先の天気が分かる空読、病気に効く種をあてる草読、虫と通じ合える虫読…。森絵都さんの新作『カザアナ』は、ちょっぴり不思議な能力を持つ〈カザアナ〉一族が登場する、少し未来の日本の物語。

異能の一族と過ごす日常と冒険。愉快&痛快な近未来エンタメ。

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「未来の話を書いてみたかったんです。今、みんな漠然と、オリンピック後の日本はどうなるんだろうと思っている。そこを舞台に新しい物語を展開できないかなと考えました」

観光が政府主導の一大事業となり、古き文化と街並みを維持するために人々の生活は制限され、監視されている日本。母、中学生の娘、小学生の息子の入谷一家は、カザアナ一族と出会い交流を深めるなかで、様々な問題と対峙する。それは学校の理不尽な校則だったり、自治体の問題であったり…。ただし、

「カザアナたちが正義のために能力を使う話にはしたくなくて。もっとくだらないことに使って(笑)、結果的に誰かの役に立つくらいがいいなと思いました。入谷家と彼らがアナログな力で、AI化が進んだ息苦しい社会に風穴をあけていく姿を書きたかったんです」

決してシリアスな内容ではない。それどころかとぼけた会話で笑わせるし、コントのような場面も。

「『みかづき』を書いた時に、知人に“ギャグが足りない”って言われたんです。ですから、今回は全力でギャグを入れました(笑)」

とはいえ物語は少しずつスケールを広げ、謎のゲリラ組織と対峙した上、しまいには国家間の問題にも首を突っ込むことに…。入谷家の3人もそれぞれ奮闘するわけだが、

「家族だから一緒に行動する、という流れにはしたくなかったですね。一人一人が自分の目的で動くようにしたかった。自分の意思で決めて行動することが大事ですから」

カザアナ=風穴という言葉に、様々な意味が感じられる本作。

「私の中に、いつも“抜け道”のイメージがあるんですよね。生きづらい世の中で萎縮することがあっても、抜け道はどこかにあるって思っている。今回はそれがカザアナという形になりました」

ちなみに森さんは、もしカザアナだったらどの能力が欲しいですか?

「うーん。草読かな。胃腸の調子が悪い時にどの薬草を飲めばいいか分かる程度の力がいいです(笑)」

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もり・えと 1990年「リズム」で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。児童文学の賞を多数受賞するなか一般文芸も執筆、2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。

『カザアナ』 オリンピックが終わった後の日本。中学生の里宇は、ある日、造園業を営む女性と出会う。実は彼女、カザアナという一族の末裔で…。朝日新聞出版 1700円

※『anan』2019年9月4日号より。写真・水野昭子(森さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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