専門家が分析する、「好き」の気持ちの正体。
愛される対象が多様だからこそ、ファン側の心理もより細分化される。自分自身でも気づいていない「好き」の理由がここにあるかも!
変わらずに輝く姿への安心感。
“いつもそこにいてくれる”という安心感が愛を長続きさせる要因に。
「ファンにも人生があるので、勉強や仕事、家庭の事情でなかなか相手の活動を追えなくなることも。そんなふうに会えない間も、好きな人にはキラキラ輝いていてほしい。だからこそ、ずっと変わらずに素敵なままでいてくれる対象に安心感を覚えるし、再び時間ができた時には、“あの人のコンサートをまた観たい”などと思うんです」(劇団雌猫・ユッケさん)
あふれ出る魅力への好奇心 。
“この人はどういう人?”と想像をしたり、自分の知らない一面があると感じることが対象への好奇心や興味につながる。
「ミステリアスな部分がある人には、好奇心がわきやすくなるもの。妄想の余地を残してくれるという点でも強いです。例えば、SNSをやりながらもプライベートの出し方が天才的に上手な人や、ほどよく個人の情報を伝えられるラジオ番組を持っている人は、“この人をもっと知りたい”という欲をかきたてます」(イラストエッセイスト・犬山紙子さん)
知らなかった価値観に出合う喜び。
新しい価値観に触れることで、新鮮に向き合える場合も。
「例えば、いま人気の藤森慎吾さんのYouTubeチャンネル。もともとチャラ男キャラの芸風だった彼が、時代を読み、いい感じに価値観を変化させていく姿に魅力を感じるからこそ支持を集めているのでは。アップデートを続けていく対象は新しい情報を発信し続けるので、知識欲が尽きることもない。それは、飽きることなく長年、応援できることにつながると思います」(ユッケさん)
こんなふうになれたら…。目標としての憧れ。
好きになった相手を自分のロールモデルとしたり、同じようになりたいと外見や行動を真似するなど、近づきたい気持ちが強くなる場合がある。
「これは『同一視』という心理で、中高生などアイデンティティが確立していない年齢の人に見られることが多いです。もちろん、大人でもこうした思いを抱く人もいます。ただ、自分をしっかり持っていないと、自分と好きな対象を重ね合わせて依存してしまうケースもあるので注意」(臨床心理士・塚越友子さん)
人間性やスキルへの尊敬。
パフォーマンスや生き方への敬意が、愛へと形を変えるケースもしばしば。
「“なんでこんなに頑張っているんだろう。芸能界って大変そうなのに心が清らかに見えるのはなぜだろう”と、仕事への姿勢を尊敬し、好きになることはよくあること。特に最近はSNSなどを通じ、努力をしている姿や思いを赤裸々に発信する人が増え、それを知ることができるようになったことも大きいと思います」(ユッケさん)
「出演作品やライフスタイルなど、“ここがすごい”という思いを抱かせることができる人は、長く愛されると思います」(塚越さん)
人間同士の幸せな関係性に癒される。
“グループ萌え”という言葉のように、関係性への愛も。
「愛する人と、周りのメンバーやキャラクターが楽しそうにしている姿は、相手の幸せを願うファンにとってはまさに幸せの瞬間を目撃している状態です」(犬山さん)
「例えば、何らかの理由でグループ活動を休んでいる人とのエピソードを他のメンバーがあえて紹介することも。活動を維持する理由もあるでしょうが、かけがえのない関係性を感じることがファンの喜びでもあります」(ユッケさん)
ユッケさん オタク女子4人による同人サークル「劇団雌猫」のメンバー。著書に『海外オタ女子事情』(KADOKAWA)、編著書に『だから私はメイクする』(柏書房)など。
犬山紙子さん イラストエッセイスト。『スッキリ』(日本テレビ系)などに出演。近著に『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社新書)。
塚越友子さん 臨床心理士、公認心理師。「東京中央カウンセリング」代表。「水希」名義の近著『不毛なマウンティングをかわす力』(KADOKAWA)が好評発売中。
※『anan』2020年10月14日号より。取材、文・重信 綾
(by anan編集部)