プレイリストで事足りる時代にあえて僕らはCDでベスト盤を出す。
「普通はレーベル側から提案されるとか、そういった感じの理由で出すじゃないですか。でもサブスク全盛の今、ベスト盤の存在意義って正直なくなりつつあって。レーベルも『ベストアルバムを出そう!』と積極的には思わないんですよ。…やけど出す。そこに強い気持ちがあるんです」(こやまたくや・Gt/Vo)
今作のために作った新曲「BEST」にこんなフレーズがある。〈プレイリストで事足りるよ プレイリストで事足りるのにさ…あえてCDで出す〉。ここに彼らのユニークさと、ロックバンドとしてのアイデンティティを感じる。
「ベストアルバムに入れる新曲って、今まで温めていたとっておきの曲とか、未解禁やった曲とか。ベストやから10年間のことについて歌うとか、これまでの楽曲の歌詞をちりばめた集大成的な楽曲とか。様々なやり方があると思うんですけど、“ベストアルバムそのもの”について歌いました(笑)」(こやま)
これまで多種多様な曲を発表してきた彼らに、特に思い入れの強い一曲を聞いた。
「『かわE』ですね。映画『ニセコイ』の主題歌なんですけど、それまでラブソングっぽい曲がヤバTにはなくて。こやまさんもラブコメを書けるような性格ではないので、最初はかなり困っていて。実は『かわE』の前身となった曲があったんです。楽器のレコーディングが終わり、ボーカルレコーディングをしてる途中で、こやまさんが『あかん、これは歌われへん』って。提出期限が迫っている中で『すぐに新しい曲を作るから、これはボツにしたい』と言って、レーベルの人に怒られながらできたのが今の『かわE』。いざ完成したらみんな大納得で、お客さんにも人気の曲なので思い入れが強いです」(ありぼぼ・Ba/Vo)
「僕は『NO MONEY DANCE』です。コロナ禍で収入がない月があって、ヤバイと思いつつ『もう笑い飛ばすしかない!』みたいな心境で書いたんですよ。いつかお客さんとみんなで歌える曲にしようと思って、普段よりもコール&レスポンスもたくさん盛り込みました。リリースから3年が経ち、やっとお客さんも声が出せるようになり、もみくちゃのライブハウスでこの曲を演奏できるようになった時は、ようやくこの曲が完成した、と思えて感慨深かったですね」(こやま)
「一時期はコロナの影響で、騒がしくてテンポの速い音楽性のバンドが、どうしても元気がなくなっていたんですね。『それでもロックバンドとして、うるさくて速い音楽をやっていこう』というメッセージを込めたのが『dabscription』。また違ったヤバTの一面を見られる楽曲です」(もりもりもと・Dr/Cho)
楽曲「BEST」の歌詞〈再評価されたい〉にちなんで、再評価されたいと思う過去の楽曲もそれぞれに教えてもらった。
「『かわE』とか『癒着☆NIGHT』とか昔の曲も、まだまだバズリ代(しろ)があると思います。『ハッピーウェディング前ソング』も、もう一回バズってもいいっすね」(こやま)
「『泡 Our Music』です。発売当初はコロナ禍に入ったタイミングで、シングルでは一番売れなかったんです。ただ、すごく勢いのある楽曲なので、ライブハウスの活気が戻ってきた今、やっとこの曲が本領発揮できてます」(ありぼぼ)
「ヤバT史上、一番壮大なメロディの『肩 have a good day‐2018ver.‐』。僕らの新境地を感じられると思うので、『ライブで観たらどんな感じだろう?』と想像も膨らませてもらいたいです」(もりもと)
10年という節目を迎えたことを、3人はどう感じているのだろう?
「結成当初は『やっていけるかな?』と不安になることがありましたが、今はすごくいい関係で。初の全都道府県ツアー中なんですけど、オフの日があればメンバーに遊びに誘われます。10年経ってこれなら、まだまだ安泰ですね(笑)」(もりもと)
「四星球とか周りの先輩には『もう10年!?』と驚かれるんですけど、そう意外に感じられることがいいなと思っていて。私たちは、バンド名的にも楽曲的にも“フレッシュさ”が大事な気がするんです。そこの意外性は大事やなって」(ありぼぼ)
「そうやね。いつまでも若さと勢いがあるように見られたいので、10周年は取り下げます! 今後は『6年目っす』って嘘つきます」(こやま)
ベストアルバム『BEST of the Tank‐top』。新曲「BEST」を含む全27曲収録。【完全生産限定盤(CD+BD+バスタオル)】¥8,500 【初回限定盤(CD+BD)】¥4,800 【通常盤(CD)】¥3,000(UNIVERSAL SIGMA)
やばいてぃーしゃつやさん 左から、もりもりもと(Dr/Cho)、こやまたくや(Gt/Vo)、ありぼぼ(Ba/Vo)。結成10周年を記念して、全57公演に及ぶ初めての全都道府県ツアーを来年3月まで開催中。
※『anan』2023年12月6日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・真貝 聡
(by anan編集部)