【監督】見里朝希「可愛さの中にほんのりダークさが混ざった世界観を目指しました」

『PUI PUI モルカー』でストップモーションアニメの新たな魅力を提示した見里朝希監督は、今回の依頼を受けた際の心境を「世界中で長く愛されているキャラクターだけに、嬉しい半面プレッシャーもありました」と語る。

「重要なのはファンの方が納得する世界観を構築すること。その上で自分の作品に通底する可愛さとダークさが混ざった要素も…と考えると覚悟が必要でしたが、Netflixだからこそ挑める規模の大きい作品づくりを目指しました」

制作にあたりアーカイブでキャラクターの魅力を読み解き、サンリオピューロランドにも足を運んだそう。

「チョビチョビ歩く姿を見て、いやこれは可愛いなと（笑）。そうやって世界観をある程度理解したところで、場面を想定した絵を数枚描いたんです。マイメロディに試練が訪れ追い込まれる姿など少々ダークな内容でしたが、それに立ち向かって解決する方向を脚本の根本宗子さんと共有しながら物語を組み立てていきました」

完成した脚本について伺うと「根本さんのキャラクターへのリスペクトを感じましたし、“優しさってなんだろう”をテーマにすることで世界に通用する作品になった気がします」とのこと。映像に落とし込む際に意識した点は？

「細部の表現にこだわる一方で、3Dに見えないようにあえて手作り感を残すことを意識しました。逆にカーチェイスのようなアクションシーンでは、コマ撮りの限界を超えたカメラワークに挑んでいます。スケジュールとの戦いでしたが、やりたい表現は貫けたんじゃないかな」

今作はまさに新時代の癒しコンテンツとなっているが、見里監督自身は“癒し”に何を求めているのだろうか。

「個人的には人間的な要素が少ないほうが癒される気がします。動物の動画が時代を超えて人気なのは、感情をあまり読み取れない分、想像する楽しさがあるからなのかも」

【脚本】根本宗子「新たな関係性をメロクロ二人の間につくりたかった」

自身の劇団を中心に、複雑な感情やリアルな関係性を掬い取る作品を書いてきた根本宗子さん。彼女の舞台を観たプロデューサーのオファーにより今回脚本を担当する運びとなったが、もともとマイメロディのファンだったという。

「小さな頃はもちろん、10代で劇団を始めキャパオーバーで辛かった時期も、マイメロディを眺めることで癒されていました。ずっと身近な存在だったからか、サンリオの方から頂いたキャラクターの細かい設定表と自分がこれまで思い描いていた像が9割方一致していて。マイメロディとクロミの関係性も書いていてすごく楽しかったですね」

そう話す通り、二人の間のやりとりや奥行きのある関係性には根本さんらしさが凝縮しているように感じられる。

「資料を見返して感じたのですが、二人は正反対な性格だけど、お互いに言いたいことを言い合えていてすごく相性がいいんですよね。だからこそ、クロミが自称する、いわゆる“ライバル”なだけじゃない関係性を二人の中につくりたかった。今作を彼女たちのバディものにすることで、普段の作品でも描いている“対立の先にある優しさ”に近いところに落とし込めるんじゃないかなと思いました」

今回Netflix作品ということで、年齢層の広さやグローバルな視点を意識した部分はあったのだろうか。

「自分的には、年齢層の広さのほうを意識したかもしれません。子供だから汲み取ってくれるものもたくさんあると思いますし、大人になって見返した時に“こういうメッセージがあったんだ”と気づくような部分も。見里監督の持ち味であるダークファンタジー的な要素も相まって、ただ可愛いだけでは終わらない作品になっていると思います」

最後に、根本さんにとっての“癒し”を尋ねた。

「天然温泉の銭湯かな。そこに集うおばあちゃんたちの会話を聞きながら入浴できて、癒しの一石二鳥感があります」

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