
心地よいビート、ゆるいムード、小粋なワード。約8年の時を経て、ついにRIP SLYMEの5人が帰ってきた。新曲制作の裏側や全国ツアーへの意気込み、そして、気になる「これから」のことを聞いた。
おかえり、青春。約8年ぶりに5人全員が揃った新曲「どON」が発表されると、YouTubeのコメント欄には往年のファンからの熱いメッセージで溢れ返った。日本にヒップホップを広く浸透させたRIP SLYMEが、PESとSUを加えた5人体制で、デビュー25周年を迎える来年3月までの期間限定で復活。インタビューが始まるとあれよあれよという間にRIP SLYMEらしいマイクリレーを思わせる、軽妙なトーク。やっぱり彼らの言葉遊びは最高だ。

上段左から、FUMIYAさん、RYO‐Zさん、SUさん。下段左から、PESさん、ILMARIさん
── 再集結嬉しいです。さっそくですが、どのようにして実現したのか教えてください。
RYO‐Z(以下、R) それは再結成リーダーのILMARIさんから詳しく説明を。再結成したかったら彼に聞け! って言われてるくらいですから。
ILMARI(以下、I) そうですね、世の中にあるほとんどの再結成は僕がやってますんで(笑)。僕とRYO‐ZくんとFUMIYAくん、3人で2022年に再始動して、新曲をリリースするあたりで「いつかはまた5人でやりたい」と話してたんですね。そのタイミングで、SUさんやPESくんとも「ちょっと会いません?」と連絡を取ってて。というのも、8年前の休止はみんなで話し合って決めたわけじゃなく、突然活動が止まった形になってしまったので、ファンの方からも「また5人の音楽聴きたいです」という声をたくさんいただいて。僕としては当時のスタッフさん含め、みんなで集まって、今までの活動にきちんと“句点”をつけたかったというか。あと、体が動くうちに再集結をしておきたいという気持ちもありまして。
R そうね。60~70代になると、この中の誰かが天に召されている可能性もありますから。
I そうそう。だから、なるべくみんなで楽しくできるうちにと思ってこのタイミングで。
── 活動期間を来年3月までの約1年間と決めたのも理由が?
I それぞれの活動もありますし、どれだけRIP SLYMEに時間をあてられるかもわからないから、1年という限られた時間でやってみましょうと。
PES(以下、P) 僕は正直、再集結の話を聞いた時、大変になるなと思ったんですよ。というのも、それぞれの活動と両立していけるのかなって。「体、大変よ? 大丈夫?」と思って。でもみんなで2年かけて準備して、ようやくここまで来たという感じですね。でも、再結成リーダーが一番大変だったでしょ?
I 大変でしたね~。
P 僕は単純に仕事の量が倍になったのでマジで寝られないです。
FUMIYA(以下、F) え~、寝てるじゃない!
P 寝られないの本当に!(笑) 昔は新幹線に乗ると秒で寝てたのに、今は全然。この間も『ガンダム』を見てたら眠れなくって。
R それは『ガンダム』がおもしろいからでしょ!
P いや昔の『ガンダム』よ? 内容知っているから、これ見てたら寝られるかなと思ったけど。
R そこまでガンダムが体にしみこんでないのよ。FUMIYAなんて『こち亀』を手に取っただけで寝ちゃうんだから。
── (笑)。久しぶりに集まって変わったところはありました?
I いや~意外と変わんないですね。それぞれの仕事のやり方もスタジオでのテンションも。でも、再集結一発目のライブ(JAPAN JAM 2025)の時、SUさんだけめちゃくちゃ緊張してたよね?
SU(以下、S) あんなにキャーキャー言われる世界が日常だったんだと思うとゾッとしたんですよ。また、大きな勘違いをしちゃうんじゃないかと(笑)。自分は最初のレコーディングでも緊張したんだけど、さっきILMARIくんが言っていたみたいに、始まってしまえばすぐに以前のような空気を感じて、すっと溶け込めた気がした。それも嬉しかったですね。
── PESさんは久しぶりの5人のライブはどうでしたか?
P 僕は楽しんで堪能するのみという感じですね。ライブも曲作りも「これが最後になるかもしれない」という気持ちで取り組んでるし、それがお客さんにもちゃんと伝わればいいかなと。
R 僕自身変わったことをいえば睡眠かな。さっきPESくんが寝られないと言ってましたけど、僕も大体朝5時くらいに目が覚めるように。って、こんなこと『anan』で話す必要ないんだけど。
I でも、わかるよ。朝LINEしたら返事が来るようになった。
P あ~。午前中みんな起きてるから「起こしちゃうかな?」とか気にせずメッセージ送れるよね。
F だから、逆に夜の0時を過ぎたら送りづらいのよ。
I だって21時半にはもう寝てんだもん。あと、夜の街に出るとドキドキするようになった。
R いや、それはあなた、不整脈かもしれないですよ。
I やだな。『anan』でこんな話ばっかり(笑)。でも、早起きはいいことだよね?
P そうだね。あと、ライブも制作も前に比べて無駄がなくなって、ダラダラしなくなった。たまにSUさんがスタジオに長くいるくらい? ライブ中、無駄に動き回ってるのも僕ぐらいだし。
F うんうん。僕、後ろのDJテーブルからみんなの動きを見てるじゃない? MC4人は、お客さんの方を向いている時は全力で盛り上がってるんだけど、ふと後ろを振り返った時にスンッて真顔になってたりするんですよ。
R ちょっと! その言い方はよくないよ!(笑)
P そうだよ。僕は無駄がなくなったっていういい話してんのに!
