鬼滅の刃、NiziU、愛の不時着…2020年“エンタメ”ヒットの法則は?

エンタメ
2020.12.19
困難は続いているけれど、今年だからこそのダイナミックな進化が起きたエンタメ業界。2020年のエンタメ業界を賑わせた5つのTOPICSを総ざらい!

1、純度100%なときめきやお笑いコンテンツの台頭。

「不時着した?」が合言葉になるほどのブームを巻き起こした『愛の不時着』。「韓流ドラマの大きな特徴である“ときめき”と“泣かせ”が詰まった作品。その見事な感情描写とキャストの演技力が、多くの人を癒しました。また、CMのないNetflix配信で、ドラマの世界に浸り続けられるのもよかったのでは」(映画・海外ドラマライター・今祥枝さん)

テレビ界では、目標とする視聴率の指標がこれまでの“世帯”から“コア(13~49歳の層)”へと変わるという大転換期を迎えた。「その結果、若い世代にもリーチするように、芸人さんを起用した番組が激増。コロナ禍で、笑いが必要とされていたことも相まって、『有吉の壁』のゴールデン進出は大成功しました」(放送作家・カツオさん)

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愛の不時着 2月23日からNetflixで配信がスタート。いまだにTOP10入りをキープし、ロングヒットを続ける。北朝鮮のエリート軍人を演じたヒョンビンの人気も再燃!
Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中

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有吉の壁 若手芸人たちが、有吉弘行が用意した“お笑いの壁”を乗り越えて成長する。YouTube公式チャンネル「壁チャンネル」と連動し、オリジナルコンテンツを配信。
日本テレビ系『有吉の壁』毎週水曜19時放送

2、メディアとコンテンツの驚異的な化学反応。

映画界最大のヒットの一つといえば、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。「コミックから、アニメ化によって幅広い層をキャッチ。20ほどの動画配信サイトで見られる状態で、アニメ版を多くの人が視聴した後に、満を持しての映画公開。数年かけたメディアミックスが、大きなうねりを作り出したのだと思います」(今さん)

また情報番組『スッキリ』がオーディションを追ったNizi Projectは、「休校が続いた子供たちが、朝の番組を見られた環境もヒットに大きく影響」(カツオさん)。地上波放送後はHuluで完全版を配信。遅れて興味を持った人も、1話から見られて一気に追いつける形態がテレビとの相乗効果をもたらし、老若男女が愛するアイドルグループNiziUが誕生!

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NiziU プレデビュー曲『Make you happy』のMVは1億8000万再生数を突破。縄跳びダンスが大ブームに。12/2、『Step and a step』で正式デビューし、紅白歌合戦に出場。

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鬼滅の刃 10/16に公開された映画の興行収入は275億円を記録し、歴代興収2位(11/30現在)に。12/4に発売されたコミック最終巻の初版395万部は、驚異的な数字! ©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

3、“ライブ感”をオンラインで味わう。

ライブができないという危機に直面したエンタメ界。「ライブには観客がいるという常識が崩れ、テクノロジーを駆使した無観客オンラインライブが数多く開催されました。当初は無料が多かったオンラインライブをいち早く有料化して大成功を収めたのが、サザンオールスターズです」(音楽ジャーナリスト・柴那典さん)。「ファン層の広いサザンオールスターズのオンラインライブは、新技術に抵抗感のあった世代が、新しいエンタメを体験するきっかけに。今後、5Gがスタンダードになると、一度に多くの端末からアクセス可能となり、音声の遅れも解消され、今この瞬間の歓声が反映されるなど、オンラインライブに一体感とライブ感がより生まれます」(博報堂DYメディアパートナーズ・森永真弓さん)

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サザンオールスターズ 6月25日、8つのプラットフォームで同時配信。40台のカメラを通常では置けない客席にも設置。ダイナミックな映像で楽しませた。恒例の年越しライブも配信が決定。松田弘さんも本ライブで復帰!

4、ベテラン、新人ともにボーダレスに活躍。

今年は、大物芸人や川口春奈さんら女優たちも、自らの特性を活かしてYouTubeをスタート。「一方で、テレビ界でのユーチューバーの需要も急上昇しました。ユーチューバーに対する『儲かっている人』という世間的な斜めからの視線を変えたのが、フワちゃん。YouTubeでもテレビでも人気を得た、新人類ともいえる彼女の存在が、2つのメディアのボーダーを消しました」(カツオさん)

音楽界でも、YouTubeやTikTokから無名の新人がブレイクする例が続出。「その象徴的存在が、デジタル配信だけで『香水』を大ヒットさせた瑛人さん。他にも藤井風さんやVaundyと、今年は、YouTubeやSNSでバズった若いアーティストが台頭しました」(柴さん)

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瑛人 実は『香水』がリリースされたのは、昨年4月。1年後に、TikTokにカバー動画が上がり始め、芸能人もこぞってカバー。来年元日にはアルバム『すっからかん』を発売。

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フワちゃん 「フワちゃんTV」のチャンネル登録者数は75万人以上。今年上半期のテレビ出演番組数は、112本(ニホンモニター調べ)を数え、流行語大賞トップ10入り。

5、コメントや生配信、家にいながら“みんなで共有”。

おうち時間が長くなり、長時間の生配信も急増。「生配信では、視聴者が一方的に作られたコンテンツを享受するのでなく、同じ時間を共有することで、配信者と共に、友達のようにコンテンツを作っているような感覚が味わえます。渡辺直美さんやオカリナさんを筆頭に、ごはんを一緒に食べるコンテンツが人気です」(カツオさん)

コロナ禍で、新しいエンタメの共有方法も生まれた。「オンライン飲みやパーティでは、配信サイトの同じコンテンツを同時再生し、盛り上がる人たちも多くいます。また若い世代は“気持ちの共有”を最優先に考える傾向があり、コロナ以前から、SNSでファンと日常的にコミュニケーションをとっていた人が、オンラインイベントにも上手く移行できています」(森永さん)

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NAOMI CLUB 渡辺直美さんは自身のYouTubeチャンネルで“今夜は一緒にディナーしよ!”シリーズを生配信。多くの人が感じていた誰とも食事を共にできない寂しさを埋めてくれた。

映画・海外ドラマライター・今 祥枝さん 雑誌の編集を経て、フリーランスのライター&編集者に。エンタメ情報誌や女性誌などで海外ドラマやシネマ欄の連載を担当している。

放送作家&YouTubeキュレーター・カツオさん 担当番組は『全力!脱力タイムズ』『有吉ぃぃeeeee!』など。YouTubeを日々研究し、共著に『YouTube作家的思考』(扶桑社)がある。

音楽ジャーナリスト・柴 那典さん ロッキング・オン社を経て独立。『AERA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』などで執筆。現在、『日経MJ』で「柴那典の新音学」連載中。

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員・森永真弓さん 5Gなどネットシステム開発やコミュニケーションプランニングが専門。共著に『グルメサイトで★★★の店は、本当に美味しいのか?』(小社刊)がある。

※『anan』2020年12月23日号より。取材、文・小泉咲子

(by anan編集部)

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