「既に自分の中で『懐玉・玉折』論みたいなものが育っていたので、『俺がやらんで誰がやる?』ぐらいの気持ちでした(笑)。アニメ側からは“青春の曲”という指定がありました。『懐玉・玉折』は信頼関係にあった五条悟と夏油傑(げとう・すぐる)がそれぞれがやるべきことがあって決裂してしまう。だから楽曲も青春の皮をかぶりながらも寂しい曲という着地点を念頭に置いて作りました」
「青のすみか」は瑞々しさと切なさが共存したギターロックを基調に、細やかなアレンジが盛り込まれた繊細かつパワフルなサウンドだ。
「元々今よりもBPMが少し遅くて切なさ要素が少し多い静かなダンスミュージックみたいなアレンジだったんです。それと全く同じ歌詞とメロディで、疾走感があって暗めのギターロックも作って監督に提出したら『ちょうど中間だね』という反応があって。確かに『懐玉・玉折』の異色さを考えると爽やかすぎてもよくないし、不穏さも必要。だから基本的にはバンドサウンドですが、普段使わないシンセサイザーやクジラの鳴き声や赤ん坊の声といった変な音をたくさん使いました」
五条と夏油の関係性を思わせるフレーズが随所に出てきながらも、普遍的な人と人との関係性を描いた歌詞が特徴的だ。
「僕と君の匂いが違うという歌詞もありますが、信頼関係があっても子供の時って自他の境界が曖昧で自分と同じような存在として他者に接してしまう。でも違うものだと知るのも青春時代。そう考えると、『呪術廻戦』で描かれていることってすごく普遍的なので、『青のすみか』を五条と夏油のことだと思ってもらうのも、そことは切り離して聴いてもらうのも正しいと思います」
楽曲提供やプロデュース、サポートベース等、多岐にわたる活動をしている。「もっといろいろな人とモノづくりがしたい」と言う。
「モノづくりは基本的に自分の世界でやっているのでみんなスタイルが違います。だから持ち帰るものがいっぱいあります。誰とモノづくりしてもいいものを出せるようにしたいですね」
『青のすみか』。自身が作詞作曲編曲し、Eveが歌った「ラブソング」のセルフカバーを含む全4曲入りシングル。【初回生産限定盤(CD+BD)】¥5,500 【通常盤(CD)】¥1,980(Sony Music Labels)
キタニタツヤ 1996年生まれ。2014年頃からネットに楽曲を投稿し始める。キタニタツヤ名義の活動の他にも、楽曲提供やヨルシカのサポートメンバーとしての活動等、多岐にわたって活動するシンガーソングライター。
※『anan』2023年7月26日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・Yuji Yasumoto ヘア&メイク・Tatsuya Suzuki 取材、文・小松香里
(by anan編集部)