大都会のど真ん中でお腹がすいて、ちょっと心も欠けているようなとき、あったかくて、体に負担が少なくて、胃袋から癒されるようなごはんが食べたくなる。が、そんな店にうまいこと出合えることは少ない。気づけば駅前のラーメン屋に入ってしまって更にどんよりした気持ちになる方が多い。そんな都会の悲しみを知っているのだろうか。20年以上飲食のお仕事をしてきた冨岡公博さんが表参道の雑居ビルの3階に開いた『Flumina』は、とにかく助かる定食屋であり喫茶店だ。「休憩室と思ってください」と話す冨岡さん。12時から14時(LO)のランチタイムは野菜がたっぷりの定食、14時半から17時半(LO)の喫茶タイムは手作りお菓子やドリップしたてのコーヒーが私たちを待っている。
この日の定食は魯肉飯とわかめスープ。干し椎茸のお出汁とスパイスでじっくり煮込んだ豚肉は味わい深いけれど軽やかで、ナマスやパクチーと混ぜて食べる味変で、食欲も湧き立つ。調理中の端材も使う野菜で出汁をとったスープはどこまでも滋味で、汁物の正義を実感。丁寧で心ある料理たち。外食疲れのない後味。皿が空になる頃には心まで満ちたりた気持ちになっている。「午後のお仕事も頑張ってねー」なんて送り出してもらって、冨岡さん=表参道の新おふくろ説が浮上する帰り道だった。本当にありがたい。
ランチメニューは週替わりの定食メニュー¥1,000(税込み)の1種類。この日は、豚バラと豚肩肉を半分ずつ使い軽やかに仕上げた魯肉飯とわかめスープ。魯肉飯の上にはピーマンの油蒸し、ナマス、半熟卵、パクチーがたっぷり。
Flumina 東京都渋谷区渋谷2-8-10 ビル・グーテ青山3F 定食12:00~14:00LO、喫茶14:30~18:00(17:30LO) 定食は金・土・日曜休、喫茶は木・日曜休 https://flumina.jp
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
※『anan』2020年12月23日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)