前回話した、慕ってくれる後輩がいないというテーマにも通じることですが、僕は悩み相談を受けるのがあまり得意ではありません。頼れる先輩というのは、後輩の悩みに対して心にズバッと刺さるような回答をしてくれるもの。ところが僕はその「ちょうど欲しかった回答」をするのがどうも苦手です。この点でも頼れる先輩になるのはまだまだ遠いのではと思います。地元でやっているラジオ番組『Okazaki Radio Channel』でもお悩み相談を受けていますが、ここでもいまひとつリスナーの反応がよくないんです。受験の悩みや勉強方法など自分も通ってきた道であれば経験則で回答を出すことができますが、たとえば「夫が家事を手伝ってくれない。彼を動かす方法はありますか?」など経験のないジャンルがくると、「強めの電流を与えてみる!」とか、ちょっと大喜利めいた答えしか出せなくなってしまいます。回答がエンターテインメントに寄ってしまうんです。でも、相談者はそういうおもしろ回答ではなくて、親身になって寄り添う回答が欲しいはず…。
以前、ラジオのゲストに阿部真央さんが来てくれたのですが、彼女は見事だった。まずは相談者の心情がわかるっていう共感から入り、自分の体験も交えながら温かく優しくポジティブな方向に導いていて、「これや!」と思いました。僕は「彼氏の推しメンに嫉妬しないようになりたい」というお悩みには「出家したら」と即答してしまうし、「ナスが嫌いな息子、どうしたらいい?」には「何を食べるのかはその子の自由。他の食材で栄養を補えていると思うので無理に食べなくていい」と突き放してしまう。こんな極論は誰も求めてないとわかっているんです。知りたいのは、ナスがナスとわからないで、うまいこと食べさせられる調理法とかのはず。
ただ、全ての悩みって諦めることが肝心だと思うんです。どうしたら諦められるか、その気持ちが僕の回答のベースにあります。諦念や悟りの境地を知る。それが全ての悩み、煩悩から解き放ってくれるはず。みんな一度、手塚治虫の『ブッダ』を読んでほしい。あそこに全ての答えがある。「ヴィレヴァン行って文庫でいいから『ブッダ』全巻買って読め」。次から全ての悩みにそう答えたいと思います。
おかざきたいいく 7/24(水)「宇治フェス~DREAM & FUTURE~」(宇治市文化センター)に出演。秋には、ホールワンマンTOUR「盆テク博覧会」を全国5か所で開催。
※『anan』2024年6月26日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND) 文・梅原加奈
(by anan編集部)