What’s『龍が如く』
2005年に誕生した人気ゲームシリーズ。“伝説の元極道”と呼ばれる桐生一馬を筆頭に、裏社会を生きる人たちの出会いと別れ、生き様が描かれる。日本や海外の街をモデルにした緻密な舞台、カラオケやデリバリーをもとにしたミニゲームといった、やり込み要素もたっぷり。キャストを著名人が演じることも新作が出るたび話題に。
“裏通り”へ続くドア。開けてみたい誘惑には抗えない。
“ゲームに飽いた大人たちへ”をキーワードに生み出された『龍が如く』シリーズ。当初、プレイヤーの比率は男性9割、女性1割だったのが今は半々だという。ファン層を広げ、長年にわたり愛され続ける背景には何があるのか。制作総指揮を担う横山昌義さんに尋ねてみると、「怖いもの見たさ、があるんじゃないのかな。僕らがこのシリーズで提供するのは『みんなが見たいドアの向こう』。主な舞台になる『神室町』は歌舞伎町をモチーフにしていますが、あの街を魅力的にしているのは一種の危うさだと思うんですよね。それは人も同じで、ワルい奴ってどこか惹かれるものがある。このワルが持つ魅力みたいなものが、シリーズ通してずっと貫かれているのが大きな理由の一つかなと」
裏社会に片足(どころか両足)を突っ込んでいても、本シリーズのキャラクターたちは、ワル、の一言だけでは表現できない。かつての敵に手を差し伸べたり、自分なりの筋を通そうとしていたり、人間味にあふれた側面も持つ。
「みんな自分勝手で、やりたいことをやる人の集まりですよ。だからこそカッコいいのかもしれない。仲直りすれば終わる話も多いところを、謝れない、なびけない、媚びられない、という“龍が如く”の人たちが集まると、ぶつかりが起こりドラマになる。クセの強い人ばかりですが、実はキャラクター性よりもストーリーを回すための役割が先に決まります。例えば、第1作から登場している真島吾朗は当初“クレイジーな敵”という役柄でしかなかったんです。シナリオを作る過程でバックボーンがどんどん足されていき、過去のエピソードも追加で足す。それに合わせてどういう人間であるべきかという設定ができていきます」
設定が固まる中で、“どういう人間か”を表現する手段の一つである服装などの見た目も定まる。
「真島でいうと、酒ばっかり飲んでいるから肝臓が悪く、まず肌がどす黒い。あと実は指が2~3本なくて、それを隠すために革手袋をしているという設定が当初はありました。でも『3』で脱いだ時に指があったので、ただのおしゃれだったということに…(笑)。今はハードのスペックやCGの技術が上がったこともあって、これまで以上に服の表現にこだわれるようになりましたね。現代劇なので、キャラクターらしさがあるだけでなく、今っぽい服であることも重要。また、機能美からくる丈の長さなども表現しています」
来年は新作『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』が登場。本シリーズの物語は続く。
「舞台がどこでも、たとえハワイが舞台のスキューバダイビングのゲームになったとしても、漁業組合とかと揉めたり、裏に誰かがいて利権が絡んだりして(笑)、強い人間ドラマを楽しんでもらえるのが『龍が如く』。これからもワルくて魅力的な男がたくさん出ますよ。僕はみなさんが誰に惹かれるかはわからないですけど、誰かはいます。刺さる男が、きっと」
魅力は細部に宿る! みんなを虜にするこだわりポイント
服装はキャラ、年齢、今っぽさを落とし込む
「過去作で着た服のまま今の作品に出すと、時代遅れの人が突然やって来た印象になったり、似合わなすぎたり…。『8』で桐生が昔のスーツに着替えるシーンがあるんですが、当時の色だと合わなくて大変でしたね。グレーの色みだけでも何十パターンも作り、シャツの色みも試行錯誤を繰り返しました」
第1作時(2005年)37歳だった桐生は『8』で55歳に。年齢とともに似合う服も変化していく。「年齢的に白髪もあるし、これが似合うんじゃないかとウールのサファリジャケットを着せています」
服から流行が見える
『2』(2006年)の堂島大吾は白いダウンジャケットを着用。「当時の流行は『モンクレール』のダウン。夜の街で働く人はみんな着ていて彼も着るタイプなので」
『8』の堂島大吾は…
「試しに昔の白いダウンを着せたら驚くほど似合わなくて。いま彼が着ているとしたら『バブアー』みたいなジャケットじゃないかと、変更になりました」
あちこちにちりばめられた“っぽさ”
キャラクターの性格や好みに合わせた演出は部屋や身の回り品など、ストーリーとは関わりのないところにも。「映像の世界でいう“大道具”の役割をする背景を作るチームがいます。『足立宏一の事務所担当』『春日一番の部屋担当』などに分かれ、キャラクター性から各々が考え、作り込んでいるんです」
ガサツさは外にも…
建物の外にはなんとも古びた室外機が…。「足立さんの事務所の外観の一部。こんなところにも彼らしさが出ています」
モニター下に漫画誌!?
足立の事務所にあるモニター。「足立さんは63歳なので漫画は紙で読む派。かつ、ガサツだからそれで高さを調整しています」
圧倒的な物量と緻密さで描かれる街並み
歓楽街・神室町の中にも飲食店が並ぶチャンピオン街など複数のエリアが存在。実在する居酒屋なども設置され、そのリアルさはまさに圧巻。「『8』で登場するハワイ・ホノルルシティは、街中を歩く現地の人たちの体型にもこだわりが。頭の大きさや腰の位置を調整し、海外にいる自然な雰囲気を作っています」
ハワイ・ホノルルシティ
砂浜を踏み締める音や風に揺れるヤシの木の動きにも注目。ビーチだけでなく、やや治安が悪いエリアの散らかりようや人の荒れ具合も説得力大。
東京・神室町
作品を追うごとに再開発が進められる神室町。ホームレスのたまり場だった場所に神室町ヒルズが建つなど、現実とリンクするような変化にも注目。
横山昌義さん セガ「龍が如くスタジオ」代表、『龍が如く』シリーズ制作総指揮。第1作にシナリオ・演出で参加、以降全ての作品に携わり、現在はシリーズ全体のプロデュースを担う。来年2月28日にシリーズ待望の新作が発売。
※『anan』2024年10月23日号より。写真・峠 雄三 構成、文・間野加菜代
(by anan編集部)