どこか風格すら感じるアンニュイな女性ボーカルと、落ち着いたビートにチルなムードを放つサウンドで昨年から注目を集めている4人組バンド、chilldspot。まだ10代とは思えない味わいのあるサウンドやアレンジ。それらは彼らの聴いてきた音楽がエリック・クラプトンからボカロまで時代もジャンルも超えた幅広さであることや、吸収したら即座に自分たちのものにしてしまう瞬発力の賜物か。
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「確かに、常にいろんな音楽を勉強して、吸収しながら同時に出しているような感じです(笑)」(玲山・Gt)

「ジャンルにとらわれず、曲の雰囲気に合った音やフレーズをみんなで探してアレンジしています」(小崎・Ba)

待望の1stアルバム『ingredients』には、ゆったりとした夜風のようなビート感が心地よい「夜の探検」や、純粋さと色気が入り交じるグルーヴィなR&Bナンバー「ネオンを消して」など、曲を手がける比喩根のパーソナルな感性を繊細にバンドで表現しきっている。

「私はいろんな思い入れがあって曲を作るので、演奏するメンバーにも歌詞とメロディを大切にしてほしい。だから新曲ができたら解説を書いて読んでもらうようにしています。そうすることで、『この歌詞があるからこういうフレーズを入れてみたよ』と私にも教えてくれたり、メンバーがさらに曲に寄り添ってくれるようになりました」(比喩根・Vo/Gt)

女の子が鏡の前でとことん自分と向き合いながら歌い踊るMVも印象的な、ディスコ調ナンバー「未定」では〈無意味に自分を否定し続けなくてもいいよ〉と歌う。聴く者を優しく肯定するような言葉が普遍的なメッセージとなって届く、そんな曲が多いのも特徴だ。

「私自身、コンプレックスはあるし、劣等感を抱いてしまう時ってあるんです。でも、そんな自分を隠したり大人ぶったりせずに、そういう時に周りからかけてもらいたい言葉を自分で歌詞にしています。『今日も調子いいね!』って曲の中で言ってあげてる感じ(笑)」(比喩根)

せわしない時代の柔らかな毛布のようで、とびきり新しい興奮もキラリとちりばめられた彼女らの音楽。未来への期待が高まる作品ができた。

「今は自分たちでも『この曲、これからどうなっていくんだろう?』って考えるのが楽しくて。バンドがこれからどうなっていくかも良い意味でわからない(笑)。方向性を具体的に定めてないぶん、いろんなところに飛んでいけると思います」(ジャスティン・Dr)

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1st Album『ingredients』。ヒップホップ調のアプローチがクールな「dinner」、密やかでムーディな「ネオンを消して」など10代のほとばしる才能の断片が並ぶ。¥3,080(RAINBOW ENTERTAINMENT)

チルズポット 左から、ジャスティン(Dr)、玲山(Gt)、比喩根(Vo/Gt)、小崎(Ba)。全員が2002年生まれ、東京都出身の4人組バンド。高校在学中に活動を始め、チルでジャンルレスな音楽性で注目を集めるニューカマー。
衣装協力・NON TOKYO、ESPLENDOR、from the mind、NOILL

※『anan』2021年9月29日号より。写真・川村恵理 取材、文・上野三樹

(by anan編集部)

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