目まぐるしい勢いで普及して、今後どんどん私たちの暮らしに進出してくるAI、デジタルガジェット、キャッシュレス。各分野に詳しい3人のスペシャリストがこれから数年で起こりえる変化を大予想!
(1)AIでもっとスマートになる暮らし。
教えてくれた人:マスクド・アナライズさん
AIが健康をサポートする時代へ。バーチャルアナウンサーも登場か。
AIはすでに身近で活用されており、AIを搭載したスマホアプリもどんどん増えています。例えば「メルカリ」が昨年3月から導入している写真検索機能もそのひとつ。スマホで画像を読み込むだけで、出品したい時に事前に相場を知ることができたり、欲しい商品や似ている商品を簡単に検索できたりするのもAI技術のおかげです。マッチングアプリでも、条件で絞り込むだけでなく、AIが性格や価値観を分析し、相性の良い相手を見つけ出すというサービスを導入し始めています。アプリにとどまらず、AIは多彩なシーンで活用され、さらに暮らしに根付いてくるでしょう。
僕が将来的に注目しているキーワードが、AIによる健康管理。すでに健康系のアプリはたくさん登場していますが、ビッグデータを基に、その人のワークパフォーマンスや食生活、健康状態などをより正確に把握・分析し、栄養バランスの整った食事のサポートや最適なトレーニング法などをAIが提案してくれるようになると思っています。もしかしたらAIが「最近体重が増えてきてるので、脂っこいものは控えましょう」「健康のためもっと運動したほうがいいですよ」など、注意喚起してくれるようになるかも(笑)。自分だけのAIトレーナーのようなものが、ここ数年で出てくるかもしれません。それは今のようなアプリという原始的な形ではなく、スマートウォッチや、指輪、イヤリングといったいつでも身に着けておけるウェアラブル端末かも。さらにAI家電もますます進化し、必要な食材を自ら判別してお知らせしてくれる冷蔵庫とか、カロリー計算して自動調理してくれる電子レンジ、年齢や体調に合わせて湯量や温度を調節してくれるお風呂、湿度に合わせて自動的にスイッチが入る加湿器など。今は夢のように思うかもしれませんが、学習してその家に合わせた動きをしてくれる家電は、近い将来普及していくでしょう。
また、面白い試みがAIアナウンサー。バーチャルの人物が、人工知能エンジンで機械学習し、人に近い自然な発音で原稿を読み上げてくれるんです。人件費がかからない上に、緊急時にも対応できるから、働き方改革による業務効率化にも繋がります。中国ではすでに国営メディアが導入しています。日本でもソニービジネスソリューションが開発に成功しているので、AIアナウンサーがニュースを読むのが当たり前になる時代も近いかもしれません。
マスクド・アナライズさん AIブームのIT業界に出現した謎のマスクマン。辛辣で鋭い口調で、独自の地位を確立。共著に『未来IT 図解 これからのデータサイエンスビジネス』(エムディエヌコーポレーション)。
(2)デジタルガジェットトレンド予報。
教えてくれた人&文:太田百合子さん
5G元年、VRやARが身近に。スマホは動画強化&音声操作へ。
5G元年となる今年、日本では5Gに対応したスマホが各社から発売されます。超高速・超低遅延なネットワークを活かせるよう、カメラ、なかでもビデオ機能が充実したモデルが多く、「YouTube」などで自ら情報を発信している人や、「TikTok」などでショートムービーの配信を楽しんでいる人も、より高画質な映像をもっと簡単に配信できるようになるでしょう。高画質な映像がたくさん配信されるようになれば、それをもっと大きな画面で楽しみたいというニーズも出てくるはず。大画面をコンパクトに持ち運べる、折りたたみスマホが人気を集めそうです。大画面スマホは動画以外にも、タブレット感覚でメモを取ったりイラストを描くのに活躍しそう。折りたたみスマホはすでにauから2機種発売されていますが、今後さらに増えるでしょう。
5Gの魅力を広めるために、携帯電話会社では、スポーツや音楽ライブをまるで現地にいるかのような高画質なVR(仮想現実)映像で楽しめるイベントを、たくさん開催予定です。これらのイベントを通じてVRや、今見ている実際の風景にバーチャルなデータを重ねるAR(拡張現実)のような、専用のヘッド・マウント・ディスプレイやスマートグラスを使用した体験が、身近でできるようになるでしょう。個人で購入して楽しめるものが登場してくると思います。
