韓国の傑作小説が、続々と邦訳。この面白さに乗り遅れるな!
「韓国の40代以下の若い世代に、格段に面白い小説を書く作家が増えたことは大きいです。観察眼に長けていて、素材の切り取り方や見せ方など、お皿に盛って出すときの手つきに芸がある書き手が増えている印象ですね。それより上の世代の作品だと、韓国の歴史的な背景や文化風俗を知らないと理解するのが難しいところがあり、興味がある人が読むという状況でした。けれど世界が平準化されてきたいま、日本でも韓国でも、人々は同じような消費社会を生き、同じ悩みを抱えています。韓国について知っていても知らなくても、小説の中には共感のしどころがいろいろある。中学校のいじめ問題が世界の縮図にも見えるパク・ミンギュの『ピンポン』などは、その典型かもしれません」(翻訳家・斎藤真理子)
よく取り上げられるテーマは、都会で働く人々の不安や生きづらさ、親子の葛藤、恋愛や育児の悩み、格差社会の鬱屈など日本とほぼ同じ。ハン・ガンが『ギリシャ語の時間』で描いた喪失と再生もそのひとつ。
「ただ、日本の小説と比べると、似たテーマを扱っていても、韓国小説はとろりと濃いというか。若者であっても、親世代、祖父母世代から聞きかじった朝鮮戦争や南北分断、軍事独裁政権時代の苦しさなど、歴史的な経験の影響を受けています。そうした重層的な社会の空気を吸って育ってきた民族ならではの、打たれ強い生命力を、作品から感じるんですよね」
そこが現代韓国文学の魅力ではないかと、斎藤さんは分析する。
「エンタメ市場も成熟しつつありますし、純文学とミステリーの相乗効果が楽しめる『殺人者の記憶法』などにも注目です」
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