――以前のインタビューで、『ゆとり』について「同年代の役者と呼吸をするように会話をしたことが強く印象に残っていて、あの呼吸を思い出すために必死にお芝居をしている」とおっしゃっていたのが、すごく印象的でした。
岡田将生(以下、岡田):その言葉通りです。20代の頃にこの作品に出合い、息の合った役者さんたちとアイデアを出しながら作品を作っていったという作業は、いまだに忘れられません。何より連ドラの面白さを知ったのもこの作品で、間違いなく、自分の役者人生の転機になっています。
――映画の完成報告会見で、坂間正和役の岡田将生さんと山路一豊役の松坂桃李さん、道上まりぶ役の柳楽優弥さんの3ショットに胸が熱くなりました。
岡田:当時連ドラとそのあとのSPドラマが終わったあとに、みんなで「もう一回集まりたいね」なんて話していたから、僕も嬉しいです。
――おなじみの顔ぶれが揃っていて、7年後も相変わらずの騒動が起こり、あの時の気持ちのまま続きを見ているようでした。久しぶりの現場はいかがでしたか?
岡田:実は、今の自分とあの時の自分は違うので、話をいただいた時は嬉しさと同時に不安もあって。だから、現場に入る前に連ドラを全部見返して、台本を見ながらセリフを繰り返し口にしていたんです。でも衣装合わせに行ったら、衣装が全て揃っていたし、当時使っていたセットもほとんど残っていて。監督からは「安心して現場に来てくれ」と言われました。それで、いざクランクインして最初のセリフを口にした瞬間に、もう完璧に正和だった。戻ってきたー! 僕が好きだった作品だ! って思いました。30代半ばになった自分の変化も、この作品や正和は受け入れてくれたし、桃李さんと柳楽の優ちゃんと顔を合わせた瞬間にホッとして。こんなふうに無理せずに戻れるのって、他の現場ではあまり味わえない感覚です。
――素晴らしいことですね。
岡田:今日はどこの現場で撮影できるんだろうって考えると、ワクワクするんですよ。たぶん桃李さんはこんな感じで演じて、茜ちゃん役の(安藤)サクラさんは動物的感覚で動く人だから、こうするだろうなとか。僕はサクラさんには、自由にやりやすいように演じてほしいと思っていて、それは茜ちゃんを一番に思っている正和の目線でもある。…って今日気づいたんですけど、こういう目線って、監督的でもあるんですよね。役者としての自分もいるけれど、同時に、他のキャラクターをこう動かしたいと思っている部分もあるみたい。よっぽどこの作品に、思い入れがあるんだと、改めてわかりました。
――岡田さんにとって、松坂さんと柳楽さんはどんな存在ですか?
岡田:家族であり友達で、役者としてのライバルでもある。お互いを尊重し合い、高め合える関係性です。30代になってからだと、なかなか深い友人関係は作れなくなってくるけれど、あの時20代半ばで一緒に作品を作ることができて、友情関係も築けたのは二人のおかげ。この先もずっと意識し合うだろうし、僕は何かあったら二人を全力で助けたいとも思っています。
――すごく羨ましい関係性です。映画では木南晴夏さんなどが新しく参加されましたが、現場での雰囲気はいかがでしたか?
岡田:僕が逆の立場だったら、すでに出来上がっているチームに加わるのってすごく緊張しますし苦手なんです。でも10代、20代の頃はそういう経験も多かったから、当時主役をしていた方たちの気配りを含めて、チーム作りを見ていて。自分が迎え入れる立場になったら、新キャストの方がやりやすい環境を作りたいと思っていたので、今回は積極的にコミュニケーションをとるようにしていました。でも、新キャストのみなさんが、『ゆとり』のファンだっておっしゃってくれたので、嬉しかったですね。
――どのシーンが好きですか?
岡田:ドラマ時代から集まっていた居酒屋のシーンは、待ってました! って感じでした。みんなでやりたい放題動き回って会話をして、素で笑っている瞬間もあったりして。そこに木南さんもいて、みんなでわちゃわちゃできたのが楽しかったですね。あの居酒屋、どこかに本当に作ってほしいです(笑)。
日テレ系列で2016年に放送された連続ドラマ『ゆとりですがなにか』。野心がない、競争意識がない、協調性がないと揶揄される“ゆとり世代”に括られた坂間正和、山路一豊、道上まりぶの3人が仕事、家族、恋、友情に迷いながら立ち向かう物語。映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』は現在公開中。
おかだ・まさき 1989年8月15日生まれ、東京都出身。2006年デビュー。ドラマ『ゆとりですがなにか』『大豆田とわ子と三人の元夫』などに出演。カンヌ映画祭4冠獲得の映画『ドライブ・マイ・カー』では難役を演じ、海外で高い評価を得た。ナレーションを務める『SWITCHインタビュー達人達』(NHK Eテレ)が毎週金曜21時30分から放送中。
※『anan』2023年10月25日号より。写真・KAZUYUKI EBISAWA(makiura office) スタイリスト・大石裕介 ヘア&メイク・小林麗子 インタビュー、文・若山あや 衣装協力・サカイ ニードルス
(by anan編集部)