R 僕たちの動きが洗練されたってことにしといてよ!
── 再集結後は大型フェスに連続して出演するなど、かなり忙しいと思いますが、どうやってリラックスしていますか?
R 僕はエブリデイサウナです。
I 急に英語だ。僕とSUさんはよく歩くよね。二人とも家が近いんで、スタジオを出る時は大体一緒に歩いて帰ってます。
S そう。いつでも歩けるようにウォーキングシューズ履いてる。
P 僕は変わらず、サーフィンして、植物を世話するのが一番のリラックスになってるかな。
F 僕は料理ですね。
P 何作ってんの?
F ペペロンですよ、ペペロン。料理してると他のことを忘れられるからいい気分転換になるんです。
あまり先のことは決めずに。今は“ワチャワチャせいや!”で。
── 5月に映像を公開した「STEPPER’S DELIGHT(2025ver.)」も話題になりました。メジャーデビュー曲をリレコーディングするアイデアはどうやって生まれたんでしょう?
I 再集結のお知らせを文章で出すだけなのも僕たちらしくないなと思って。だったらメジャーデビュー曲をリメイクしてスペシャルムービーとして出すのはどうだろうって。それで、〈RIP SYLME IS BACK〉とリリックを変えたり、オレンジのつなぎも着たりして。
── あの映像はファンにはたまらなかったです。再集結後初のシングル曲「どON」はどうですか? どのようにして、制作されたのでしょうか。
I これはFUMIYAのトラック先行で作ったんですよ。
F 「どON」は4人のマイクリレーを生かすような曲にしたいと思って、「雑念エンタテインメント」あたりのシンプルさや、アナログ感をイメージしました。
P 最初に聴いた時、めちゃくちゃ‘90年代ヒップホップだと思った。でも、ドラムの打ち方はちょっと変わってるからおもろい。
S そうね。FUMIYAらしいビートだよね。
F でも、SUさんは最初すごい嫌がってたよね? 「難しい難しい」ってずっと言ってた。
P SUさんはね、最近ネットで韻を勉強したばかりだから、まだヴァースは難しいんですよ。
── 10月からは全国ライブツアーが始まりますね。どのような内容になるか気になります。
F このツアーは「DANCEFLOOR MASSIVE」といって2004年から不定期でやっているツアーシリーズなんですが、コンセプトがクラブなんです。だから、アルバムの楽曲をそのままやるんじゃなくて、ダンスチューンぽくしたり、オケをDJっぽくしたり、そういうアレンジで遊んだりする予定です。
── では、ここでしか聴けない音楽が体感できる?
F そうそう。それで、ぎゅうぎゅうのアリーナにRYO‐Zくんは飛び込むんだよね?
R もちろんですよ。「俺がダンスフロアマッシブだ!」っつって。だから、モッシュした時にみなさんに触りたいと思っていただける体づくりをしておかないと。それで僕を会場の外まで連れ出していただけたら。「ワチャワチャせいやー!」って言いながら。
I (笑)。一応このツアーがファイナルなので、ぜひとも5人の音楽を聴きに来てほしいですね。
── では最後に。新曲「結果論」には〈もっと先行こうぜ〉という歌詞がありますが、3月の再集結終了後の“もっと先”をファンは期待してもいいでしょうか?
I 3月以降のことは本当に何も決めてなくて。変に先々のことを決めちゃうよりは、3月を迎えてそれぞれがその時どう思うかが一番大事だと思ってて。
R そうそう。「それぞれひとつのlife」ですから。
I ね。だから今はとにかくワチャワチャしてたいと思います。
Profile

RIP SLYME
左から、PESさん、FUMIYAさん、RYO‐Zさん、SUさん、ILMARIさん。1994年に結成し、2001年にメジャーデビュー。瞬く間に数々のヒット曲を生み出し、日本にヒップホップを広く浸透させた。活動休止とメンバー脱退を経て、’25年4月にPESとSUが復帰し5人で再集結。計48曲を収録したベストアルバム『GREATEST FIVE』が発売中。
Information
『GREATEST FIVE』
『GREATEST FIVE』は、時代を彩ったヒットナンバーから新曲まで3枚組全48曲の大ボリューム。初回限定盤の特典には、ライブスタッフパス風ステッカーやポスター、さらに全国ツアーのチケット応募のシリアルナンバーなどが付く。全国ツアー「RIP SLYME TOUR 2025 DANCE FLOOR MASSIVE FINAL」は10月3日より全国7か所を回る。
FUMIYAさん・ジャケット¥49,500 パンツ¥38, 500(共にリーバイス(R)/リーバイ ストラウス ジャパン) その他はスタイリスト私物
RYO‐Zさん・ジャケット¥17,600(リーバイス(R)/リーバイ ストラウス ジャパン) サングラス¥27 ,500(アイズ プレス) その他はスタイリスト私物
SUさん・ジャケット¥15,400(リーバイス(R)/リーバイ ストラウス ジャパン) その他はスタイリスト私物
ILMARIさん・ジャケット¥18,7 00(リーバイス(R)/リーバイ ストラウス ジャパン) シャツ¥16,5 00(ディスイズネバーザットⓇ/ディス イズネバーザット トウキョウ フラッグシップ ストア TEL. 03-4363-2150) その他はスタイリスト私物
写真・下屋敷和文 スタイリスト・金光英行(CEKAI) ヘア&メイク・高草木 剛 吉沢実希 インタビュー、文・浦本真梨子
anan 2455号(2025年7月16日発売)より