
(左上から時計回りに)石田武蔵さん、片山智さん、浅沼佳奈恵さん、志賀玲太さん
2016年、動画に先んじてWebメディアとしてスタートしたQuizKnock。日々の記事更新を担っているWeb編集部の4人へのインタビューを通じて、情報との向き合い方、日常の中で学びを深めていくためのヒントが見えてきます。
QuizKnock・Web編集部スタッフ
Profile
志賀玲太
しが・れいた 芸術が得意分野。動画ディレクターを経てWeb記事の企画・編集担当に。エッセイ、短歌の分野でも活躍。
石田武蔵
いしだ・むさし 大学では心理学を専攻。Googleマップを使ったゲーム「GeoGuessr」が得意でマダガスカルの地理が好き。
浅沼佳奈恵
あさぬま・かなえ Web記事を編集するほか、連載「QuizKnock雑談中」の企画なども担当。好きなひらがなは「ぬ」。
片山智
かたやま・さとし Webチームのマネージャー。クイズチームが執筆する連載「クイズを味わう」などを企画。
「どれだけ深いところまで連れていけるか」が腕の見せどころ
── 普段はどんな仕事をしているのか教えてください。
片山智(以下、片山) Webメディア「QuizKnock」を運営しています。Webが始まったのは2016年10月で、YouTubeより少し早いんです。記事のカラーや関わるメンバーは変わりながらも平日は毎日記事を出し続けていて、大きな特徴は、立ち上げの頃から学生のライターが主体となって記事を書いていること。企画を出してもらい、一緒に形にしていくのが私たちの基本的な仕事です。
志賀玲太(以下、志賀) 若い方が主な読者層なので現役大学生の視点やエネルギーはとても大事です。我々とそう年齢は離れていませんが、触れているメディアやコンテンツなどやはり感覚が違う部分はある。専攻も分野も様々な大学生の熱量を届けることを大切にしています。
石田武蔵(以下、石田) 同時に、視点としてはいいけれど読者に届けるには補足が必要かな、というところは僕たち編集部が補っている感じですね。
── 読者層を教えてください。
石田 YouTubeチャンネル同様10代〜30代前半がメインです。最近は脳トレのように50代〜60代の方も読んでくれています。
志賀 上の世代の方まで楽しんでくれるというのは、初期の頃には思ってもいなかったです。
── 役割分担を教えてください。
片山 各々の得意分野に近い記事を担当することが多いですね。たとえば私は学生時代にクイズ研究会に入っていたこともあり、クイズを「読む」「味わう」という趣旨の連載などを担当しています。
志賀 私は以前、動画ディレクターとして企業と一緒に作る動画などを担当していて、現在はWeb記事の企画・編集をしています。もともと美術を専攻していたので、美術や芸術をテーマにした記事を担当することが多いです。
石田 僕は大学で心理学を専攻していました。地理が好きで「GeoGuessr」(Googleマップを使った地理ゲーム)も得意。なので心理学や地理などを担当しています。
浅沼佳奈恵(以下、浅沼) 私は連載関連が多いです。片山さんが立ち上げた連載を一緒に編集したり、メンバーのチャットを掲載する「QuizKnock雑談中」のペア決めや話題決めなどディレクションをしたり。フォロワークラブ内のテキスト連載でWebチーム以外のメンバーが書いた原稿を編集する仕事も。
片山 WebにとどまらずQuizKnockの「テキスト部分」に関わるものを幅広く担当しています。なので企業とのタイアップ記事や、展覧会の図録、美術館のガイドブック、ボイスラリーの台本など、テキスト制作のノウハウを生かした仕事もありますね。
── 動画とWebのコンテンツとしての違いはどこにありますか?
志賀 どちらもクイズやパズル、謎解きを通じて読者や視聴者に「学ぶこと、知ることがちょっとでも楽しくなった」と感じてもらうためのコンテンツである点は同じです。ただ、動画とテキストでは伝えられる情報量や特質が違う。動画が「どれだけ広い入り口を作れるか」を考えるものだとすれば、記事は「来てくれた人をどれだけ深いところまで連れていけるか」を考えなければいけない。腕の見せどころだと思います。
石田 シミュレーションゲームのような記事もありましたよね。正解すると(QuizKnockメンバーの)須貝(駿貴)さんと仲が深くなっていくという(笑)。他の媒体ではなかなか味わえない。
志賀 須貝さんと仲良くなりたくて間違えたところを覚え直すという(笑)。他にも二択に正解し続けないとゴールに辿り着けないもの、一回でも間違えたらアウトになるものなど、色々な形式が。
浅沼 動画やテレビでクイズを見るのと違って、ゼロから考えて解いてみると「全然思い出せない」ことも。そういう気付きを得てもらえるのもWebの強みですね。
── 「学び」と聞くと、少し身構えてしまう人もいます。楽しく実践できる方法はありますか?
