『全部強すぎる』ことはコントロールできない
ゆっきゅん(以下、ゆ):私、気を抜くと逆に力んじゃうんです。歌もダンスも「変な力抜いて!」って指摘されてしまうから、意識的に力まないようにしないとダメで。歌詞もキラーフレーズが多すぎると注意を受けたり…。
朝井リョウ(以下、朝):あ、わかるかも。私はデビューしたてのとき、当時の担当編集者さんから「意味のあるシーンばかり書いているけど、何の意味もないシーンがあってもいいんだよ」と助言されたことがあって。でも、今もそれを上手にできない。
ゆ:でもそれ、できる人がやればよくないですか? 全部強すぎるって言われても、それはもう私の気持ちが強いからだし。人の気持ちはコントロールできない。
朝:そっか、技術じゃなくて姿勢の問題だったんだ。
ゆ:でも私、運動に関しては全然頑張れないんですよ。私は普段疲れたらすぐ休んでしまうから、運動で力みすぎるような経験は一切ないです(笑)。
朝:私のパーソナルトレーナーはすぐ限界を超えさせてくるからジムでよく酸欠になって……って話を戻すと、苦手を克服するか得意を伸ばすかという問題があって。
ゆ:朝井さんはどっちですか?
朝:私は長編小説に苦手意識があったので、克服するために新聞連載を2つ引き受けてみたんです。そのことを石田衣良様に話したら、「作家は得意なものを伸ばした方がいいよ」って言われました。引き受ける前に話せばよかった。
ゆ:長編が苦手だったとは!
朝:新聞の日刊連載ってかなり早めに依頼をいただくので、これだけ準備期間があれば大丈夫だろうと余裕ぶっこいてたんだけど、全然そんなことなくて。一度、全て投げ出して姿をくらまそう、くらいまで思い詰めちゃったんです。小説はだいたい、“誰が語るか”を最初に考えるんですけど、語り手が決まらなくて、つまり何も書き始められなくて。最終的に一人称でも三人称でもない設定を思いついてようやく走り出せて……これ、最近上梓した『生殖記』を連載していたときの話なんですけど。
ゆ:読みました! 面白かった!
朝:ありがとう~! とにかく連載期間は本当に生きた心地がしなかったから、やっぱり長所を伸ばした方がいいのかもしれないですね。次は、ゆっきゅんのアルバムからもらったインスピレーションを活かして、短編集を久しぶりに書きたいなあ。それかやっぱり、持ち曲増やして単独ライブ!
PROFILE プロフィール
朝井リョウ(あさい・りょう)
1989年、岐阜県生まれ。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。’13年、『何者』で直木賞を受賞。柴田錬三郎賞を受賞した『正欲』以来3年半ぶりの新作長編『生殖記』(小学館)が好評発売中。
PROFILE プロフィール
ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』が発売中。インスタ、Xは@guility_kyun
INFORMATION インフォメーション
朝井リョウさん、3年半ぶりの新作長編が発売中!
朝井さんが「自分の中にあるルールを全て撤廃して書きました」という『生殖記』が大好評発売中! 特設サイトでは冒頭部分を試し読みすることができます。