相島一之×甲本雅裕×近藤芳正「長年やってきたバンドみたいな感じ」 三谷幸喜主宰の伝説的劇団が30年ぶりに復活

エンタメ
2025.02.08

左から、甲本雅裕さん、相島一之さん、近藤芳正さん

ときに軽妙なセリフ回しでクスリと笑わせ、ときに深い心情描写で泣かせもする、押しも押されもせぬ名バイプレイヤーたち。この御三方にとどまらず、ドラマや映画、舞台で活躍する個性派たちを数々輩出した東京サンシャインボーイズ。三谷幸喜さんが立ち上げ、’90年代に大人気を誇った伝説的劇団が30年間の充電期間を終えて復活。

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三谷幸喜さん主宰の伝説的劇団が30年ぶりに復活。

甲本雅裕(以下、甲本):かつて“30年間の充電期間に入る”と言って活動休止をしたけれど、今回の公演が決まったときは「まさか!?」ってなりました。

相島一之(以下、相島):充電とは言ってたけど、実質は解散だったからね。でも2009年に限定で12日間だけ復活公演をやったときが楽しかったんだよね。それは三谷も言ってて、30年後もやりたいねってみんなで話してて。それで5年くらい前から、どうしようかってなんとなくみんなで集まったりしてて。あと、こんちゃん(近藤さん)が企画した…。

近藤芳正(以下、近藤):Zoomを使って『12人の優しい日本人を読む会』をオンラインで配信したんですよね。

相島:あれも結構大きかったね。コロナ禍でみんなスケジュールが空いていて参加できたのもあって、あの頃から「復活公演やるの?」みたいな話になったから。

近藤:(笑)。先に言っておきたいのですが、おふたりは劇団員でしたけれど私は客演でしたから、30年前の休止も今回の復活も、ちょっと外から見てる感覚なんです。

甲本:…楽しいは楽しいんですけれど、僕はキツいんですよ。近藤さんは客演とはいえ、初参加の時点で他の劇団でも活躍されていましたし、相島くんは大先輩で。僕は演劇もまったくわからないのに、荷物運びでいきなり入っちゃったもんですから。ただ、入って読んだ三谷さんのホンは、僕が生まれてから読んできたあらゆる活字の中で一番面白かったんですよね。大げさじゃなく。

相島:’80年代で三谷のホンは異質だったんだよね。当時の小劇場界は野田(秀樹)さんの夢の遊眠社や、鴻上(尚史)さんの第三舞台がトップランナーとして走っていて、時空を飛びながら細かいギャグを挟みつつスピーディに展開するような作品が主流だったから。

近藤:僕は当初お客さんとして観てたけど、最初の頃はホンは面白くてセンスもいいのに、あまり稽古してないのがもったいないなと思ってました。でも『12人の優しい日本人』からガラッと…僕の言葉で言えば真剣にやり始めた感じがして。

相島:最初はコメディといってもコントに近い感じだったからね。『12人の優しい日本人』のとき、何回エチュード(即興劇)したか…。

甲本:当時本当にあった事件を題材にして、みんなが陪審員役をやるんですけど、さっきまで有罪だって言ってた人が急に無罪って言い出したりするもんだから、エチュードなのに本気で腹が立ってきてケンカになったりしましたからね(笑)。

相島:要は模擬陪審をやるんだけど、三谷が指示を出してくるんだよね。「相島、少数側に行け」とか。誰かに「寝返れ」とか(笑)。

甲本:しかも三谷さん、みんなに知らせずこっそり指示を出すもんだから…。せっかく判決がまとまりそうだったのに、なぜ逆にいくの? とめちゃくちゃ腹が立ってくるんです。

相島:どう考えても判決はこっちだよねってみんなの意見が一致してる中、阿南(健治)とかが「でも…」とか言い出すもんだから…(笑)。

甲本:本当にイラッとするんですよね。幕が開くまで、こんなに人がいがみ合う作品で果たしてお客さんは笑うんだろうかって気持ちでした。

近藤:僕は役者続けようかって悩んでいた時期に『12人~』を観て、こういう舞台なら客演でも荷物持ちでもいいから出たいってなって。

相島:今やコメディの傑作みたいに言われてますけど、やってる側はコメディだってわからなかった。でもそこから、三谷も僕らも大きく舵を切った感じはあったね。

甲本:そこから観客動員が爆発的に増えていって、三谷さんも僕らも何も変わってないのに、一体どうしちゃったのって思ってました。

相島:観客動員が1万人を超えて、劇団は上り調子だけど、不思議なものでそうなってくると、「このままでいいのか」って話が出てくる。養成所を作って若い劇団員を入れて組織としてやっていくのか、とか。

甲本:あのときって近藤さんは?