石田 「学び」の魅力は実は日常の中にあるんです。本を読んだり、音楽を聴いたり、YouTubeを見たりしたことが、のちに繋がって視野が広がる。それが学びの面白さだと思います。だから「なんだろう?」と思ったらスルーせず、ぜひ手元のスマホで調べてみてほしい。一度目に入れたことで、次に見た時に「見たことがあるな」という引っかかりが生まれますし、その準備をしておくと、日常をもっと楽しく過ごせるんじゃないでしょうか。
浅沼 私の場合、理論がわからないことがハードルになると思っていて、つまずいた時には「興味が向く感覚」を大事にしています。私は物理や化学、生物はあまり得意ではないんですが、最近、色彩検定を受けたら、色を突き詰めると光の波長だとわかったんです。それは物理でもあるし、人間が色を知覚する働きは生物だなと。興味のある「色」というフィルターを通せば苦手分野も部分的に親しめる。興味から広げれば、学びはとても身近です。
片山 理想論かもしれませんが、「学びの中に楽しさを見つける」のではなく、「楽しいことの中に学びを見つける」という順番で考えるとうまくいくことがあると思います。学校の勉強だけでなく、料理など日常の中にも発見、広義の「学び」があるはずです。そんな目で世界を見ていれば、新しいものに触れた時も「自分の好きなものと、ここは近いかも」と思えて、網の目のように学びを広げられるかもしれません。
石田 僕は「GeoGuessr」が得意ですが、始めるまで地図が読めなかったんです。「楽しい」から学びを得たと思います。
志賀 人との会話を楽しむことも、すぐに実践できる方法だと思います。QuizKnockでは雑談中に知らない話が出てくることも多く、「いま言っていた単語って何?」「どういう意味?」と聞くだけで学びになる。でもこれはきっとQuizKnockに限らず、それだけで世界は一気に広がっていくと思います。
── フェイクニュースやAIによるハルシネーションなど、誤情報にさらされる場面が増えています。学びを深めるうえで、気をつけることを教えてください。
石田 インターネットで手軽にものを調べられる一方で、誰もが手軽に発信できるようになり、出どころのわからない情報も氾濫しています。大事なのは、自分で信頼できるソースを見つける力を養うことだと思います。
浅沼 「ソースに当たる」は大学生のライターにも入社初日に教えるくらい基本的なことですよね。
石田 そうですね。高校生や大学生に文章の書き方を伝えるライティング講座でもソースの当たり方を扱っています。
浅沼 ただ、ネットの情報だけが真実ではないし、複数のソースが同じことを言っていても、それは全体の一部かもしれないので注意が必要です。それから、真偽がわからない情報を拡散しないことも大事。自分が誤情報の被害者になるだけでなく、知らないうちに間違った情報を拡散する側になるかもしれない。その当事者意識を持つことも重要だと思います。
石田 QuizKnock全体として、「複数の信頼できるソースに当たること」を心がけています。官公庁のWebサイトや公式ホームページなど、発信元が明らかな情報を参照し、1か所だけだとタイプミスや情報の錯綜もあり得るので複数ソースを確認する。
浅沼 Webだけでなく、動画やグッズも、校閲チームがファクトチェックをしていますよね。どうしたら嘘を伝えずに済むのか、どこまでなら正しいと言えるのか、線引きを設けて確認を進めています。前に校閲のスタッフと話していて印象的だったのが、「正しい/正しくないを安易に白黒つけないほうがいい」という話。たとえば、歴史は研究が進むにつれ、正しいとされていたことが「そうとはいえない」と変わることがあります。こう習ったから正しい、と決めつけず、微妙なグラデーションの中で情報とどう向き合うかを常に考える必要があるのかなと。
── 読者が求めている記事やクイズはどのように探っていますか?
志賀 メディアなので、読者に応えることは大切です。脳トレ系が人気なら発想力で解けるパズルを作りますし、漢字の読み方が気になる方が多いなら、そのための記事を用意する。PVやSNSでの反応、クイズの正答率や解答数も見ますが、それだけでは読者の選択肢や道を広げることはできません。PVが伸び悩んでも、たとえば海外の大学に関する記事がきっかけで留学を決める人がいるかもしれない。そんなふうに、ニッチな話題でも、そのテーマ自体を知ってもらうことに意味があるかもしれない。求められるもの、こちらから届けたいもの、その両方を出すバランスが大事です。想定する読者像は具体的であるほどいいと思っています。サンプルが友達や社員だけでも、「こういう人がいる」「あの友達はこの商品を買っていた」という具体的な事実があると全然違う。
石田 「1人×何万人」ですからね。1万人の、ふわっとした塊がいるわけではない。
片山 身近なことから地球の裏側の話まで、「世界にはこんなものがありますよ」という道をたくさん引くつもりで制作にあたっています。一つ一つの記事にできることは限られているかもしれませんが、そのどれかが目に留まって、読者の皆さんが思考を深める入り口になっていれば嬉しいです。
浅沼 気になるもの、好きなものは何なのか。逆に、あまり気が乗らないのはどうしてなのか。記事を通して、自分の学びの嗜好も考えてもらえたらいいですね。
志賀 私たちの強みは、いろいろなジャンルをつまみ食いできることかもしれません。クイズを通じて気になる分野と出合ってもらえたらいいなと思います。
anan 2515号(2026年10月14日発売)より































