今、ミュージカル界で着実に活躍の場を広げている有澤樟太郎さん。ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!を前に、2年前に出演したミュージカル『のだめカンタービレ』のこと、そしてミュージカルデビューしてからの10年について語る。

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    峰はヌケているところがある愛されキャラ。似てると言われるのは複雑です(笑)

    近年、ミュージカル『キンキーブーツ』や『HERO』『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』など、話題のミュージカルに次々と主演。現在上演中の、4人組のコーラスグループを主人公にしたミュージカル『ジャージー・ボーイズ』でボブ・ゴーディオを演じている有澤樟太郎さんが、ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!に出演する。原作は、ピアノに天賦の才を持つがズボラな性格の野田恵(のだめ)と、容姿端麗で頭脳明晰なエリート音大生の千秋真一を軸に、音楽の魅力や夢、成長を描いた二ノ宮知子さんによる大ヒット漫画。’23年に初ミュージカル化された『のだめカンタービレ』は、’06年に話題を呼んだドラマ版でのだめを演じた上野樹里さん、ミルヒー(フランツ・フォン・シュトレーゼマン)を演じた竹中直人さんの出演もあり、大きな話題を呼んだ。

    「初演のときは、のだめ役が上野樹里さん、ミルヒー役が竹中直人さんという豪華キャスティングの一員に加われるということが、本当に嬉しかったです。ドラマが放送されていた頃小学生で、学校でみんなが観ていて、放送された次の日はクラスみんながドラマの話題で盛り上がっていた、『のだめ』ど真ん中世代。初演の時に僕は稽古に遅れて参加したのですが、稽古初日に千秋役の(三浦)宏規から『やっぱり本物だった』と連絡がきたくらい。僕も自分の稽古初日に思ったのですが、上野さん、竹中さんだけでなく、他のキャストの皆さんも、すでに原作のキャラクターそのもので、その本物具合に衝撃を受けたのを覚えています」

    有澤さんが演じたのは、のだめと千秋と同じ音大に通う、ヴァイオリニストの峰。音大近くの中華料理屋の息子で、熱く─本気なキャラクター。「演じる前から、多くの方にぴったりだと言っていただいていて。実際に自分も原作を読んで、似ているなとは思っていました。でも、自分ではあまり長所だと思っていないようなところが似ている感じなんです。何と言うか…峰って、カッコいいというより、愛嬌で愛される人物。似ていると言われるのは少し複雑で、自分では納得がいってなかったりもします(苦笑)。ただ、音楽が好きで人が好きで、何事にも一生懸命なところは、自分に近いところがあるのかな、と。だから、あまり考えすぎず、とにかくまっすぐ素直に演じようと心がけていました」

    コンサートと言っていますが、結構ちゃんとセリフをしゃべります

    物語の性質もあり、作品に携わっていた期間は「すごく青春していた記憶があります」と笑顔をのぞかせる。

    「楽屋が、僕と竹内將人(黒木泰則役)くん、内藤大希くん(奥山真澄役)、なだぎ武(江藤耕造役)さんが一緒だったんです。4人楽屋で結構狭いのに、別の楽屋の竹中さんや宏規がいつもいて、みんなでずっとわちゃわちゃしていました。大体、竹中さんの小ネタで始まり、なだぎさんに絡んで、なだぎさんがネタで返したりツッコんだりと、お互いにイジり合っているんです。大の大人だけど、そのやり取りがまるで小学生のようで、見ていてすごく楽しかったです」

    とくに竹中さんの芸達者ぶりと、周りを楽しませようとするエンターテイナー精神には刺激を受けたよう。

    「普段はとてもスマートで、めちゃくちゃオシャレでカッコいい方なんです。でも、結構緊迫した場面の、みんなで壮大な曲を歌うシーンの稽古で、僕の目の前に座っていた竹中さんがすごい変顔をされていて…。真剣に歌っているのに、すべての穴という穴を開いているような顔で(笑)、こちらは笑いをこらえるのに必死でした。誰かと顔を合わせたら、ふざけずにはいられない方なんだと思います。そこが僕は大好きだし、笑いのツボにハマるんです。今回も、竹中さんとご一緒できるのが楽しみです」

