猫ライフを満喫するおじさんが可愛い。
ある日、猫に転生してしまった主人公のおじさん。途方に暮れていると、現れたのはいつも怒りっぽい勤め先の社長! 万事休す…と思いきや、社長は「きゃわいいねこたん」とメロメロな様子。その後、紆余曲折を経て、おじさんは社長に拾われ、「プンちゃん」という名前で可愛がられることに。慣れない体に戸惑いつつも徐々に猫ライフを満喫するおじさんと、100%以上の熱量でプンちゃんを溺愛する社長のやりとりは可愛らしさとシュールさが混ざり合い、猫好きのみならず、幅広い読者をクスリと笑わせる。
ストーリーが進むにつれて魅力的なサブキャラクターも続々登場。猫を飼い始めてから様子のおかしくなった社長を冷静に観察する謎多き秘書・谷さん、愛猫「てぷちゃん」をこれまた溺愛する隣人のイケオジ小説家・糸柳(しやな)先生など、多種多様なおじさんたちによるコメディは勢いを増すばかり。単行本の発売も12月に控えている。
What’s ねこおじ?
猫×転生×おじさん! キュートで笑える化学反応。
「トラックにはねられて、気がついたら猫に転生していた」という一文ととも共に投稿された可愛らしい猫、そしてその背後に浮かぶリアルめなおじさん…。「ねこに転生したおじさん」は、SNSに投稿された一枚のイラストから始まった大人気シリーズ。
単行本収録の内容から、イントロダクションとして2つの話を抜粋!
主な登場人物
プンちゃん/おじさん
トラックにはねられ猫に転生した会社員。勤め先の社長に拾われ溺愛される。
社長
プンちゃんと暮らし始めてから明るくなった。ずっと一緒にいたいので出張が嫌。
谷さん
社長秘書。「プンたん」(プンちゃんの愛称)が社長のタイ人恋人だと勘違い中。
糸柳先生
お隣さんのホラー作家。愛猫は「てぷちゃん」。社長に猫吸いの悦びを教えた。
甥っ子
糸柳先生のファン。飼っている柴犬「スケキヨ」は、実はおじさんと同じ境遇!?
おじさん愛から生まれた愛され作品。「ねこおじ」の誕生、そして執筆の裏側とは。
「ねこおじ」ワールドを日々生み出す、作者のやじまさん。キャラクターは、ストーリーは、どう作られたのか。お話を伺いました。
猫漫画ですが、実はおじさん推しです。
可愛い猫のプンちゃんと、背後霊のようにふわっと浮かぶおじさん。2023年2月、X(当時はTwitter)に投稿した一枚のイラストがバズり、漫画となった「ねこに転生したおじさん」。満を持さずにゆる~く始めた作品ながら、待望の書籍化も決まり、やじまさんの漫画家人生は激変!
――「ねこおじ」最初のイラストを描くきっかけを教えてください。
やじまさん(以下、やじま):たまたま落書きで猫を描いていて、後ろに同じ表情のおじさんを描いてみたら、猫の中身がおじさんみたいな見え方になって。ネタっぽくて面白いからTwitterに投稿してみたんです。
――それまでもSNSにイラストや漫画を投稿していたんですか?
やじま:そうですね。それこそTwitterをやり始めた頃に、おじさんのイラストを投稿したこともありました。10いいねくらいしかもらえなかったですが(笑)。でも、その後はぽつぽつとネタっぽい投稿がバズることもあり、実は「ねこおじ」の最初のイラストの時も、特に感動はなかったんです。
――では、なぜ漫画にすることになったんでしょうか?
やじま:前職の制作会社時代から担当編集をしてくれている長谷川さんと、おじさんが転生する漫画って面白そうだと話していたんです。だから、どこにでもいるザ・おじさんがバズることはそうないし、これを機に、猫に紛れておじさんをいっぱい見てもらおうと。
――あくまで、猫よりもおじさんがメインなんですね(笑)。おじさんを描くのは好きなんですか?
やじま:好きです(笑)。モチーフとして。
――そのおじさん愛はいつから?
やじま:思い返せば、子どもの頃にノートの片隅に描いた担任の先生がおじさんの描き始めかも。七三分けでメガネをかけていて、柔らかい口調で喋るクセ強めの先生でした。
――そのおじさん愛が高じてなのか、「ねこおじ」の登場人物はほぼおじさんですよね。
やじま:プンちゃんの中身がおじさんなので、若い女性に抱っこされて、ニコッとしてもちょっと気持ち悪いかなと…。おじさん同士なら好きにしてよって感じですけど(笑)。
――「ねこおじ」は猫を飼っていない人でも楽しめますが、飼っている人にとっては“あるある”が描かれていて、共感する人も多いと思います。やじまさんは猫を飼っていた経験はあるんですか?
やじま:実家では飼っていました。あとは地域猫とふれあったり、友達の猫を預かったり。会社員時代は企業の仕事で猫漫画を描いていたので、猫の話を聞く機会も多くて。ネタにはその経験が生かされています。ちなみにプンちゃんは、社長に飼われずに、地域猫として“野良おじ”になるルートもあったんですよ。
――毎日Xで投稿していますが、ネタを考えるのは大変では?
やじま:決まるとまとめるのは早いんですが、決まらないと、まったりとお茶を濁す回もあったりして(笑)。最初は、おじさんでやったら面白いことを猫にもやってもらえばいいかぐらいに考えていたんですが、だんだんみんなが見慣れてきちゃって。顔芸もやり切った感があるから、最近はキャラの掛け合いの面白さにシフトしていっています。
――ご自身が思い入れのあるキャラクターはいますか?
やじま:個人的には、何考えているかわからないキャラが好きです。人間だと社長秘書の谷さん、猫ならば隣の家に住むてぷちゃんとか。
――谷さんは某俳優さん似と噂ですが、妙に猫の扱いがうまかったり、謎が多いですよね。
やじま:水谷豊さんですよね? 似せたつもりは全くないけど、最近は引っ張られそうになってます。彼の素性は、今後少しずつ明かしていくかもしれません。あと、実はもう一人、メインのおじさんの新キャラを増やそうと思ってかれこれ1か月くらい考えているのですが、なかなか定まらないんですよね。
――12月には「ねこおじ」の書籍が発売されますが、今年一年を振り返っていかがでしたか?
やじま:福岡へ引っ越し、会社を辞めて、「ねこおじ」がバズって漫画を描き始めたら、書籍化が決定。でも、制作会社時代から続いていたホラー漫画の連載が終了して…。終わりもあるけど始まりもあって、変化の年になりました。Xのフォロワーもおかげさまですごく増えましたし。今後は新たな作品にも挑戦して、いろんなメディアや雑誌でも活動していきたいですね(笑)。
描き下ろし20ページ! 待望の書籍が12/5発売。
『ねこに転生したおじさん』1 KADOKAWA 1375円。Xで発表してきた1話から10話までの漫画をまとめて書籍化。描き下ろしも20ページあり、読み応えある内容に。「初期の頃の作品は、結構加筆しています。20ページの描き下ろしでは、谷さんとか宅配のお兄さん、そしてペットカメラとか、サブキャラの視点でアナザーストーリーを描いています。ぜひ楽しみにしていてください」
やじまさん 漫画家。20歳からフリーターをしながらSNSで4コマ漫画を発表。その後、制作会社に就職してWebや企業用の漫画制作に携わる。2023年に独立し、福岡へ移住。Xで「ねこおじ」を毎日投稿。
※『anan』2023年11月15日号より。文・野尻和代
(by anan編集部)