「德永さんのところはもう行った?」が、挨拶がわりになるほど、この春、お菓子好きたちの話題をさらった德永純司シェフ。洋菓子の世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」で、日本チームを世界2位に導いたトップパティシエであり、近頃では『この恋あたためますか』など、ドラマのスイーツ監修やテレビ出演でも活躍する彼がついに独立した。店名の「equilibre」とはバランスのこと。
「複雑にするとか奇をてらうんじゃなく、大切なのは味、食感、香りなど全てのバランス。目指すは違和感なく誰もが食べやすいお菓子です」。
世のパティシエたちが華々しく個性を競い合う中で、親しみやすいお菓子を作ると飄々と言ってのける。それでいて、スイーツマニアも息を呑む味わい深さも秘めているとかもう反則。これもまたバランスのなせる業という。「ダゴワーズシトロンショコラ」なら、ふんわり生地に滑らかクリーム、カリカリのカカオニブサブレと、楽しい食感がおいしい奥行きを広げ、チョコレートとレモン、ナッツの甘さや酸味、香りが見事に折り重なっていく。パーツそれぞれがおいしいのだけど、ひと口の中で全てが合わさると、パズルのピースみたいにバシッと繋がって味わいが完成する。心地よくあとひく味にもう一個、の手が止まらなくなる。これ、禁断のバランスかも。
手前右から時計回りに、「ダゴワーズシトロンショコラ」¥710、柚子を丸ごと使ったコンフィチュールと柚子クリームが清々しい「タルト柚子」¥710、いちじくとオレンジ、グランマルニエ香るチョコレートケーキ「エッソンス」¥720、キルシュババロア入りのカシスムース「カシス」¥710。
equilibre 東京都品川区西五反田5‐11‐10 TEL:03・6417・4882 11:00~19:00 火、水曜休(不定休あり)
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
※『anan』2022年5月18日号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・野崎未菜美 取材、文・chico
(by anan編集部)