    千秋役の三浦さんとは、これまで何度も共演経験があり、親しい間柄。

    「宏規って、もともと千秋っぽいところがあるんです。千秋が持っている〝俺様感〟というか…。僕より年下ですけれど、宏規の僕に対する扱いが、千秋の峰に対する扱いとすごく近いので、そこはナチュラルに演じられたかな」

    今回の峰役は日替わりとなり、有澤さんのほか、ミュージカル『刀剣乱舞』の大包平(おおかねひら)役や演劇調異譚『xxxHOLiC』の百目鬼静(どうめきしずか)役などで人気上昇中の松島勇之介さんと、同じくミュージカル『刀剣乱舞』の蜂須賀虎徹(はちすかこてつ)役のほか、近年は『1789-バスティーユの恋人たち-』などでも活躍した高橋健介さんが出演。こちらのふたりも、かねてより共演してきた仲。

    「勇之介は、以前から僕と顔や雰囲気が似ていると言われていて、峰を演じている姿が想像できるんです。だからこそあまり考えすぎず、彼自身の感覚で楽しんでくれたらきっと素敵な峰になると思います。健介くんは、僕と同じく1回きりの参加ですが、その1回を思い切り楽しんでほしいと思います。健介くんて、事前にものすごくいろんな準備をする人なんです。峰はわりと勢いだったり爆発力が大事なキャラクターなので、その持ち前の真面目さに加えて、思い切った表現を見せてくれたら、また違った峰の魅力が引き出されるのではないかと楽しみにしています」

    シンフォニックコンサートと題した今回、なんと東京フィルハーモニー交響楽団が演奏を担うという。とはいえ、ただの演奏会では終わらない。

    「台本を見たら、思っていた以上にセリフがしっかりあって、音楽だけではなくドラマ性がある公演になりそうです。そもそも『のだめ』という題材自体が、コンサートにぴったりなんですよね。オーケストラのシーンとか、実際にオーケストラの方々が生演奏してくださっていて、迫力あるシーンが多かったので、規模感を大きくしてやったらすごく面白くなるんじゃないかと思っていたんです。ただ今回、髪の毛をどうしようかと思っているんですよね。やっぱり、峰といったら金髪のツンツン頭がトレードマークじゃないですか。前回、自分のこだわりで、金髪に染めて役に臨んだのですが、今回はどうやって峰になっていこうかと今考えているところです」

    この世界に入って、自分がこんなに歌えないんだってショックでした

    見た目にとどまらず、役柄によってさまざまな角度から役にアプローチしていくという。

    「舞台『キングダム』(’23年上演)で壁(へき)を演じたときは、付け髭ではなく、本番に向けて髭を生やしたりしていました。今回の『ジャージー・ボーイズ』では、現代の日本人の坊やが出てきたように見えてはいけないと思い、アメリカのクラシックなスタイルが似合う男性をいろいろ研究しました。私服を少しクラシック寄りにしたり、食事も、普段は和食が好きだけれど、アメリカンなものを食べたり。峰をやっていたときは、パンク系の音楽を聴いたり。そうやって普段の生活から役に近づけていくのが僕は楽しいんです。『キンキーブーツ』のときは靴にこだわって、稽古も革靴を履いてやっていたんですけれど、スニーカーでやるのとでは、歩き方から動きひとつひとつが全然違ったりするんです」

    現在出演する『ジャージー・ボーイズ』では、曲作りに天賦の才を持つ自信家で生意気な一面がありながらも、どこか憎めない愛嬌を感じさせるボブ・ゴーディオを魅力的に演じている有澤さん。2022年公演に引き続いての役だが、歌に芝居にさらに深みを増し、高い評価を集めている。

    「もともと音楽を聴くのも歌うのも好きだったんです。得意というわけではなかったけれど、学生時代はカラオケによく行きましたし、学園祭で友だちとORANGE RANGEさんやCHEMISTRYさんの曲を歌ったりもしていました。でも、この世界に入ってみたら、声が出ない、リズムも全然取れない、こんなに歌えないのかとショックでした。そのうえで、歌いながら踊るなんてとんでもない。課題が山積みで、何から手をつけていいかわからず本当に苦戦しました」

