「“連載で女の子のことを書いてほしい”と言われた時は、何を言っているんだろうと思いました。編集の方がとても感じがよかったので引き受けたんです。でもはじめてみて、週刊誌の連載がこんなにきついとは思いませんでした(笑)」
2013年の秋から2015年の5月まで本誌に掲載された藤田貴大さんの連載「おんなのこはもりのなか」が、いよいよ同タイトルで単行本に。主宰する劇団「マームとジプシー」の活動も多忙ななか、途中からはパソコンではなくiPhoneで、稽古場に向かう電車の中で書いたりもしていたとか。
「繰り返しますが、あんなにきついとは(笑)。でも20代後半から現在までの僕の感情の移ろいみたいなものが書きこまれた気がする。それはすごく恥ずかしいけれど、重要な記録じゃないかとも思います」
女性の身体のパーツやファッションに言及するなかで、うで毛や充血した目、流れ落ちる汗などに好感を示すなど、着眼点が意外。
「狙って書いたわけじゃなく、僕自身が本来マニアックなんだと思います。でも汗をかく女の子が好きと書くとフェチ的に見えてしまうけれど、そういう人もすごくきれいだってことが書きたかったんです」
読み進めるうち、この人は女性を全肯定してくれていると伝わってくる。そもそも“おんなのこ”という響きもなんとも優しいが、
「うちの母親が、僕が女の子のことを“女”と呼ぶと怒るような人だったんです。それにたとえば祖母を見ていてもどんどん無邪気で子どもっぽくなっているし、20代を過ごして周囲を見て思うのは、女性はみんなずっと“おんなのこ”なんだなってこと。この連載ではそういうことを書きたかったし、それは僕が『マームとジプシー』でやろうとしていることでもあるんです」
一方、テーマから逸脱した回も多い。幻想小説のような実体験があったり、ふと耳にした生々しすぎる男女の会話があったり…。
「旅に出ている時は旅のことを書いているし、その時のコンディションが影響して、仕事がきつい時期は暗い文章が続いたりもしました。僕は出演者たちとプライベートな会話はしないんですが、みんな連載を読んで“こういうことを考えているのか”と思っていたらしい。一方的な交換日記になっていました(笑)」
結果的に、豊かな味わいをもたらしてくれる一冊となった本書。
「単行本にする際に“からだ”“きおく”“におい”などのチャプターに分けたり、旅の部分は違うニュアンスの文字にしたりと、本として飽きない構成になっているはず」
連載時とはまた違う味わいの、一人の男の子による貴重な記録なのだ。
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