もうひとつ、今後さらに広がっていきそうなのが、音声を使ったスマホの操作です。「Amazon Echo」や「Google Nest」のような、音声で操作できるスマートスピーカーが各家庭に普及すれば、外出先でも音声で、GoogleアシスタントやSiriなどのAIアシスタントを利用したいと考える人が増えるはず。今はまだ、スマホに向かって語りかけること自体に抵抗を感じる人が多いかもしれませんが、一度音声操作の便利さを知れば、恥ずかしさを超えて抵抗なく使えるようになるはず。特に最近急増している、完全ワイヤレスのイヤホンから音声でスマホを操作するスタイルなら、小さくつぶやくだけでOK。バッグやポケットからスマホを取り出す手間もありません。このように耳に装着して音声で操作できる機器を「ヒアラブルデバイス」と呼びますが、イヤホンタイプだけでなく、自分だけに聞こえるスピーカーを搭載したメガネやサングラスなども登場していて、今後注目が集まるガジェットといえます。
太田百合子さん 三度のごはんと同じくらい、デジタルガジェットが大好物なテックライター。“難しいテクノロジーをわかりやすく解説する”をモットーに、WEBや雑誌を中心に幅広く記事を執筆。
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(3)キャッシュレス化が止まらない!
教えてくれた人&文・綿谷禎子さん
さらなる高齢社会となる日本では、キャッシュレス化は不可欠。
今、QRコードを使って支払えるスマホ決済が拡大中。使えるお店も利用者も急速に増えています。お店の支払いがキャッシュレス化すると、次のフェーズは友だち同士などとの支払い。これもキャッシュレスになると、現金を使うシーンがどんどん減ってきます。
スマホ決済事業者が目指すのは、スマホ1つで何でもできる“スーパーアプリ”。友だちへの送金はもちろん、バーコード付きの請求書がスマホで支払えたり、タクシーの配車、出前依頼、保険加入や証券を購入できたりといった具合に、今、スマホ決済アプリから利用できるサービスを拡大中です。QRコードのスマホ決済が先行する中国では、「アリペイ」と「ウィーチャットペイ」の2大スマホ決済が浸透。国民の誰もがどちらかのサービスを利用しているといわれる状況で、まさにスマホ1つでライフスタイル全般のサービスを利用できる世界観が広がっています。
また、北欧のスウェーデンではキャッシュレス化が進み、現金がほぼ流通しておらず、多くのお店が現金お断り。子どもにお小遣いを渡すのにも、「スウィッシュ」というスマホ決済アプリを使うのだとか。
日本もキャッシュレス化が進むことで、このような世界が訪れます。実際、銀行は流通する現金が減少することから、自前のATMの数を減らして、コンビニのATMと契約するところが増えています。近くにコンビニがない地方都市用に、クルマにATMを積んだ移動ATM車の開発が進んでいるほど。
キャッシュレス化が浸透すると、買い物の仕方も変わってきます。例えばアメリカではレジなし店舗の『Amazon Go』が増加中。お店に入る前に専用端末にスマホをかざして個人を認証。その後、店内でどの商品をカゴに入れたかをセンシングし、お店を出ると決済が完了しているという仕組みです。日本では今、ローソンが同じくレジなし店舗の『ローソンゴー』の実証実験を行っています。当初はQRコードで認証しますが、3月16日からは新たな方法を導入。もはやスマホさえ持ちません。スマホ決済アプリに登録した手のひらの静脈認証や顔認証などで個人を特定することで、支払いを行います。夏には一般向けの実証実験もスタート。顔認証などの生体認証技術が優れた日本では、生体認証による手ぶら決済も進行中です。
日本は今後さらなる高齢社会に。キャッシュレスはその人手不足の課題解決にとっても重要。この流れを止めることはできないでしょう。
綿谷禎子さん ライター、「All About」ガイド。ビジネス情報誌『DIME』(小学館)を中心に幅広く執筆。自称、キャッシュレスクイーン。主にスマホ決済やクレカ、ポイントなどの記事を手掛ける。
※『anan』2020年3月18日号より。イラスト・沼田光太郎 文・鈴木恵美(その1)
(by anan編集部)