    「完全に出鼻をくじかれた」そうで、そこから歌のレッスンに通うように。

    「当時は、一生懸命に歌うことしか頭になかったけれど、必死になればなるほど力んでしまって声が出なくなる。レッスンに通うようになって、まず力の抜き方を覚えましたし、演奏にちゃんと耳を傾けて歌詞の意味を考えて歌うということを覚えました」

    10年続けてこられたのは、出会ってきた方々と音楽のおかげです

    もうひとつ、忘れられない出来事がある。それはあるオーディションでのこと。同じオーディションを受けていたspiさんの歌を目の前で聴き、「ミュージカルの歌ってこうやって歌うんだって思ったんです」と、そのときの衝撃を語る。

    「spiさんの歌が、まるでそこでお芝居して、セリフを語っているようで、これが歌とミュージカルの歌唱との違いかって思いました。歌詞はセリフで、音は感情に自然と寄り添うものだと気付かされたんです。そこから、さまざまなミュージカルの現場に携わらせていただくようになって、いろいろな方のお芝居をながら、少しずつ自分なりにミュージカルの歌を理解できるようになっていった気がします」

    『ジャージー・ボーイズ』という作品との出合いも大きい。

    「4人のコーラスが生み出すハーモニーが重要な作品で、勢いだけでは通用しない役でした。先生からは、『この作品を経験したら、歌のレベルが上がるよ』と言われたのですが、終わってみたら、その意味がわかりました。歌うということ以上に聴くことがすごく大事で、その力が鍛えられたと思います。今も毎回公演するたびに気づかされることがあります」

    今年、デビュー10周年を迎えた。10月にはそれを記念したコンサートも控えている。

    「まず、この世界で10年続けてこられたことが本当に嬉しいです。僕は養成所出身なのですが、当時一緒に学んでいた同期の多くは道を離れてしまい、今も続けているのはほんの一握りです。自分がこうして活動できているのは、間違いなく、ここまで出会ってきた多くの方々の支え、そしてファンの皆様のおかげです。この10周年の記念に敢えてコンサートを選んだのは、音楽に助けられることの多かった10年だったから。音楽が欠かせない仕事になってきていることもありますが、普段の生活の中でもつねに音楽が身近にある。ミュージカルソングを含む、この10年に出合ったさまざまな曲を、みなさんと一緒に振り返っていけたらいいなと思っています。僕にとっては初のコンサートでもあり、これからのキャリアに向けての第一歩という意味もありますので、しっかり臨みたいと思います」

    Profile

    有澤樟太郎

    ありさわ・しょうたろう 1995年9月28日生まれ、兵庫県出身。2015年より俳優活動をスタート。ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー‼』国見役や、ミュー ジカル『刀剣乱舞』和泉守兼定役などで人気を博す。’21年にミュージカル『17 AGAIN』、翌年にはミュージカル『ジャージー・ボーイズ』に出演。’24年にはミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』で帝国劇場初主演を果たした。今年上演されたミュージカル『HERO』では単独初主演を果たし、またミュージカル『キンキーブーツ』の主人公・チャーリー役も話題に。デビュー10周年を記念したコンサート『10th Anniversary Concert 〜ARIPA!! 2025〜』は10月18日(土)に兵庫、10月24日(金)〜26日(日)まで東京にて開催。

    ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!

    公演情報

    【台湾公演】9月6日(土)~7日(日)Taipei Music Center

    【東京公演】9月13日(土)~15日(月・祝)東京ガーデンシアター

    原作/二ノ宮知子『のだめカンタービレ』(講談社「Kiss」所載) 作詞・上演台本・演出/上田一豪 音楽/和田唱 クラシック音楽監修・指揮指導/茂木大輔

    出演/上野樹里、三浦宏規 松島勇之介/有澤樟太郎/高橋健介(日替出演・出演日順) 華優希/清水美依紗(日替出演・出演日順) 大久保祥太郎、竹内將人、なだぎ武/竹中直人ほか

    ©️二ノ宮知子・講談社/ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!製作委員会

    写真・内山めぐみ スタイリスト・千野潤也(UM) ヘア&メイク・矢澤睦美(wani) 構成、文・望月リサ

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