切り身なら、フライパンであっという間。
「いわゆる切り身の塩焼きも、いくつかコツを押さえれば、フライパンでも驚くほど上手にできるようになります」
魚料理で何よりも大切なのは下処理だと、渡辺有子さんは言う。
「調理前に必ず魚のくさみを取り除くこと。まず全体にまんべんなく塩をふり、5~10分おきます。魚から出た水分をペーパーで押さえるようにして、きれいに拭き取ります」
これだけで、魚料理の味は格段に変わるそう。ただ、その塩加減がまた悩ましく。「使う塩によって多少は変わりますが、片面に2つまみ、両面で計4つまみほどを目安に軽く上からふります。水分を拭いたあとは、仕上げに味付けとして“追い塩”を同量ふってください。実際にやってみると、思っていたより多いと感じるかもしれません」
もうひとつのコツは、強めの火で、一気に仕上げること。「いつまでも魚に火を入れ続けてしまうと、身が硬くなり、おいしさが半減してしまうんです」
濃いめのタレを手早く煮詰めれば、照り焼きがパサつくこともない。表になる面を強火で焼いてから蒸せば、切り身どころか一尾丸ごとだってすぐ火が通る。
「スーパーの魚売り場でも、鱗や腹わたを取ってくれるところもあります。難しそうだと尻込みせず、フライパンで気軽においしい魚料理を作ってみてくださいね」
【料理の前に塩をふって数分おく】
片面ずつ2つまみほどの塩をして5~10分。その後、ペーパーで水気をしっかり拭き取る。ここまでが切り身魚の下処理の基本。それから味付けのための“追い塩”をする。
【切り身は、薄く粉をはたいて焼く】
白身魚は全体に薄く粉をまぶすことで、身がバラバラに離れることなく、焼き目もきれいにつく。最初に皮目、それから身を焼く。一気に短時間で火を入れた方がパリッと仕上がる。
タイのカリカリ塩焼き
【材料/2人分】
タイ…2切れ、塩…適量、薄力粉…適量、黒こしょう…適量、オリーブオイル…適量、ごぼう…1/4本、揚げ油…適量
【作り方】
- タイは片面ずつ各2つまみほどの塩をふって5分おき、出た水分をペーパーで押さえる。再度、軽く塩をふり、薄力粉を薄くはたく。
- フライパンにオリーブオイルを熱し、タイを皮目から強火で焼き付け、両面(サイドも)焼く。
- 器にごぼうの素揚げを敷き、その上にタイをのせ、黒こしょうを粗めに挽いてかける。
<ごぼうの素揚げ>
- ごぼうはピーラーで薄く削ぎ、水に放しアクを抜く。ペーパーで水気をよく拭く。
- 低めの中温(160度くらい)の油にごぼうを入れてゆっくり揚げていく。ごぼうのまわりに泡が出なくなったら取り出し、油をよくきる。
わたなべ・ゆうこ 料理家。料理教室「FOOD FOR THOUGHT」を開催。2018年はエッセイ集『料理と私』(晶文社)、共著『花と料理』(リトルモア)を刊行。
※『anan』2018年12月5日号より。写真・長島有里枝 スタイリスト・中里真理子 取材、文・吉田直子
(by anan編集部)
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