2人のDIVAが恋と友情の違いを語った日。
柴田聡子さんと対談したのは新たなる名盤『Your Favorite Things』が発売されるよりまだ少し前の冬の日で、あのアルバムが発売されていたら、マジでその話ばかりしていただろうと思います。デビュー曲でドリンクバー愛を歌い上げ、いくつもの楽曲で友達のことを書いている私にとって、柴田さんは“友情”と“飲み物”について歌う共通点を持つ、大好きな先輩DIVAです。マウンテンデューを「あるとうれしい泡の飲みもの」と歌ったり、コーヒーを飲んでいる様子のことを「黒い水をすする」と表現したり、いつも飲み物へのものすごくしっくりくる独自の視座があってしびれます。私は今、ウォーターサーバーってどうやって歌詞に出そうかなって悩んでるとこなんですけど。柴田さんの歌詞には、どうしてこうなったんだろう? と驚くようなものがあるのに、それは一方でどうしてもこうだったんだろうなと即座に納得できるような言葉でもあって、新曲を楽しみにするのはもちろん、1曲を聴いている間にも、次の行、次の瞬間に歌われることを楽しみにし続けている、そんな存在なのです。どれだけ気さくに明瞭に話し合えても、歌の中にあるほんとうの螺旋は、柴田さん自身も自覚していない領域があるのだろうと感じます。
柴田聡子さんのニューアルバム。名盤。
ラブソングというデカすぎる命題がある前で「友情をどう捉えてる?」と聞かれたとき、うまく答えられなかったけど、今思えば、頭がよじれないほうの大切なやつ、だなと感じています。恋と友情の違いは、頭がよじれるかどうか。恋してる人って頭よじれてる。友情にもたくさんの感情を使うけど、頭はよじれない。どちらにせよ、作詞という作業自体が私にとって頭のよじれることなんだけど。はあ、ラブソングか友情ソングかの区別を飛び越えたような関係性の作詞をしてみたいなとずっと思ってるんですよね。YUKIなら「ハミングバード」、globeなら「Wanderin' Destiny」、aikoなら「ひまわりになったら」みたいな歌が全て好きなのでね。もっともっと書くぞと改めて思いました。
対談後はやはりそのまま柴田さんと二人でカラオケへ。最初に安室奈美恵さんの「Baby Don't Cry」を歌ってくれて私は感激。中島みゆきさんのコンサートを観に行く旅行の約束までして、本当にこの対談企画は最高の連載だと思いました。DIVAの友情発生。ありがとうございました、柴田さん、そして、anan様……。
ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。X、インスタ(@guilty_kyun)を要チェック。
※『anan』2024年4月24日号より。写真・幸喜ひかり 文・綿貫大介
(by anan編集部)