最前線を走るプロデューサーに聞く、日本の配信エンタメの神髄

髙橋信一さん

多様化&進化を続ける配信エンタメの世界で、最前線を走るNetflix。数多くの話題作をプロデュースする髙橋信一さんが語る、その神髄とは。

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    Netflix 髙橋信一さん

    たかはし・しんいち 1979年7月4日生まれ、静岡県出身。映画製作会社・日活を経て、2020年にNetflixに入社。『ONE PIECE』、11月配信開始の『イクサガミ』など話題作を次々に手がける、エンタメ界話題の人物。

    企画作成のこだわりは“熱狂”があるのかどうか

    Netflixシリーズの『地面師たち』『極悪女王』『トークサバイバー!』。この数年で髙橋信一さんが手がけたヒット作は、枚挙にいとまがない。一体、彼は何を見て、感じて、作品の企画に乗り出しているのだろうか。

    「仕事柄、トレンドや書籍の新作チェックはしますが、売り上げなどの数字は特に気にしていません。何よりも作品が日本の視聴者にとって、いかに新たな物語に見えるのかをいつも重要視しています」

    今年は過去に影響を受けた作品を再度見直すことがブーム。

    「映画だと『ふたり』や『ニュー・シネマ・パラダイス』。漫画は『ピアノの森』を全巻、再読しました。やり始めて分かったのは、感動するポイントは何年経過しても変わらないこと。新しさを探しながらも普遍性を追い求める。このスタイルは今後、企画の発想のもとになるかもしれません」

    Netflix作品は、世界中のユーザーに見られているのが映像として最大の特徴。しかし髙橋さんは、世界ではなく常に日本へ向け、発信しているという。

    「日本の独自文化などを突き詰めていくと、他国のユーザーにとってはユニークに感じられることがあります。結果、僕たちからの新しい提案になっている。この制作指針には、こだわっています。先日『イカゲーム』のクリエイターさんとお話しする機会がありました。僕たちと同じく、グローバルに向けて作品を作っていないからこそ、韓国の子ども遊びをテーマに選んだそうです。とはいえ、『地面師たち』の監督をされた大根仁さんとも話したんですけど、土地取引や不動産の商慣習は日本人にとっても分かりにくい。ちょうど企画の開発中、僕もプライベートで不動産の売買をしていて(笑)。でも、何の書類が必要なのか、100%は分かっていない。不動産慣習は国によって違いますから、映像で事細かに説明すればするほど、分かりにくくなってしまう。省略も含めて、魅せ方を選んでいくことが必要です」

    プロデュースを担当した作品が、次々にランキング首位を獲得。人気の声をリアルに感じているそう。

    「『地面師たち』では、ピエール瀧さんの『もうええでしょう』が新語・流行語大賞のトップテン入りするとか、予想もしていなかった経験をさせてもらっています。世間が熱狂の渦に包まれていく、ミーム化という言葉を実感させてもらっているというか。僕だけでなく、鈴木亮平さんがエジプトへ旅行した際に、『シティーハンター』を見た海外の人から『見たよ』と声をかけられたことを聞いて、僕もとても嬉しくなりました」

    多くの人に見られる作品だけに、俳優の役作りに対するプレッシャーも大きく、努力を求められる。髙橋さんは現場で、何度かその様子を目の当たりにしてきた。

    「ご一緒した皆さん、本当に苦労されています。あえて名前を挙げるとしたら『浅草キッド』でビートたけし役を演じた柳楽優弥さん。初めは誰もが知る、たけしさんのイメージに似ていなかったんです。所作指導を受けるように、ずっと真似て、真似て。講師に松村邦洋さんに来ていただいて(笑)、練習したこともありました。本人に似せるだけではなく、同時にタップや漫才の練習もあって…。最終的には完璧に仕上がっていました。本人と顔立ちがまったく違うのに、映画を観た人から『似てない』と聞いたことがありません」

    「これからも見たことのない物語のパンドラの箱をどんどん開けていきたい」

    世界中が期待と注目を寄せるプロデューサーが思う、現在の日本のエンタメの立ち位置とは?

    「日本のクリエイティビティはとても優れています。でも今までは言語や物理的距離の壁があった。それがデジタルメディアの普及によって、日本のクリエイターの才能が世界へ一気に届き出しています。今後もこれらのパンドラの箱を開けていきたいです」

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    写真・Marco Perboni 取材、文・小林久乃
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    No.2454掲載

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