わかり合えてはいないけれど、ふたりでいると楽しい。新感覚喜劇(コメディ)。
「賞をいただいた投稿作では、ふたりとも宇宙人だったんです。連載化に伴い、担当編集さんの助言でひかりを地球人に変更にしました。初対面同士が互いに気を遣い合って馴染もうとする緊張感ってありますよね。その感じをキープしつつ、読者に片方が宇宙人ということを開示しておいたら、馴染むの意味合いが変わってくるな、会話の掛け合いもズレるだろうな、と思って、いまの設定になりました」
ひかりちゃんとコスモちゃんには案外、類似点が多い。ひかりちゃんは整形級メイクの武器であるコスメにしか興味がなく、コスモちゃんは母星でも研究していたポメラニアンに夢中というオタク気質。コミュニケーション力に自信がない点や、ひかりちゃんは地顔が地味すぎて、コスモちゃんは宇宙人ゆえに、すっぴんNGなのも同じ。
「周囲にうまく馴染もうと奮闘する点は共通していますが、ふたりの出自を真逆にしたおかげで、“カルチャーギャップは大きいけれど、根は似た者同士”という感じを際立たせることができたと思います」
各話、スラップスティックな楽しさが満載だが、とりわけふたりが「彼氏が欲しい」と言い出す「#7未確認彼氏」は秀逸。彼氏を作りたいと思い詰めすぎて、カレーや箱庭枯山水を作ってしまうひかりちゃんのダジャレ感。コスモちゃんは、物知りや世話好きなど理想の彼氏像を想像しては、ひかりちゃんに〈それ、欲しいのは彼氏じゃなくてSiriや執事(じいや)じゃね?〉とツッコまれている。だが、問題点や悩みを通して、ちゃんと自分を理解していくのだ。そんなふうに、気づきと笑いが両立しているのが本作の大きな魅力。
「ひかりに関してはコンプレックスや願望に関して、解決とはいかないまでも何か落としどころを見つけてあげたいですね。コスモの地球調査に関する顛末は、薄~くSF要素をうまく交ぜることができたらいいなと思っています。これからも見届けていただけたらうれしいです」
松枝穂積『ワレワレハ』1 1話完結の連作で9話を収録。コスモちゃんの地球ライフ探究は、自撮り、ネイル、大学のサークル活動など話題も豊富。月刊『good!アフタヌーン』で連載中。講談社 759円 ©松枝穂積/講談社
まつえ・ほづみ マンガ家。兵庫県出身。アフタヌーン四季賞2022年冬のコンテストにて投稿作「ワレワレハ」が藤島康介特別賞を受賞、連載化となる。
※『anan』2024年8月28日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)