小腸の病気=SIBOが増加中? 発酵食品が逆効果になる場合…

ライフスタイル
2018.07.23
食物繊維、ヨーグルト、発酵食品…。腸内環境を整えるといわれている食べもの。しかし、これらを摂ると、かえってお腹の調子が悪くなる人がいることが分かってきた。腸は大腸だけじゃない。“SIBO”=小腸内細菌増殖症と呼ばれる小腸の病気とは?
SIBO

腸には食物繊維が良い。基本的には間違いない。ヨーグルトには整腸作用がある。ある意味では確かにそう。でも、

「万人の腸に有効な食べものはありません」

と、江田クリニック院長の江田証先生は言う。ある人には整腸作用を促す効果があっても、他の人にも必ずそれが当てはまるとは限らないのだ。これには、いままで知られていなかった小腸のある病気が関連している。

「ほんの少しの量しか食べていないのに、食後にお腹がパンパンに張ってしまうという人がいます。こういうケースでは、“SIBO”(シーボ)という小腸の病気の可能性があります」

アメリカでは話題になっているが、日本ではまだあまり知られていないこの病気、他にも頑固な下痢、便秘、腹痛、お腹のゴロゴロした違和感といった症状が見られるという。

「最新の研究では、過敏性腸症候群と考えられてきた患者さんの85%が、実はSIBOだったという報告もあります」

確かにこれらの症状は、過敏性腸症候群のそれに似ている。でもどうして、大腸の病気と思われていたものが、小腸の病気と考えられるように? そんな疑問が当然、湧いてくる…。

もともと小腸は、医師の間でもブラックボックスといわれてきた臓器。というのは、内視鏡で小腸の奥深くまで検査することができなかったから。ここ最近、ダブルバルーン内視鏡、カプセル内視鏡という技術が開発され、小腸の診断が可能になったことが、SIBOが注目され始めた理由。

「SIBOは本来であればあまり小腸に存在していない腸内細菌が、小腸内で過剰に繁殖してしまう病気です。腸内細菌は大腸でバランスよく存在していればカラダに有効な働きをしますが、小腸で必要以上に増殖してしまうと、炎症を起こしたり、下痢や便秘などのお腹の不調に繋がるのです」

本来なら大腸の腸内細菌が100兆個以上といわれているのに対して、小腸のそれは1万個程度。小腸はもともと栄養を吸収するための臓器。腸内細菌を培養するための臓器ではない。

そこに必要以上の細菌が存在していると、小腸に運ばれてきた栄養素を吸収される前に食い荒らして、ガスを発生させる。腸内細菌が3大栄養素の中の炭水化物を分解して生じるガスは、主に水素ガスやメタンガス。その結果、ちょっと食べただけでもお腹がポッコリ膨らんでしまうというわけ。

水素ガスやメタンガスが過剰に溜まると、腹部膨満感やげっぷが出る。下痢や便秘、その両方を繰り返すことも。食事の度にガスが溜まる→減るを繰り返すことで小腸は伸び縮みし粘膜が薄くなり、有害な毒素や未消化の食べものが腸から漏れ出すという怖いことも。

さらに、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸は本来、肥満を予防するなどカラダにいい働きをするものだが、小腸でこれが増えすぎてしまうと、またしてもお腹の不調の原因になってしまう。

「小腸に腸内細菌が繁殖してしまう最大の理由は、小腸の動きが鈍くなっていること。小腸は胃から運ばれた食べものから栄養を吸収し、消化できなかったものを大腸に送ることが役目。小腸のリズミカルな動きをMMCといって、この速やかなぜん動運動が、小腸の壁で細菌が繁殖するのを防いでいます。ところが小腸の働きが悪くなると食べものの残りカスが小腸に溜まり、そこで腸内細菌が大量に繁殖してしまうのです」

MMCは、空腹時や睡眠中に最もダイナミックに起こるぜん動運動。しょっちゅう間食をして空腹タイムを作らない人、夜寝る直前に夜食を食べる人などは、小腸の働きが悪くなっている可能性あり。また脳腸相関のバランスが乱れるストレスも、小腸の機能低下を招くといわれている。

SIBO

また、腸内細菌が好むある種の糖質の摂りすぎが、小腸の細菌の繁殖をさらに促し、SIBOをさらに悪化させてしまうことも。

「FODMAP(フォドマップ)と呼ばれる発酵性の糖質がそれです。Fは発酵性の糖質全般のこと。Oは豆などに含まれるオリゴ糖や、小麦粉などに含まれるフルクタン。Dは牛乳やヨーグルトに含まれる乳糖。Mは果物に含まれる果糖。AND(そして)、Pはキシリトールなどに含まれるポリオールです。以上が、小腸での吸収が悪い発酵性の糖質の代表格です」

FODMAPはヨーグルトなどの乳製品、ひよこ豆やレンズ豆、納豆などの豆類、フルーツやはちみつなど、一見、腸やカラダに良さそうな食べものばかり。カラダに良かれと思って口にしているものが、もしかするとSIBOの原因になっているかもしれない…。

江田先生が「万人に有効な食べものはない」と言うのは、こうした意味からなのだ。自分にどんな食べものが合っているかは、人それぞれ。なので、ひとつひとつの食べものを試して腸の状態を観察していく。これを江田先生は傾聴ならぬ“傾腸”と呼んでいる。

「SIBOは四六時中ものを食べている人、パスタ、シリアル、ピザなど小麦粉食品をよく食べる人に多いといわれています。まずは3週間、すべてのFODMAPを避けた低FODMAP食事法を行ってみましょう。その後、食事日誌をつけながらFODMAPのグループをひとつずつ試し、便の状態をチェックして、自分のカラダにその食べものの耐性があるかどうかを試していってください」

江田 証先生 江田クリニック院長。日本消化器病学会専門医。日本では馴染みのない“SIBO”や“低FODMAP食”などをいち早く紹介する。

※『anan』2018年7月25日号より。マンガ・中根ゆたか 取材、文・石飛カノ

(by anan編集部)


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