アートと歴史で紡ぐ、光と影を生き抜くヨコハマ。
マティスや奈良美智などの所蔵作品や、車椅子の作品で知られる檜皮(ひわ)一彦の新作の展示に加え、市内の博物館や資料館から第一級の資料、作品を集め、新たな視点で横浜の歴史を描き出そうとする試みだ。
「オールヨコハマの力で、『開港前は小さな漁村にすぎなかった』という通説をひっくり返します」
と話す館長の蔵屋美香さん。《人面付土器》(鶴見区上台遺跡)に始まり、縄文から幕末を生きた横浜人の存在をひしひしと感じさせる作品の数々を展示。開国以後に描かれた和装の外国人女性の肖像画、戦前を代表する洋画家・松本竣介の横浜駅周辺の風景画シリーズも注目だ。
一方で幕末に実在した港崎(みよざき)遊廓の資料や遊女の手紙、戦後の赤線(売春街)で働く女性を写した常盤とよ子の作品が出品されるなど、港町の影の部分も隠さない。その意図は?
「横浜は幕末のペリー来航、関東大震災、第二次世界大戦末期の大空襲、終戦後は進駐軍によって中心部が接収され、世界史に直結する激動の歴史を歩んできました。そのなかで全力で生き抜いた人々の人生を本展は全力で讃えたい。肯定しがたいダークサイドはあるものの、そこにもかけがえのない人生があるのです」
展覧会名には過去から未来にわたるすべての横浜人と横浜に関わる人を迎える意味を込めた。大改修を経て、美術館もより広く人々を迎え入れる場所に生まれ変わった。エントランスホールには建物の石材から採ったさまざまなピンク色を基調としたテーブルや椅子が置かれ、無料でくつろぐことができる。ミュージアムショップやカフェも一新。「ただいま!」の気分で出かけてみて。
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《人面付土器》(鶴見区上台遺跡)弥生時代後期 H32cm 横浜市歴史博物館蔵(神奈川県指定重要文化財)
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松本竣介《Y市の橋》 1943年 油彩、カンヴァス 61.0×73.0cm 東京国立近代美術館蔵
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奈良美智《 春少女》 2012年 アクリル絵具、カンヴァス 227.0×182.0cm 横浜美術館蔵 (C)YoshitomoNara
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五姓田芳柳(伝)《外国人女性和装像》 制作年不詳 絹本着色、軸 99.0×38.8cm 横浜美術館蔵
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常盤とよ子《路上》 1954年(1988年のプリント) ゼラチン・シルバー・プリント 49.8×35.8cm 横浜美術館蔵
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檜皮一彦《walkingpractice feat.HIWADROME》 2023年 サイズ可変 車いす、カーブミラー、LED照明、プロジェクター、LCD、メディアプレイヤー、3Dプリンター、マネキン、インシュロック 発表場所:東京都美術館(参考写真)
INFORMATION インフォメーション
横浜美術館リニューアルオープン記念展 おかえり、ヨコハマ
横浜美術館 神奈川県横浜市西区みなとみらい3‐4‐1 開催中~6月2日(月)10時~18時(入場は閉場の30分前まで) 木曜(3/20は開館)、3/21(金)休 一般1800円ほか TEL:045・221・0300
anan 2434号(2025年2月12日発売)より