近藤:いたらおかしいでしょ(笑)。結論が出てから聞きました。

甲本:そうなんですね。近藤さんはずっといる人という認識だから。

相島:近藤が初めて劇団に参加したとき、僕や(梶原)善がものすごくダメ出しされて「本来は客演である近藤さんに言うべきことなのに、なぜ近藤さんはできてて、君たちができないんだ」って言われて、ね。

近藤:それずっと言うよね。

相島:うちの頼れる客演だから。

近藤:でも今稽古してても楽しいです。それぞれ変わったなってところもあるけれど、稽古の臨み方とか全然変わってない部分もあって。

相島:やっぱり他の現場とは雰囲気が違うよね。三谷の演出も容赦なくフルスロットル。でもそれが的確だし、みんなも稽古初日のホン読みを聞いてる段階ですでに面白いし。ただやっぱり30年経って、昔の作品とはちょっと違うテイストもあって、僕らもそれが楽しみ。

甲本:三谷さんも言ってたもんね。「あえて30年前とは違う、新しいカラーのものをやろう」って。

相島:どんな作品であっても、このメンバーであれば大丈夫だって、それは担保されてると思ってるから。

近藤:音楽で言えば、長年やってきたバンドみたいな感じだよね。

相島:「せーの」で音を出した一発目から、すでにその音になってる。

甲本:今回、こんな作品にしようとかいう欲は全然なくて、とにかく三谷さんと僕らで作るっていう、すごくシンプルな感じで臨んでいます。

PROFILE プロフィール

相島一之さん

あいじま・かずゆき 1961年11月30日生まれ、埼玉県出身。現在、ドラマ『五十嵐夫妻は偽装他人』(TX系)、NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に出演中。

甲本雅裕さん

こうもと・まさひろ 1965年6月26日生まれ、岡山県出身。現在、ドラマ『週末旅の極意2』(TX系)、『リラの花咲くけものみち』(NHK総合)が放送中。映画『港に灯がともる』が公開中。

近藤芳正さん

こんどう・よしまさ 1961年8月13日生まれ、愛知県出身。2/21~3/6に京都シネマで公開の映画『事実無根』でフランスとインドの映画祭の最優秀主演男優賞受賞。

東京サンシャインボーイズ

三谷幸喜さんが大学在学中の1983年に立ち上げた劇団。当初からコメディを主体とした作品を上演し、’90年代に大ブレイク。人気絶頂の’94年に30年後の次回公演を告知して活動休止を宣言した。

INFORMATION インフォメーション

パルコ・プロデュース 2025 東京サンシャインボーイズ復活公演『蒙古が襲来 Mongolia is coming』

舞台は、鎌倉時代中期の対馬の漁村、モンゴル帝国が日本に侵攻する元寇前夜。異国の襲来が目の前に迫る中、そんなこととはつゆ知らず、なんでもない日常をおくる村の人々の姿を描く。2月9日(日)~3月2日(日) 渋谷・PARCO劇場 作・演出/三谷幸喜 出演/相島一之、阿南健治、伊藤俊人、小原雅人、梶原善、甲本雅裕、小林隆、近藤芳正、谷川清美、西田薫、西村まさ彦、野仲イサオ、宮地雅子、吉田羊 全席指定1万1000円 パルコステージ TEL:03・3477・5858 岡山、京都、長野、宮城、北海道、大阪、愛知、福岡、沖縄公演あり。

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衣装協力・rainmaker kyoto濱ノ上 TEL:075・708・2280

写真・中島慶子 ヘア&メイク・国府田雅子(b.sun) 取材、文・望月リサ

anan 2433号(2025年2月5日発売)より

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