義」を考える

ライフスタイル
2021.11.20
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「新しい資本主義」です。

広がった格差を是正するために新たに目指すこと。

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“新しい資本主義”は、岸田総理が総裁選のころから掲げてきたテーマ。実はこれはグローバルスタンダードなんです。昨年の世界経済フォーラム(ダボス会議)でも、経済格差が広がりすぎたいまの資本主義を是正しないといけないと、厳しく語られました。これまでは、経済が発展し、それによって得た利益を皆で分ける「成長して分配」でした。大企業が儲かれば、その儲けは従業員の賃金として分配され、賃金が上がることで消費経済が活発になり、デフレから脱却できるはずでした。ところがこの「トリクルダウン」は起こらず、実質賃金は下がってしまいました。その一方で資本家たちは投資によって大きな利益を得て、世界の富の半分を30人未満の超富裕層が持つという極端な状況に陥っています。

そのため、世界的に法人税率を揃えて国際標準を作ったり、タックスヘイブンに逃れて税金を納めないのは許さない、という取り組みが始まりました。日本でも安倍政権下では、株価が上がっているため、経済発展していると言われてきました。けれども、株価の上昇は資本家たちが資本を膨らますことを示しており、市民の暮らしが良くなることとは接合していなかった。その現実に、ようやく政策の現場が目を向け始めたんですね。

先日、「新しい資本主義実現会議」が開かれました。そこで岸田総理は「成長と分配の好循環」の実現が重要と述べています。デジタルやクリーンエネルギー技術の促進、地方活性化、「稼ぐ力」の強化、「人」重視の経営…。経済成長政策を推し進めながらも、格差の固定化を避けるために、教育や子育て支援を積極的に行うなど、次の成長につなげられる分配を目指すことが、官民が集い議論されました。好循環が実現するのか、今後も注視が必要です。

民間企業も変わり始めています。明電舎という老舗のインフラ企業は、再生可能エネルギーの投資や開発を進めることを発表。社員の働き方を改革し、人と環境に優しい企業体になり、グローバルに戦うことを打ち出しました。

SDGsにのっとり、行き詰まった資本主義を打開し、持続可能な経済成長モデルを考えようとしています。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2021年11月24日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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