“モード界の帝王”の足跡をたどる! イヴ・サンローランの日本初大回顧展

ファッション
2023.09.18
世界中に名を馳せる、モード界の帝王イヴ・サンローラン。1958年にクリスチャン・ディオールのデザイナーとしてデビューしてから引退までの約40年間、世界のファッションシーンをリードし続けた彼の偉業をたどる大規模回顧展「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」が始まる。本展ではイヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を得て、約半世紀にわたる彼の足跡を、110体のルックや、アクセサリー、ドローイング、写真を含む約300点で紹介する。

「モードの帝王」と呼ばれた男の偉業を知る、没後、日本初の大回顧展。

art1

カクテル・ドレス-ピート・モンドリアンへのオマージュ
1965年秋冬オートクチュールコレクション ©Yves Saint Laurent ©Alexandre Guirkinger

幼い頃から絵を描くことが好きだったイヴ・サンローランは、絵本の装丁や挿絵を手掛けた後、1953年、17歳でパリに渡り、コンクールのドレス部門で入賞したことをきっかけに、クリスチャン・ディオールのアシスタントに。1957年にディオールが急逝した後、彼はチーフデザイナーに抜擢され、ディオールの新しい顔として成功を収める。1961年に彼は自身のオートクチュールメゾン「イヴ・サンローラン」を設立。翌年に発表されたコレクションでは、船乗りの作業着に着想を得たピーコートなどを発表し、大きな注目と称賛を浴びた。以来、彼は美術作品や舞台芸術、そして日本にも影響を受けながら独自のスタイルを確立。モード界を席巻し続けた。

全12章で構成された本展の中でも、特に注目したいのはサンローランの代名詞的存在となったマスキュリンスタイルだ。彼はタキシードやジャンプスーツ、サファリ・ルック、トレンチコートなど紳士服をヒントに、その快適さ、実用性を兼ね備えつつ、シンプルで優雅な女性らしいシルエットを生み出していった。

単なる流行の服ではなく、当時の社会問題までも糧に、美しい作品へと昇華させてしまうのがイヴ・サンローランの先進性。服装によるジェンダー問題が叫ばれる現代だからこそ、なぜ今、彼の仕事が見直されているのか、本展を見ればよくわかる。

【Check 1】紳士服からヒントを得た、新たな女性服のスタイル。

イヴ・サンローランは、1960年代にパンツスタイルを自身のデザインに積極的に取り入れた。当時パンツスタイルはまだ男性のものという認識が根強かったが、服装が持つジェンダー意識を超越してデザインすることで、時代が求める新たな女性らしさ、エレガンスを生み出した。この頃、彼がプレタポルテ(既製服)へ参入したこともあり、サンローランが提案したスタイルは急速に拡大。他にもピーコート、パンツスーツ、トレンチコート、タキシードなど、紳士服を女性向けに改良したほか、ボーダーや紺のブレザー、ネイビールックなども女性らしくアレンジ。現代ではすっかり女性の定番アイテムとなっているこれらの服は、サンローランの普遍性を物語っている。

art2

ファースト・サファリ・ジャケット
1968年春夏オートクチュールコレクション ©Yves Saint Laurent ©Sophie Carre

art3

イヴニング・アンサンブル
1984年秋冬オートクチュールコレクション ©Yves Saint Laurent ©Nicolas Matheus

【Check 2】芸術、歴史への愛を反映したルック。

イヴ・サンローランはモンドリアン・ルックに代表されるような美術作品とファッションの融合を提案することで、伝統的なオートクチュールモードの世界に新風を吹き込んだ。また彼は読書や美術品の収集によって想像し、モロッコ、アフリカ、ロシア、スペイン、アジアなど遠い土地のイメージをデザインに織り込む。鮮やかな色彩や独特な形で表現された異国情緒は、サンローラン作品にとって不可欠な要素となっていった。

art4

アンサンブル
1989年春夏オートクチュールコレクション ©Yves Saint Laurent ©Alexandre Guirkinger

art5

イヴニング・ガウン
1995年秋冬オートクチュールコレクション ©Yves Saint Laurent ©Alexandre Guirkinger

【Check 3】生涯をかけた舞台衣装。

少年時代から演劇や舞台など生きた芸術に夢中だったイヴ・サンローランは、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の映画『昼顔』やジャン・コクトーの演劇『双頭の鷲』、ローラン・プティが芸術監督を務めたミュージックホールなど、生涯を通して様々な演劇や映画の衣装を手掛けた。衣装に刺繍やフェザー、金&銀細工など豪華な素材を施し、色彩を駆使したのが特徴。展示されたスケッチを見れば彼の画家としての才能にも驚くはずだ。

art6

ジャケット
1977年に行われたジジ・ジャンメールのショー『ローラン・プティのショーに登場するジジ』のためのデザイン ©Yves Saint Laurent ©Sophie Carre

art7

女王のドレス(第1幕)
1978年に行われた演劇『双頭の鷲』のジュヌヴィエーヴ・パージュのためのデザイン ©Yves Saint Laurent ©Sophie Carre

Who’s Yves Saint Laurent?

art8

イヴ・サンローラン 1936年、フランス領アルジェリア・オラン生まれ。保険会社で働くフランス人の中産階級の家庭に生まれる。25歳の時にパートナーであるピエール・ベルジェと共に自身のメゾンを立ち上げてから、経営はベルジェが、創作はサンローランが担う共同体制でブランドを運営。2002年、引退を発表。ポンピドゥー・センターで最後のショーを開催。’08年、ガンで死去。享年71歳。オフィスでのイヴ・サンローラン、パリのマルソー大通り5番地のスタジオにて、1986年 ©Droits reserves

「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」 国立新美術館 企画展示室1E 東京都港区六本木7‐22‐2 9月20日(水)~12月11日(月)10時~18時(金・土曜~20時、入場は閉館の30分前まで) 火曜休 一般2300円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)

※『anan』2023年9月20日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)

PICK UPおすすめの記事

MOVIEムービー