駆け出しの料理研究家が知る、老舗料理学校のレシピの秘密とは? 原田ひ香さんの新作小説『口福のレシピ』。
book1

「20代の頃、料理教室に通っていたんです。当時のメモを見返したら“手の込んだ美味しいものは外で食べられるから、家では野菜中心の手のかからない料理を”と書かれていて。でも、今その頃のレシピを見ると、結構手が込んでいるんです。これを“手のかからない料理”と思っていたんだなあ、って」

そんなことを編集者と話しているうちに、料理教室を題材にした小説を書かないかと提案されたという原田さん。新作『口福のレシピ』の主人公、品川留希子の実家は老舗の料理学校。でも後を継ぐことを拒んで家を出た彼女は、フリーのSEとして働く一方、電子レンジだけで作る手軽な料理をTwitterで紹介して人気を得ている。そんな留希子の物語と並行して進むのは、彼女の曽祖父の時代、品川家に奉公するしずえが料理のレシピ制作に苦心する姿だ。

「昭和のはじめの頃は良家のお嬢さんが女学校や女子大の家政科で料理を習っていた。その後、料理研究家が人気を博した時期や誰でもレシピを発表できるクックパッド全盛期があり、最近は料理研究家やシェフがSNSやYouTubeにレシピを積極的にあげている。そんな時代の流れをつかみながら物語が書けたらな、という思いがありました」

読めば家庭料理の変遷とともに、女性の生き方の選択もずいぶん変わったのだと感じる。

「しずえさんは自分の家や奉公先に尽くしている人。留希子はもっと自由で、自分のために生きている。彼女に協力する男性も登場しますが、男性が女性を自然とバックアップできる時代になった、ということも書きたかったですね」

料理アプリの開発に乗り出すが苦心する留希子。やがて実家との間に、トラブルが生じ…。そんな騒動から浮かび上がってくるのは、レシピを考案する人の人知れない努力。

「ナポリタンやハンバーグのような、すでに調理法が確立しているものでも、今はひと工夫加えたり、逆に手軽にしたレシピがSNSでバズっていきますよね。この先も、レシピもその広まり方も、もっといろいろ変わっていくかもしれませんね」

日々の料理とそのレシピを、また違った角度から楽しめるようになる作品なのだ。

book2

『口福のレシピ』 品川留希子は駆け出しの料理研究家。料理アプリの開発に苦心するが、生姜焼きのレシピをめぐり、実家の老舗料理学校とトラブルに…。小学館 1500円

はらだ・ひか 1970年生まれ。2007年「はじまらないティータイム」ですばる文学賞を受賞。著書に『東京ロンダリング』『三人屋』『ランチ酒』『おっぱいマンション改修争議』『まずはこれ食べて』などがある。

※『anan』2020年10月14日号より。写真・土佐麻理子(原田さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line
エンタメ

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
ヨーロッパの強豪・ドイツ戦が来年の女子W杯に向けた試金石に。なでしこジャパン国際親善試合
ヨーロッパの強豪・ドイツ戦が来年の女子W杯に向けた試金石に。なでしこジャパン国際親善試合
Entertainment
Today's Update
向井理「何百人というお客さんと一緒に、その時にしか味わえないものを作っている感覚です」
向井理「何百人というお客さんと一緒に、その時にしか味わえないものを作っている感覚です」
Entertainment
Today's Update
関取 花「自分を好きになれて新しい音楽が始まりました」
関取 花「自分を好きになれて新しい音楽が始まりました」
Entertainment
Today's Update
山奥の超能力者養成学園で殺人!? 高校生28人のうち犯人は誰なのか。漫画『ウェイバーズ』
山奥の超能力者養成学園で殺人!? 高校生28人のうち犯人は誰なのか。漫画『ウェイバーズ』
Entertainment

Movie

ムービー

Regulars

連載