21歳を22歳と言ってでも、やりたい仕事だったんです。
卒業前、受賞作の写真や記事などを持参し、知人の紹介で銀座の「小松ストアー」というデパートに、売り込みに行ったんです。そうしたらなんと、「仕事をしましょう」と言っていただけた。でも実は私まだ学生で、21歳だと言っていなくて。年齢を言ったら、「そんな若造に、こんな高いギャラの仕事、任せられない!!」って断られちゃうんじゃないかと不安で、とっさに嘘をついちゃったんですよ、「22歳です」って。その後仕事が始まってからも、年を聞かれるたびに「ご想像にお任せします」と煙に巻いていました。
私は年齢で人を判断するのは好きではなく、上でも下でも気にせず付き合う人間です。ただ当時の私は“かっこいい大人の服”を作りたかったので、年齢で舐められたくなかったし、大人にならないと信用してもらえないと思ってもいた。本当は「25歳」って言いたかったんだけど、さすがにその勇気がなかったのは、今思うとかわいいわよね(笑)。
かっこいい友人が、素敵な出会いを招く。
昔も今も、私が憧れるのはかっこよさを持っている人。かっこよさにはいろいろな種類があって、ブリジット・バルドーのような粋なかっこよさがあったり、私が大好きなダイアナ・ロスは、かっこよくてチャーミング。でも一番かっこよかったのは、私の自慢のお友達、加賀まりこさんと安井かずみさんだと思います。私たち、おしゃれにしても、ボーイフレンドのチョイスにしても、お互いにすごくかっこつけ合っていたの。その空気感がとっても楽しかったのを覚えています。
二人を通じて知り合う人は、華やかな職業の人が多かった。しかもその多くが芸能系。つまり、みんな洋服が必要なんです(笑)。そういう人たちの衣装を作らせてもらえたのは、とてもいい経験でしたね。その後のブロードウェイ、最近ではDRUM TAOの公演の衣装づくりにその経験が生きています。自分とまったく異なる要素を持つ人との交流は、いろんなものをもたらしてくれると思います。
コシノジュンコ デザイナー。大阪府出身。19歳でデザイナーの登竜門といわれる「装苑賞」を受賞し、1978年パリコレクション初参加。以降、世界的に活躍をする。近著にエッセイ集『コシノジュンコ 56の大丈夫』(世界文化社)が。
※『anan』2023年6月21日号より。写真・内山めぐみ ヘア&メイク・上田美江子
(by anan編集部)